《温もりは いのちがつむぐ 愛衣装》

 自分の平熱を知っていますか。体温計は37度が赤字の表示で,発熱の目安になっています。また最高目盛は42度ですが,それ以上になると人は死んでしまうからです。連れ合いは私より平熱が1度ほど低めで,少しの発熱でも参ってしまうようです。
 人は体温をどのように維持しているのでしょうか。ストーブのように身体のどこかに熱源があるのでしょうか。あまり聞いたことがありません。動き回ると暑くなり汗が出てきます。体の中では消化器や呼吸器,心臓などが絶え間なく活動しています。それが体温の源です。連れ合いは何もせず寝てるのにお腹がすくと不思議がっていますが,体温を発生するほど内臓が働いているのですから当然です。寒いとふるえますが,それも身体を動かして熱を生み出そうとしているからです。
 家庭の温もりも同じように生まれます。家族は愛せても家庭を愛せなかったという迷言がありました。家族の一員すべてがそれぞれの活動をきっちりとやり遂げなければ,温もりは出てきません。おいしいものと言えば外食,団らんのメインはテレビネタ,装いはブランド任せといった生活に,どれほど温もりがあるのでしょうか。
 つわりで苦しんでいた母親がいました。幼い女の子を実家の母が落ち着くまで預かろうかと申し出てくれています。そんなある日トイレでしゃがみ込んでいたとき,母親の背中をそっとさすってくれた小さな手がとても温かかったそうです。母親はこの子と一緒に産もうと心に決めたそうです。その体験を母親は投稿しました。読む方も温かくなります。
 家庭の温もりとはお互いの手の温もりの総合計です。もし温もりを奪うだけの家族がいたら,しっかりと冷えていくことでしょう。自分が生きることではなく,家族が生きる営みが温かさなのです。

(No.80:リビング北九州:99年9月4日:1319号掲載)