*** 子育ち12章 ***
 

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「第 14-02 章」


『育てよう 互いの良さを 認める子』


 ■徒然子育て想■
『出題者の悩み-続き-?』

 前号からの続きです。国立大学の入学試験問題を作成する側の悩みについて書きました。入学試験は資格試験と考えれば簡単なのですが,定員があるために競争試験になり,序列をつける必要があります。そうなると,受験生の中間レベルに合致する問題を課さなければなりません。

 できる子とできない子は見えるのですが,ほとんどの子は見えないのです。いわゆる普通の子のレベルを見切ることが出題者にとって最も大きな課題です。どうしても難問の方にシフトしてしまう傾向を引き戻すためには思い切りが必要なのです。経験によって,そこまでやるかという程度まで易しくすることになります。

 その結果です。数千枚の答案紙と共に採点のために一室に缶詰になります。答案の束は試験室ごとに綴られ,受験番号は見えないように綴じ込まれています。答案は必ず二人の採点者により2回採点されます。一回目の採点がたいへんです。正解だけと比較して○×を点けるのであれば簡単です。

 実際はかなり細かな作業になります。部分点をあげるからです。物理ですから,ほとんどの解答が数値や式です。式の符号が間違っているだけなら何点とか,係数間違いだけなら何点とか,なるべくすくい上げてやろうという採点をします。いろんなケースが出てきて,その都度採点者全員で協議して確認していきます。

 あれほど易しくしたつもりなのに,答案は見事にばらついていきます。ほとんどの答案が正解ばかりになるのではという危惧は覆されます。よくもこんな間違いをするものという感想を持たせる答案がたくさんあります。ちょっと考え直せば分かるだろうにという小さなミスがたくさん出てきます。普通の者にとっての試験対策というのは,できることよりも,ミスをしないことの方が大事だということを感じます。力を十分に出し切ることができたとき,合格ラインに入り込みます。

 採点していてホッとするのは,できている答案と全くできていない答案です。全部○か全部×ですから,あっさりしていて悩むことはありません。普通の答案が手を取ります。どこまでできているかを逐一フォローしていかなければならないからです。そしてほとんどがそんな答案なのです。

 子どもはほとんどが普通の子どもです。子育ては見えない子どもを相手にしています。じっくり眺めていないと,どこまでできたかを見定めてやることはできません。正解でないから×。そういう荒っぽい評価をしていたら,ほとんどの子どもは不合格になります。

 部分点をあげるという面倒な作業をしてやることは親でなければしてやれないでしょう。親心とはそういう細やかなおつきあいをすることが苦にならない心情を言います。親から見れば容易いことをしくじっている子どもたちを温かく見守ってやってください。それはとても忍耐と根気の要ることですが・・・。



【質問14-02:お子さんは,活発ですか,それとも内気ですか?】


 ○活発な子!

 人の欲望に段階を付けた人がいます。マズローの欲求5段階説です。生存の基本的欲望(食欲など),安全欲望(住宅など),所属欲望(家族など),尊敬欲望(社会的立場など),自己実現欲望(生きがいなど)です。人は社会で生きていくので,社会の一員であるという自覚を欲します。子どもたちが目立ちたいという欲求を持つのは自然です。

 園や学校で活発に過ごしている子どもを見ると,親はうれしいものです。動き回る子は自然と目につきます。それは目立つことであり,集団に溶け込んでいる証でもあるからです。子ども社会の中でしっかりと自分の立場を作り上げていると思われます。子どもなりの自立している姿であり,親は安心します。

 ところで,活発な子どもは基本的に自分の思うままに行動しています。見た目は仲良く遊んでいるようでも,周りのものがそれを気持ちの中で納得して受け容れているかどうかをチェックしておかなければなりません。○○ちゃんはすごいなという幼い尊敬が付随していればいいのですが,身体が大きくて強いので自然にのさばっているのであれば気をつけた方がいいでしょう。社会性とは,他者から認められることだからです。

 自分は周りの人からどのように見られているか? どのように思われているか? 自分を見る「もう一人の自分」がしっかりと育たなければなりません。子ども社会の中で自分に何が期待されているかを見極めるのは,もう一人の自分だからです。もう一人の自分が育っていないときに,自分のわがままに留まってしまい,存在が傍迷惑になります。

 集団生活の基本は,他者と自分の関係を常に意識できることです。活発な子がリーダーにまで育つかどうかは,この一点に掛かっています。活発なだけが取り柄では育ちは中途半端です。その先の育ちが期待されているはずです。みんなの信頼を背景にした活発さであって欲しいと願われます。それは周りに活発さを伝染させるということです。自分だけではなく,仲間も一緒にという気持ちの育ちが大切です。

 子どもの活発さは得意な場面で発揮されます。走るのが速い子,力が強い子,話が上手な子,ゲームの得意な子,計算の正確な子,絵のうまい子,いろんな子どもがいるはずです。もう一人の自分が他者の得意をお互いに認め合えたら,素晴らしい仲間集団ができあがります。自分だけではなく,自分たちという気持ちを育てるようにし向けることが社会性の育成です。

・・・活発な子は皆と協力できるようになることが次の課題です。・・・


 ○内気な子?

 家にいるときはのびのびしているのに,外に出るとおとなしくしている子どもがいます。いわゆる,内弁慶な子どもです。親にすれば友だち遊びができないことが心配になります。つい勇気づけるつもりで「一緒に遊んできなさい」と背中を押してやりたくなります。でも実はまだ機が熟していないのです。

 子どもはいろんなその子なりの理由を抱えています。それを見つけてほぐしてやることが先です。少子化の中で育った子どもは,友だち遊びの楽しさを知りません。きょうだいが多いと皆で遊ぶことに慣れていますから,その延長上にある友だち遊びにもたやすく入り込めます。外で遊んでいる子どもたちを見ると,きょうだいのつながりが核になって輪が広がっています。今の子はそれだけ前準備をする場が失われているのです。少しずつ外への階段を登らせましょう。

 家の中で一人遊びに慣れている子が増えてきました。親が相手をしているから,一人ではないと思われるかもしれませんが,子どもは一人です。同じくらいの子どもは大人とは遊びの感性が全く違います。大人は遊ばせてやるという態度になるからです。ときには指導という余計なものまで持ち込まれます。子どもにすれば純粋に遊んでいるのではありません。

 家の中の相手である親は自分に合わせてくれますが,外にいる友だちはそんな気遣いがあるとは思えません。不安になり,怖じ気が出て当然です。そばにいてじっと友だちを観察する時間を十分に与えてやってください。見ていることで自分も一緒に遊んでいる気になって,シミュレーションすることができます。待つ身の親にとっては長い無駄な時間に思えるかもしれませんが,子どもは案外と早く立ち上がりをするものです。もちろん幼いときの方が時間は短いということです。

 知らない子に警戒心を持つのは普通です。親同士が仲良く語り合うことで,親が大丈夫という保証を与えることも必要です。ママが見ているからという自分への後押しと同時に,ママが信頼している相手だという確認があれば,警戒心は薄れるはずです。親の保護活動とは我が子の世話をすることではなくて,我が子の環境の方に手配りをすることです。

 また,もう一人の自分が早熟で,自意識過敏になっている場合もあります。相手が自分を気に入ってくれるかどうかに関心が集中して,その結果を見届けることが怖くて内気な態度に閉じこもってしまいます。どうすれば相手に認めてもらえるか,そのことばかりを考えると先に進めなくなります。人の思惑を大して気にしなくてもいいという自意識への消火活動が必要になります。まず,親が「あなたのことを大好きだから」という強いメッセージを伝えることです。たとえ人には好かれなくても,親に好かれていると思えば,かなり楽な気持ちになります。

・・・内気な子は助走期間がちょっと長めになっているだけです。・・・



《活発か,内気かは,それぞれ育ちのステップが違っているだけです。》

 ○育ちのペースには早い遅いがつきものです。要は二十歳までに一通りの育ちをすればいいのですから,焦ることはありません。それは頭では分かっているけど,目の前の今の育ちが後々影響してくるのではという心配も出てきます。だからといって,我が子に必要な育ちをよその子のペースに合わせるために疎かにしては元も子もありません。

 子どもを育てるためにそれぞれの親が付きっきりになっているのは,子どもの育ちがまとめて面倒を見られるものではないという証拠です。一人一人の育ちは違うからこそ,常にその子を見ている親という存在が必要になるのです。蛇足ですが,内気な人ばかり集めたら,そこには活発な人が現れてきます。相対的な姿でしかないということも知っておいてください。

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