《0を見て あれこれ思い 春迎え》

 数年前から世紀末あるいは21世紀がキーワードになっています。コンピューターの世界では2000年問題が取りざたされています。家庭にあるビデオなど時刻を表示する製品にも問題があるという報道があります。ところで2000年は21世紀かどうかと話題になることがあります。暦は1年1月1日から始まりますから,2001年の元日から21世紀です。一方で年齢の40代は41歳からでしょうか。40歳も40代でしょう。年齢には0歳があるからです。
 ものごとには0から始まるものと1から始まるものがあります。ゼロの発見はインドで6世紀頃のことだそうです。ですから言葉でつむがれている人の思考には始めにゼロという考え方はありませんでした。無という字がゼロを表しているではないかと思われるかもしれませんが,無には有を否定するニュアンスが漂います。例えば金が無いことを無一文,人がいないことを無人と言い,常に無は有を前提にしています。ゼロは意味としては「空」という考え方に近いでしょう。人が生きる暮らしの場では金や物などの存在が必要ですから,ゼロの思考は生まれなかったのです。
 白無垢という言葉があります。嫁ぎ先の色に染まることが期待されている着物です。お色直しは染まったことを皆に披露するセレモニーです。また子どもの心も真っ白で純真無垢と言われます。育つにつれて美しい色を帯びるか,汚されてしまうか分かりません。どちらの可能性もあります。色をあれこれ重ね塗りをしていくと真っ黒になります。色の光を重ねて照らすと白く輝きます。育てるとは親の温かな光で子どもを照らし出してやることです。今年も輝いていて下さい。

(No.63:リビング北九州:99年1月16日:1288号掲載)