《隠し場所 思い出せずに 大成功?》

 事務所には大事な書類を収納するキャビネット型の金庫があります。そのダイヤルが紙テープで十字に固定されているのは珍しくありません。先日も長の肩書きを持つ方の部屋を訪ねたときに見かけました。いちいちダイアルを合わせるのが面倒なのでしょう。
 ダイアルを固定したときに,失敗をしたことがあります。長い間には使用者が変わります。何かのはずみで鍵がロックすることがあります。この二つが重なると大変です。ダイアルナンバーを記録した紙が見つかりません。前任者に尋ねても,古い書類は始末していました。幸い手帳に覚え書きしていたので事なきを得ましたが,その後対策としてパソコンに番号をメモリーさせています。
 大事なものをどこにしまうかと悩むことがあります。思いついた所に隠しても,隠した本人は知っているので安心できません。自分でも思いつかない所に隠そうとします。それが失敗のもとです。必要になったときに隠し場所を忘れてしまっています。急ぐときは大変です。家中をひっくり返さなければなりません。そしてあるはずのない所から見つかります。家のどこには何があるという情報を持っていますが,隠し場所は全く無関係な所を選ぼうとします。特異な情報は覚えるのが大変です。記憶をたどることができません。
 学校で習った知識は暮らしの中で使われていないと,すぐに忘れられてしまいます。授業とは子どもの記憶回路に知識を現像することです。そのままではすぐに消えてしまいますから,定着しなければなりません。暮らしに生かすことが定着作用です。断片的に覚えるのではなくて,暮らしの中に関連性をともなって組み込まなければなりません。体験による学習が勧められているのは,記憶作用を促進するからです。

(No.85:リビング北九州:99年11月27日:1331号掲載)