*** 子育ち12章 ***
 

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「第 11-06 章」


『幼子は ママの言葉で イヌ叱る』


 ■はじめに

 こどもの日の新聞には,子どもの人口統計が掲載されていました。15歳未満の人口が,22年連続して減少し,1801万人だそうです。総人口に占める割合は,14.1%で,過去最低を更新しています。ちなみに米国は21.2%です。一方では,65歳以上の高齢者の割合が多くなってきました。

 少子化は止まる気配がありません。高齢社会の出現と背中合わせになっていることを考えると,今働き盛りの人には,将来面倒を見てくれる人がいなくなるということです。自分の子どもを持っているとしても,安心はできません。子どもを持たない人が高額の謝礼で世話を買い取るようになると,実の親を放り出して稼ぐ方に流れるかもしれません。

 国際化が絡んでくると,アジア諸国から若い人が流入して補充されるか,高齢者が他国に流失しなければならなくなります。いずれにしても,自分の老後を見ず知らずの外国の若者に委ねる道しかなくなってきました。誰のせいでもなく,自らがそうなるように選んだ道ですから,後悔することはないでしょう。

 現在までのところ,人的な資源はリサイクルが利きません。おとめの"おと"には,再生産という意味があります。子どもを産むことのできる性がおとめであり,産ませることのできる性がおとこというわけです。人が生きる意味としての子産み・子育てが停滞している社会は,人的資源の浪費社会ということになります。

 クローン人間が生まれるようになってきましたが,やがて生産ということに向かわなければいいと願います。アトム型のロボットの段階で止めておいた方がいいでしょう。命という価値を真剣に考えなければならなくなっているようです。



【質問11-06:お子さんの雑言を抑えていますね?】

 《「雑言を抑える」という意味を確かめておきましょう!》


 〇負の言葉?

 ネットの世界には匿名で書き込みするサイトがあり,読むに耐えない書き込みが目白押しです。匿名であることに隠れて,罵詈雑言が噴出します。事件の関係者にいたずら電話をする輩も,匿名に逃げています。人は悪口雑言を抱え込んでいて,匿名という排気口からあふれ出るようです。

 普段は名前を大事にして,お澄ましをしています。怒りが高じると破れかぶれになって,つい歯止めがゆるむことがあります。言ってはならない言葉が,相手の気持ちを逆なでします。ケンカの罵声は言葉を凶器として使うものです。ヤジというのも,相手を痛めつけようとする軽いジャブです。なるべく使わない方がいいのですが,耳にすることも多々ありますね。

 言葉の痛みを舌の痛みである激辛と同じ感覚で楽しむ場合があります。ブラックユーモアなどです。子どもの世界にも登場したのが,テレビアニメのクレヨンしんちゃんでしょう。ママはご覧になっていますか。'みさえママ'のキャラクタはお好きですか? そのまま実現してみようと思われますか?

 楽しみの手段としてはあってもいいでしょうが,普段の暮らしにまで入り込ませるのは考え物です。番組の非難をしているのではありません。メッセージの内容は別にして,表現の仕方だけを話題にしています。激辛が常食になれないように,汚い言葉は日常語にはなれません。その弁えを教えなければなりません。

 公式の場ではいろんな忌み言葉があります。そんなことは旧い習慣だと切り捨てられるかもしれませんが,嫌がる人がいる以上,避けた方がいいでしょう。言葉は理屈だけではなくて,感情を醸し出す縁でもあるからです。売り言葉が買い言葉になるのは,感情のもつれを引き出してしまうからです。

 皮肉が機能するのは,芥子としてちょっぴり紛れ込ませられるからです。優しい言葉遣いがベースになるように,お子さんとの会話では気をつけてください。トゲのある言葉はママに似つかわしい言葉ではありません。ママは言葉の先生なのです。

・・・負の言葉を知っていて,それを使わないようにする抑えが肝心です。・・・


 〇伝わり方?

 "くだらないおしゃべり"という類別をされることがあります。特に年輩の男性が口にするようです。言葉遣いにおける男女差が指摘されています。ルソーはエミールの中で,「男は自分の知っていることを語り,女は相手に喜ばれることを話す」と記しています。男は知識を交わし,女は感性を交わすと言い換えておきましょう。

 知識が詰まっていない会話を,男はくだらないと考えてしまう傾向があります。夫婦の会話でも,いわゆるどうでもいいことを話すことで気持ちのつながりを持とうとするママに対して,中身のない話は無駄だと上の空になるパパがいます。お互いの関心が違うので,どうしても会話のすれ違いが生じてしまいます。

 どちらがいいとかわるいという問題ではありません。あえていえば,どちらも必要です。集まりの中で,「堅い話はそれくらいにして・・・」という切り返しが出てきますが,緊張と緩和がバランスすることで落ち着けるのです。どちらかだけに片寄ることは要注意です。ただし,会議の席などでは,関係のない話で脇道にそらしてしまう方がいますが,議論になれていないためです。

 子どもたちに私語が少しばかり蔓延しすぎています。場所柄的には,傍迷惑という意味で雑言になります。バスの中での大声のおしゃべりや携帯電話の使用も,聞きたくないのに聞かされる軽い雑言です。言葉は汚くなくても,まき散らされるとイヤなものです。言葉という唾が浴びせかけられるような悪寒をさそいます。

 言葉はお互いが求める内容と形を備えていてこそ,その役割を発揮することができます。それを読み違えると勘違いが発生し,そんなつもりではない伝わり方をしてしまいます。「バカ」という言葉も,言い方,聞き方で伝わる内容は変わりますね。あだ名にしても,軽蔑からと親密からの逆の意味合いが含まれます。

 言葉狩りという単純な扱いでは,言葉をよくすることはできません。もちろん差別語は封印しなければなりませんが,言葉を交わすもの同士の了解が前提にあることを押さえておかなければなりません。お互いを認めあえるような言葉遣いであってほしいものです。言葉を投げかける際には相手の心に向けたコントロールが必要です。

・・・悪送球ならぬ悪送語は受け取らされる身になれば雑言になります。・・・


 〇憚る?

 人前を憚る言葉は,隠語ですり抜けたり,○○○といった伏せ字やピーという音をかぶせたりしています。子どもは一時期下半身に関わる言葉を口にすることがあります。それはしっかりと抑え込んでおく必要があります。ただ厳しく叱りつけるということとは少しばかり違います。

 大人になれば,言葉遣いは人格と重なります。しかしながら,子どもはまだ定着過程の途中ですから,子どもを叱るのではなく,言葉を叱ることにとどめておくべきです。あるいは,場合によっては無視することです。口にしても聞いてもらえない,通じないということが分かれば,言わなくなります。間違ってもおもしろがることはしてはいけません。

 悪貨は良貨を駆逐するという言葉があります。美しい言葉はじわっと心に利いてきますが,汚い言葉はズバッと感情に直結します。その点で分かりやすいので,使いたくなるものです。感性に訴えることから言葉を身につけている幼い頃には,汚い言葉の方がお気に入りに登録されやすくなります。そう考えると,言葉のしつけは前途多難のように思えてきますが,救いがあります。

 感性には飽きるという特徴があります。刺激的なことは長続きしないのです。つまり,一旦停止の状態が必ず訪れます。そのときに,美しい言葉がそばにあれば,馴染んでみようと新しい言葉の道に乗り換えることができます。もし,飽きたときに何もなければ,よりいっそう刺激的な言葉に突き進んでいきます。そうなると深みにはまるので,修復が困難になります。

 味覚が濃い味に慣れると下品になるように,言葉も強い感性に結びつくと卑しくなります。さらに,つきあう仲間が限定されてしまうという弊害も現れます。その行く末が仲間内ではおしゃべりできるのに,仲間の外に出ると途端に無口になるということになります。感性が異なる人とは,感性的な言葉は通じないからです。

 敬語が使えない事態には,感性を上品に装う言葉の持ち合わせがないという背景があるのです。間接的な表現であれば,お互いにすり寄せることが可能になります。「むかつく」という異臭に満ちた言葉では,受け取りを拒否されます。通じません。あまりに生々しすぎるのです。スッピンの言葉は人に向けるものではありません。

・・・身繕いに敏感な割には,言葉繕いに鈍感になっていませんか。・・・



《雑言を抑えるとは,誰とでも気持ちよく心を通わせるための前提です。》

 ○陰口というヴィールスに感染した言葉が,治まりを見せずにはびこっています。閉鎖社会である教室で蔓延すれば,いじめとして発症します。大人の社会でも結構猛威をふるっているようです。かなりの感染力を持ったヴィールスです。マスクを装着してくださいね。

 陰口は転移します。このグループで人の陰口をたたいていると,隣のグループに移った途端にこのグループの陰口にすり替わっていきます。このように節操のないのが陰口の特徴です。深入りすると怖い目に遭いますよ。陰口に感染しないようにするには,自覚という心洗いを励行することです。


 【質問11-06:お子さんの雑言を抑えていますね?】

   ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね!?

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