『子どもから もらう苦労が 親育て』
■はじめに
第11,12章では,失敗・反省・学習・挑戦の繰り返しが育ちと書きました。
冬の寒さがあるから,春の開花が促されるのが,自然な育ち方です。
苦労をのり越えるから,人は一回り大きな年輪を刻んでいきます。
子育ち12章は,12章で一括りとして書き続けてきました。
一応の完結をしたわけですが,まだ十分ではありません。
羅針盤を使って育てようとしている子どもは,どんな子どもでしょうか?
この忙しい世の中で,子育てもしだいにせっかちになっています。
一応のことをしてやれば,子どもの人生は子どものものと手放しです。
親のものは親のものでないと,長寿社会は乗り切れません。
それでも,親であれば,こんな子に育って欲しいという願いがあります。
そんな願いを込めた親としての最初の子育ては,命名することでした。
一方で,「親つけた名前のように育たない」という川柳がありました。
子育てとは,もしかしたら,親としてのあきらめの道かもしれません。
羅針盤の目指す方角には,どんな子どもが育っているのでしょうか。
目指す子ども像について考えてみることが,この章のテーマです。
【質問13:あなたのお子さんは,笑顔で暮らしていますか?】
《「笑顔」という意味について説明が必要ですね!》
○この子の笑顔が見たいばっかりに・・・。
赤ちゃんは生まれてまず「オギャー」と産声をあげます。泣いているように聞こえますが,この世に生まれて悲しいのでしょうか? 泣き声を聞いて親は無事な出産と安心しますが,その悲しげな響きは親を奮い立たせる力も持っているようです。「心配しなくていいよ。あなたをしっかり育てて,幸せにしてあげるから。きっと生まれてきてよかったと思わせてあげる」と,親心が反応しているはずです。
時と所を選ばず泣き出す赤ちゃんに振り回されて,「いい加減にして」と思うことがあります。そのつらさは第二の出産の陣痛です。もう一人の子どもが生まれようとしています。自分はママの思い通りになる生き物ではない,ママとは別の人間として生きているんだ,と自己の存在を主張しているのです。まずママにそのことを分かってほしいと言っています。もう一人の自分をしっかり産んで頂戴と訴えています。
赤ちゃんの寝顔を見ると,昼間の憎らしさは微塵もありません。ママの懐で安心して眠っています。パパは近寄れません。ママに自分のすべてを任せきっているようです。赤ちゃんも第二の出産に一生懸命です。その健気さがママを親へと育ててくれます。子どもはママと二人三脚しています。
赤ちゃんの笑顔は親にとっては宝物です。親の苦労に報いようと神様が赤ちゃんに笑顔を持たせてくれたのかもしれません。親はその笑顔が見たいばかりに苦労を苦労と感じなくて済みます。動物の赤ちゃんでもかわいいと感じるのは,人が誕生を慈しむ心根を本能的に持っているからでしょう。それを引き出してくれるホルモンが,あどけない笑顔なのです。
・・・子どもの笑顔は,親への感謝・共感・応援メッセージです。・・・
○仲良しというのは,どうあればいいのでしょうか?
人は他人と仲良く暮らしていくことが幸せだと信じています。子どもにも皆と仲良くしてほしいと願っています。でも仲良く暮らすことがどんなことなのか,意外と分からないままに置き去りにされています。ことに親はそのことを知っていないと,子どもに伝えてやれません。一度きちんと考えておく必要がありますね。
姉妹のいる4人家族のひとこまです。お姉ちゃんがお友達の家からケーキを1個頂いて帰ってきました。ママは妹と分けて食べるように言いました。姉妹がケーキを食べているところにパパがやってきました。「どうしてママはケーキを分けて食べるようにと言ったのかな?」と尋ねました。ここで先を読む前に,読者のママも考えてみてください。ママはなぜそんなことを言ったのでしょうか?・・・・(考え中)。
姉妹の答えを聞いてみましょう。お姉ちゃんは「妹がかわいそうだから」と答えました。自分がもらったケーキだからと自分だけで食べたら妹がかわいそうです。妹の気持ちを分かってあげられる思いやりのある優しい子です。ただこの優しさには,小さな弱点があることに気をつけておいてくださいね。それは相手に「アリガトウ」の言葉を要求してしまうことです。「〇〇してあげた」のだから,お礼の一言があってもいいのではという気持ちです。もしお礼がなかったら,もう二度とあげないということになりかねません。
次は妹の答えです。「今度私がもらったときに必ずお返しをするから」と言いました。頂いたらお返しをする礼儀を知っている賢い子です。頂くことで借りができますが,それはいずれ返せば一応のけりが付けられます。もし頂きっぱなしにしたら礼儀知らずになり,人との関係が結べなくなります。早く返さないといつまでもすっきりしないかもしれません。いずれにしても人との関係は持ちつ持たれつです。
さて,読者ママはどちらでしたか? もしかしたら妹の借り分はママが肩代わりしてあげるつもりなのかもしれませんね。あるいは,他の答えでしたか?
この姉妹の答えをニコニコと聞いていたパパは,「ママがケーキを分けるように言ったのは,分けて食べた方が美味しいと思える子になってほしいからだよ」と言いました。
「妹がかわいそうだから」とか,「次はお返しをするから」というのは,関係を結ぶテクニックです。暮らしのマナー,エチケット,礼儀,暮らし方といった方法です。それは人が仲良く生きていくための知恵です。その知恵によって人は何を目差してるのかというと,仲良くすることの喜びです。仲良く分けて食べる方が美味しい,一人で食べるより皆で食べた方が楽しいという気持ちが大切です。しなくてはならないこと,した方がよいことではなくて,そうしたいという心の形を持ちたいものです。
誰のケーキということは消して,姉妹がお互いに「美味しいね」と食べることの喜びを味わえる仲,それが仲良しなのです。そこには必ず笑顔が現れます。その喜びの基盤を育てられるのは家庭しかありません。もしもパパが俺の稼ぎで食べさせてやっていると思っているなら,まだパパにはなれていないということです(反省中?)。テクニックはしつけることができますが,心は伝染させるものだということです。
・・・仲良しとは,一緒にすることに喜びを感じることです。・・・
《笑顔は,周りの人に幸せをもたらしてくれます》
以前に笑顔は人を受け入れるサインだと書いておきました。だからこそ,人とのつながりにはお互いの笑顔が不可欠です。ママの笑顔は子どもやパパとのつながりをもたらしてくれます。パパも笑顔を見せなくてはいけません。ムスッとしたパパは,子どもが近寄れません。ママもおもしろくなくなります。家族は一緒に楽しむものです。仲良しとはしなければならないものではなくて,仲良くしたいと思うものです。それが笑顔のもたらす幸せなのです。
○笑顔になる合い言葉は,チーズや1+1=ではなく,ラッキーです。
【質問13:あなたのお子さんは,笑顔で暮らしていますか?】
●答は?・・・もちろん「
イエス」ですね!?