《面白い 遊びが拓く 新世界》

 鬼は角を持ち虎皮のパンツをはいていますが,なぜなのでしょうか。連れ合いにたずねるときょとんとしています。よくもそんな変なことに疑問を持つものだとあきれているようです。鬼門という方位を表す言葉があります。昔流に言えば丑寅(ウシトラ)の方角つまり東北の方向に鬼が住んでいるというわけです。そこでウシの角とトラの毛皮が鬼を象徴することになりましたとさ。連れ合いは一応感心した風を見せてくれますが,それがどうしたという目をしています。
 子どもはお父さんと遊ぶのが好きです。それはお父さんがバカな遊びができるからです。子どもと一緒にどろんこになれますし,お母さんと違っておよそためになることなど眼中になく,面白ければそれでいいというわけです。そこで二人してお母さんに叱られてしまいます。面白いことが遊びの条件です。
 むかし,人がたき火を中心に輪になって暮らしていた頃のことです。誰かが人の注意を引くようなことを言ったとき,うつむいて仕事などをしていたみんなが一斉に顔を上げました。そうするとみんなの顔面がたき火の明かりに照らされて白く浮き上がりました。これが面白いという言葉の語源だそうです。
 無関心とか無感動とは面白がる素養の無いことを言います。どんなにつまらないことでも面白い種を自分なりに見つけることができれば,そこから関心や感動の広大な世界に入ることができます。鳥を眺めて何が面白いのかと言われるバードウォッチングも,そこから生きることに感動できる世界が広がります。
 好きこそものの上手なれと言われています。その入り口は他愛のない遊びの世界にあります。

(No.70:リビング北九州:99年4月3日:1299号掲載)