*** 子育ち12章 ***
 

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「第 11-03 章」


『甘える子 しつけのためと 突き放す』


 ■はじめに

 子どもの育ちが育児書や講話などと違っているように感じたり,ママの思いとは一致しないときがあります。このような不安や迷い,悩みは誰でも持つものです。はじめての子育てでは,なおさらのことです。不安にならない方が,端から見ていると不安です。自信過剰は危ないからです。

 子育てが初体験であれば,うまくいくはずがありません。あれこれ立ち止まっていいのです。世界中の親が何とか親を務めているのですから,ママも大丈夫です。小さいことにくよくよしないで,もっと鷹揚に構えていればいいでしょう。一年前の悩みを思い出してみてください。今考えると,それほど悩むほどのことではなかったと思うはずです。

 完全な子育てをしようなどと無謀なことは考えないことです。そこそこでいいのですから。点数でいえば,60点で十分です。残りの40点は,子ども自身の育ちに任せるのです。それくらいの楽な気持ちで,子どもに接してください。

 部屋の隅々までホコリ一つない完全な掃除をしようと思ったら,床をはいずり回って小さなホコリを探さなければなりません。そうではなくて,立って歩くときに目に付く程度のゴミさえ掃除しておけば普段の暮らしに支障はありません。それ以上きれいにしようとするから,ちょっとしたホコリを持ち込む子どもを許せなくなります。子どもは汚すものだと開き直っていれば,悩むこともありませんね。

 我が家流の子育てでいいのです。あっちの子育て,こっちの子育てに振り回されると,我が家の子育てがぐちゃぐちゃになります。ピリピリせずに,ゆっくりと子育てしてください。周りの子育ての中で,我が家はちょっと行き過ぎたなとか,足りないかなと思ったら,その時から静かに方向転換していけばいいのです。急ハンドルは怪我の元ですよ。



【質問11-03:お子さんの甘えを認めていますね?】

 《「甘えを認める」という意味を確かめておきましょう!》


 〇甘えていい?

 「情けは人のためならず」ということわざがあります。日本語について語られるときに,よく引き合いに出されています。昔と今で,意味の逆転が起こっているからです。もともとは,人のために人に情けを掛けておくと巡り巡って結局は自分に情けが戻ってくるという意味でした。今では,人に情けを掛けると,その人が甘えるようになるので,その人のためにならないという意味に受け取られています。

 似たような状況は他にもあります。小さな親切大きなお世話,隣のおばさん蹴飛ばそう。人のためにする親切はその人のためにならないということです。今風の人との関わりは,基本的に放っておいた方がいい,構わない方がいいということのようです。ところで,その生き方は巡り巡って自分の孤独感を増幅します。若者が携帯電話にしがみつくのは,そのせいです。

 その人間関係のスタイルがベースにあるために,子育てについても甘やかすことはいけないという了解が暗黙のうちになされています。甘やかすと自立に差し障りがあるということのようです。この本末転倒を正しておかなければなりません。甘えを許しておかないと,人が困っているときに情けを掛けられなくなります。困ったときはお互い様,それが人と人とのつながりであり,共に生きる術なのです。

 赤ちゃんが泣いているとき,しっかり胸に抱き上げてやらなければなりません。抱き癖がつくなどと余計なことは考えないことです。子どもが泣くときは痛いとか,不安であるとか,寂しいとか,マイナスの状況に陥ったという理由があります。そこから救ってやることは親の情けです。救われたら,子どもは安心して,それ以上の甘えを拒否するでしょう。それが自立へのスタートラインになります。

 子育てにおいて気をつけることは,甘えを自制させることです。お腹が空いた子どもに,食事を与えることは甘やかしではありませんね。必要なことです。満腹すれば,お菓子を食べたいとは言わないでしょう。もしも別腹などと言い出すとすれば,それが自制していない悪い甘えなのです。

 子どもが困っていることを訴えると,ママが聞き入れてくれたということになれば,よかったという安堵感と共に安心の状態に入れます。何かを表明するとそれにきちんと反応が返ってくるという達成感も味わいます。この繰り返しが,そのほかの面でやる気につながります。もしも,訴えても聞いてもらえないことが重なれば,どうせ何をやっても駄目なんだとやる気を失ってしまいます。

・・・困ったときは甘えていいという許しが,人間関係のベースです。・・・


 〇甘さの処方?

 ママとお出かけをしたとき,「疲れたからダッコ」と訴えてくることがあります。無理矢理手を引っ張って歩かせますか? それとも「仕方ないわね」とぼやきながらもオンブやダッコをしてやりますか? もちろんその時の状況にもよりますが,甘えを許さない厳しいママになるか,甘やかしてしまう優しいママになるか,迷いますよね。

 迷うときには,別の答えを探せばいいでしょう。いくつかの答えが可能です。まずは「疲れたね」と言って疲れを分かってやり,「あそこまでなら歩けるね」と,目標をはっきりさせてやることでがんばりを引き出してやります。または,オンブをしてやりますが,「あそこまでよ」と限定をすることです。あるいは,「疲れたから」という理由を解消する手もあります。「しばらく休もうね」と,子どものペースに合わせてやることです。疲れが取れたら,歩こうという気持ちを呼び起こせます。

 いずれも,何らかの形で子どもの訴えを受け入れてやれます。しかし,際限なく受け入れているわけではありません。そのことが大事です。0か1かではなくて,0.3,や0.7あるいは0.5の受入です。その割引率は,状況に応じて決めればいいでしょう。たとえ全部ではなくても,聞いてもらえたということで,後の不足分は素直に受け入れることができます。甘えを段階的に薄味にするようにしてください。

 背水の陣という心構えがあります。退路を断つことで,全力で前向きになる気力を引き出そうとします。そんなことは度々起こるわけでもありません。結婚や就職で家から巣立つとき,「いつでも帰っておいで」と送り出されたら心丈夫です。でも,その言葉に頼って帰ってしまうと,大人としては甘えになります。そこがつらいところですね。

 生家とは親のものです。子どもにとっては甘えていいところです。夫婦の家はお互いに甘えていいところです。それだからこそ,親子や夫婦のつながりが成り立ちます。もちろん一方的な甘えは大人には許されないことですが,子どもには甘えが育ちのエネルギーに変化すると考えてください。

 甘いものに飽きると辛いものが欲しくなります。育ちにおいても,親に十分甘えたら自分から別の方向に動きたくなります。そのタイミングをとらえて,子どもの能力を引き出すようにし向ければ,自然に甘えを卒業できるでしょう。甘えの処方箋を上手に調合してください。

・・・甘えを取り上げられたら禁断症状を起こすだけです。・・・


 〇聞く気?

 大人とだけ付き合っていると100%の甘え状態になりやすく,自分の力を試すチャンスを奪われます。ママの心配事の一つにおじいちゃんやおばあちゃんが甘やかして困るというものがあります。せっかく厳しくしつけているのに,という嘆きです。古典的な厳父慈母のバランスが消えた後始末に,ママは悪戦苦闘を強いられています。

 いくら言っても言うことを聞かないというママの嘆きもあります。どうして子どもはママの言うことを聞かないのでしょう? 聞く気がないからです。どうして聞く気がないのでしょう? ママの言葉を聞きたいなあ,という気持ちになれないからです。どうしてでしょう? ママが遠い人だからです。

 子どもにとってママは一番身近な人です。何から何まで世話をしてやっているのはママだから当然です。そこでママは子どもと固く結びついていると思いこんでしまいます。そう思うのは仕方のないことです。でも,子どもの立場から見ると,世話をしてもらっているのは当たり前であり,ママとのつながりができるのは別のルートなのです。

 それは何でしょう? ママにどれだけ甘えられたかということです。甘えという行為の真ん中に気持ちのつながりが通っているのです。甘えは無条件に受け入れてくれるという確認作業です。甘えちゃ駄目というしつけは,その確認を払い除けます。気持ちのつながりを持とうとしているのに,それができません。結びついていない人の言うことは,きちんと聞こうという気にはなりません。

 気持ちのつながりとは,気持ちを投げかけるだけでは完成しません。気持ちを受け取ってもらえたときにつながります。子どもの気持ちを受け止めることからはじめないと,ママの気持ちを受け止めることはできません。乱暴に言えば,甘えさせるからしつけが有効になるのです。

 お腹が空いたらイライラして,人の話を落ち着いて聞く気にはなりません。同じように,心が満たされていないと,話は上の空になります。気持ちを飢えさせないようにすることが,しつけの下準備に当たります。もちろん,甘いお菓子を与えることではありませんので,ご注意を!

・・・腹八分が健康の元,心八分が素直の元。・・・



《甘えを認めるとは,子どもを落ち着かせることです。》

 ○甘やかせればつけあがる,と言われます。それも一理あることです。そこで甘やかすことを止めにしようとします。でも,それが過ぎるとかえってやぶ蛇になります。何事もほどほどがいいのです。べたべたと甘いのではなく,かといって甘さの干からびたのも困るのです。

 時間についても同じように考えることができます。四六時中甘えさせるのではなく,かといって一瞬たりとも甘やかさないというのもいけません。一日の中でたとえ限られた時間であっても,たっぷりと甘えさせてやればいいのです。メリハリの利いた時間を過ごすように工夫してくださいね。


 【質問11-03:お子さんの甘えを認めていますね?】

   ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね!?

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