*** 子育ち12章 ***
 

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「第 11-02 章」


『わがままを 生きる力に 変える親』


 ■はじめに

 「あいさつ運動」という活動があります。特に,子どもたちの登校時に先生や地域の大人たちが,朝の「おはようございます」という声をかけるケースが多いことでしょう。ことさらにあいさつを取り上げなければならない状況は,子育て環境の衰退の現れです。

 あいさつをするかしないかで,子どもにどれほどの効果が現れるのでしょうか? それが見えてこないから,しないよりはした方がいいとは思えるのですが,運動は盛り上がりに欠けます。子育ては,した方がいいことの積み重ねだと思ってもらえるといいのですが。

 あいさつが自然にできるように育った子どもは,積極性が出てきます。人との関係は,最初の一言を交わすことによって,大きな心の緊張を解くことができます。積極性は緊張のバリアを纏っているときには,封じ込められるものです。その自分を防護している固い殻に大きな窓を開ける呪文が,あいさつの言葉です。

 あいさつの次は,「ハイ」という返事です。名前を呼ばれたり尋ねられても,うなずくだけとか「ウン」としか返事ができない子どもがいます。気持ちが守りに入っています。「ハイ」という返事は,真っ直ぐに受け止めようとする態勢を表しています。これもまた積極性です。

 積極性を持って欲しいというのは,親の願いでしょう。それならば,積極性の形をしつけるべきです。どうすれば積極的になれるか,ただ背中を押せば済むことではありません。元気のよいあいさつや返事ができる,それが入り口になります。やがて,人から好感を持って迎えられるはずです。できることを教え,し向けて,できたらほめてあげる,それが子育てのパターンですよ。



【質問11-02:お子さんのわがままを抑えていますね?】

 《「わがままを抑える」という意味を確かめておきましょう!》


 〇わがまま?

 子どもはママの思い通りになりません。言うことを聞きません。反抗されると,ママはキーッとなります。でも,反抗期は必ず現れるもので,成長の一環だと知っているので,渋々ですが我慢しなければなりません。ストレスが溜まりますね。

 ところで,反抗とわがままは区別しておかなければなりません。ママが靴下を履かせてやろうとすると,「自分でする」と言って,四苦八苦しています。かわいい反抗です。買い物についてきて,見つけたお菓子を欲しいといって駄々をこねています。困ったわがままです。

 反抗とは,自分の能力を発揮しようとする自己主張です。外向きに出そうとしています。一方で,わがままとは,人の能力を使って自分の欲望を満たそうとすることです。ものやことを人から奪おうとする自分勝手な振る舞いです。ですから,わがままは周りの人には迷惑になり,反社会的なのです。

 この自分勝手な行動は生きていく本能に基づきます。赤ちゃんはわがままそのものです。なりふり構わず生き抜かなければなりません。大人はそれを察しているから,わがままを許して,ときには可愛いと感じます。親としての愛情を呼び起こしますが,それは赤ちゃんのわがままを受け入れるようにしなければならない自然の摂理でしょう。

 育ちを考える場合,二つの向きという分類をするといいでしょう。バランスのとれた育ちというとき,相反する二つのものが必要です。プラスとマイナスがあるからバランスが実現します。わがままについて考えるとき,自分の欲求実現をプラスとすれば,欲求我慢がマイナスとなります。ここでバランスということを持ち出したのにはわけがあります。一つはわがままを抑えるには我慢が必要だということです。この我慢については次に述べることにします。

 知っておいて欲しいことは,わがままを否定してしまうことはいけないということです。わがままは人が生きる欲望であり,熱く燃えたぎっています。熱いから,そのままでは人に火傷を負わせます。だから,我慢という覆いを掛けておかなければなりませんが,消してしまうと元も子もなくなります。わがままを無くそうとすると無気力になります。わがままを無くすのではなくて,バランスよく抑え込むのが育ちです。

・・・子どもの持って生まれたものに悪いものはありません。・・・


 〇我慢?

 欲求が野放図に放出されると収拾がつきません。社会生活に相応しい形式に洗練される必要があります。基本的にはTPOを弁えることです。今欲しいというのを,ちょっと待とうね。時間をずらすという我慢があります。ここでしたいというのを,お家に帰ってからね。場所を移すという我慢など。

 幼いときには,ママが誘導してやります。欲求が満たされることを前提にすれば,楽しみを先送りする我慢は受け入れやすくなります。ママも我慢するからと付き添ってやることもいいでしょう。この場合,ママが言い聞かせることになります。誰に向かって言い聞かせるのでしょう?

 言い聞かせる相手は,もう一人の子どもです。自分に向かって,もうちょっと待とうと自制するのはもう一人の子どもだからです。ママに言われるから待つということから一歩進んで,自分で待とうと決めるように導いてやります。人に抑え込まれるのは気持ちよくありませんし,それは我慢にはなりません。自分で決めるから我慢なのです。ですから,一緒に待とうねという誘いが必要になります。

 もちろん無理な欲求を持ち出すこともあります。昔の子どもがお月様を取ってくれとせがんだように不可能なこと,妹が欲しいといったおいそれと適えられないことなどは,あきらめさせなければなりません。世の中にはできないことがあるということを教えておかなければなりません。そこでも,ママにもできないと言ってやれば,諦めやすくなります。

 我慢のしつけで難しい局面が残っています。たとえば,よそのイヌを可愛いから連れて帰りたいというような許されないこと,パパの車を運転したいというような無謀なこと,欲しかったから黙って持ってくるというような犯罪的なことなどは,子どもにもできることだけに,それを封じるしつけは日常的な繰り返しになります。

 社会生活上の禁止形式であるようなきまりやルールを受け入れるという我慢のしつけです。してはいけないと認めることがつらい我慢になります。ものを欲しがることがいけないのではなくて,欲しくても勝手に手にしてはいけないというきまりをもう一人の自分が自分に言い聞かせる,その自分との葛藤に耐えることが我慢なのです。

・・・我慢とはわがままな自分をもう一人の自分が抑え込む辛さです。・・・


 〇モラル?

 社会生活にはさまざまな規制があります。普通には法が定められ,違反すると罰則があります。罰に対する恐れが法規制を守る強制力として機能しています。子どもにはお巡りさんに連れて行かれるという脅しになります。大きくはその恐れによって法が守られていることを認めておくべきです。

 しかしながら,法の網はすり抜けることができます。見つからなければ,ちょっとぐらいなら,という欲求の吹き出しを許してしまいます。ポイ捨てぐらい誰でもしているといった言い訳を臆面もなく持ち出す弱さがあります。万引きぐらいと勝手に罪のバーゲンをしたり,援助交際のどこが悪いと売春・買春の塗り替えをしたり,姑息な手を繰り出してきます。法による罰の力だけではわがままの炎を抑え込むことはできません。

 人は日常生活の中でいちいち法を意識して暮らしているわけではありません。道徳・モラルという社会的な規範を身につけているからです。そのエッセンスは「相手の立場を思いやる」という一点です。自分のわがままが相手の立場に及ぼす悪影響を察することがモラルの発動です。もう一人の自分が相手の立場に思いを重ねることで,自分の欲求を抑えようとすることが我慢になります。

 もう一人の子どもを育て,相手の立場になったときの思いを理解させ,自分に言い聞かせるようにし向ける,それがわがままを抑える内蔵された自己プログラムです。法のように外部から押しつけられる規制に対しては,もう一人の自分は逃れようとする悪知恵を働かせたくなります。育ちとしては逆行してしまい,わがままを助長するだけで,いわゆる悪の道に誘います。

 ママが相手の立場になってみせて,相手がどんなに悲しいか,嫌な思いをするか,悔しいか,腹が立つか,語ってやりましょう。咲いている花を折ったときに,「お花さん痛い痛いって泣いてるよ」って言って聞かせていますね。それでいいのです。「ママも悲しいな」,そう付け加えてくださいね。

 人間と動物の違いは,もう一人の自分がいるかいないかです。そのもう一人の自分が他者の思いを自分に向けて投げかけることができるから,人は大きな社会生活を実現できています。本能としてのわがままを上手に統御するもう一人の自分がいるからこそ,皆が欲求を満たすことができて,仲良く生きていけるのです。

・・・モラルとは自己完結してわがままを統御することです。・・・



《わがままを抑えるとは,わがままを実現することです。》

 ○自己主張による反抗とわがままを混同しないこと,わがままを壊滅しないことを述べてきました。通念に反するという印象を持たれたことでしょう。これを機会にご自分でもう一度,お子さんとのいろんな局面を思い出して考えてみてください。

 子どもたちを無気力や無関心,無責任などのないないづくしに追い込んでしまったのはなぜなのかを考えると,生きる炎を消してしまったからと思わざるを得ません。大人はそんなつもりはなかったのですが,結果としてミスリードしたことははっきりしています。やりすぎたことを反省する必要がありそうです。


 【質問11-02:お子さんのわがままを抑えていますね?】

   ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね!?

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