《言葉の先生》

 小学生の勉強に親はどう関わっているのでしょうか。福岡県の調査によりますと,一,二年生の親は子どもの勉強を見てやって,三,四年生にはしなさいと命じていますが,五,六年生になると塾に任せているという特徴があるようです。親にとっては勉強を見てやるということは難しいことです。分からせようと口を酸っぱくして説明をしますが,子どもの腑に落ちないという顔は消えません。やがて声だけが大きくなっていき,まるで分からない方が悪いと叱ることになります。高学年になると親の方も答えは分かるが教え方が分からないという状況になります。子どもの勉強のために親ができる手伝いは何かないのでしょうか。
 男の子二人と女の子三人を足すと五人です。それではマッチ棒二本と電柱三本を足すと何本でしょうか。足せないと感じるでしょう。同じように男の子と女の子は足せないと感じる子どもがいます。五人とは男でもなければ女でもありません。人間です。男も女も同じ人間だから足せます。もし人間という概念を持てなかったら足せなくなります。国語ができないと算数が分からなくなる例です。親は豊かな言葉を教える先生にならなければなりません。
 連れ合いはよくしゃべります。次から次に話が途切れないのには感心します。女性のおしゃべりは天賦の才能であり,また母親には子どもに言葉を教える使命が背負わされているからだと妙に納得しています。子どもにとって母親の話す言葉は第二の母乳と言うことができるようです。

(No.5:リビング北九州:96年8月10日:1169号掲載)