*** 子育ち12章 ***
 

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「第 14-03 章」


『育てよう 甘えに満ちて 元気な子』


 ■徒然子育て想■
『社会通念の眼鏡違い?』

 過疎地の開発のために,道路を整備するという行政手法があります。滅多に車の通らない立派な道路が山間部などに延びています。税金の無駄遣いと論評で叩かれる場合もありますが,過疎地を繁華なまちと直結することで過疎対策になると期待された政策でした。まちに楽に出て行けるようになれば居住しやすくなるので,人がUターンしてくるということです。ところが,現実は逆でした。道は出口になってしまって,より過疎化が進んでしまったのです。まちの魅力が吸い込んでいったのです。

 一見場違いな話題で奇異に感じられたことでしょう。もう少しおつきあい下さい。子どもたちはマスコミの情報によりまちに直結しています。今ではさらに携帯電話を持つようになってきました。親にすれば子どもに携帯電話を持たせることで,親との連絡を確かなものにできると思っています。ところが実際は,子どもは親から離れていく一方です。携帯の先には華やかなまちが待ち受けています。親とつながるより,余程ワクワクする世界があります。

 過疎地の道路行政と親子の携帯関係とは,まったく同じパターンに落ち込んでいます。フロイトは,文明が進めば家庭は崩壊すると予言しています。家族のつながりがなくても,生きられるようになるからです。子どもたちも,金さえ手に入れば,家にいる必要性を感じなくなっています。家にいればあれこれうるさくいわれますが,外ではお客様扱いをされていい気分に浮かれていられるからです。お客様とは金を持っている間だけなのに,それが分かりません。

 情報化というのは両刃の剣です。それも切れ味の鋭い方は人の弱みに切り込んできます。気がついたらズタズタにされるという羽目に陥ります。オレオレ詐欺などはその典型でしょう。道路網にしろ情報網にしろ,その整備は個人の生活空間を拡大することです。確かに便利になるという期待で導入されるのですが,空間の広がりの中で遭遇する面白くきわどいポイントに吸い込まれるのが関の山です。そんなつもりではなかったと気がついたときは,取り返しがつきません。

 うまい話には気をつけろ。それが庶民の知恵だったのですが,個人の規模をはるかに超えたうまい話も,同じように気をつけて,デメリットや危険性を勘案しておかなければなりません。世の中ほとんどがうまい話に浮かれて嵌り込んだバブルの例は身近なものです。そうそういいことばかりではないという,現実感覚を親も育てないといけなくなりました。

 大学生を長い間社会に送り込んできた経験から,親御さんに知っておいて欲しいことがあります。就職先を選ぶとき,今流行っている優良業種を選ぶことは止めた方がいいということです。今流行っているということは,子どもが社会に入って一線に立つ頃は廃れているということです。それよりも変化に適応できる基礎を十分に身につけた上で,10年先を見越した成長業種を見極めてやることが大事です。目先を追いかけていると,思いもしない落とし穴が待っています。



【質問14-03:お子さんは,しっかりしてますか,甘えん坊ですか?】


 ○しっかりした子!

 しっかりした子って? どんなお子さんだと思っておられますか? 自分のことがちゃんと自分でできる子ども? 園や学校に遅れずにちゃんと出かけられる子ども,親に言われる前にちゃんとしている子ども,その他にもあるでしょうね。しっかりして欲しいことって。まとめていえば自立している子ども,言い換えれば親離れしている子どもです。でもなかなか親の眼鏡に適うしっかりした子は育ってくれないものです。

 よそのお子さんを眺めているとき,しっかりした子どもというのは少しばかり違った観点になります。きちんと挨拶ができたりお話ができるなど,行儀のよい子を差しています。特に言葉遣いは一目瞭然です。「しつけができたしっかりしたお子さんですね」というお褒めの言葉を受けるはずです。「いいえ,うちではやんちゃで困ります」と返しながらも,そうかなと我が子を再評価されていることでしょう。

 しっかりしていると思うとき,親はちょっとした勘違いをします。しっかりしているから親離れしたと,安心して任せます。そこで子離れをします。ちょっと話は変わりますが,出かける子どもが玄関から出た途端に,内からバチンと鍵をかけますか? 訪ねてきた方が辞したとき,直ぐに玄関を閉めて鍵をしますか? 後ろ姿を少しの間見送るのが礼儀です。出ていった後,普通ならしばらく後ろ姿を見えなくなるまで見送りますよね。同じように,親離れしたからといって直ぐに子離れしてはいけません。しばらく見守るという猶予期間を置いてください。

 しっかりしているようでも,子どもは子どもです。状況がいつも同じというわけではありません。不測の事態が起こるものです。そんなとき経験の少ない子どもはうろたえます。毎日の通学路でも,雨の日や風の日があります。子どもはそれなりにしっかりと対応しています。その健気さをママに見てもらえたら,子どもにはどれほどの励みになることでしょう。任せたといって見ていなければ,その頑張りを認めてやれません。

 人は大人でも,頑張りを見てくれている人がいると思えば,持続への励みになります。会社では上司に認められたい,社会では先輩に認められたいと思っています。認められたいという思いは子どものときには親に向かいます。しっかりすることは人の手を借りないことですから,必然的に孤独なのです。人とのつながりをどこかで実感していないと,気持ちの落ち着きがなくなります。夫婦の間でも同じですよね。

 親にしっかりと見送られながら,子どもはやがて友だち仲間へと対象が移っていきます。もし親がバタンと扉を閉めてしまったら,子どもは後ろ髪を引かれる状態になり,前に向かおうとする勢いに水を差されることになります。子どもは親の後ろ姿を見て育ち,親は子どもの後ろ姿を見て育てているのです。

・・・しっかりした子は,しっかり見守ってあげることです。・・・


 ○甘える子?

 いくつになっても,親から見れば子どもは子どもです。年の差は決して離れませんから,そこにある経験の差はどうしようもありません。親は常に上位の立場にあります。下位にある者は上位の者に甘えます。甘えれば上位の者はうれしくなり,結果として可愛がってもらえるからです。和やかな関係と打算が合致するので,共に居心地のいい状況に安住します。祖父母と孫の関係は,その良い例でしょう。

 しつけという大役を引き受けているママは,子どもを甘やかしてはためにならないと思っています。諺の「情けは人のためならず」とは,情けをかけて甘やかすとかえってその人のためにならないという意味に受け止められているようです。甘えることはいけないことと考える勘違いが進んでいます。元々の意味は,情けをかけておくと巡りめぐって自分がいつかは情けをかけてもらえるということです。渡る世間は鬼ばかりではないという人の信頼関係がベースにあるのです。

 一方,甘えさせて育てれば,ろくな子どもに育たないのではと危惧されます。それもまた間違ってはいません。甘えることは大事なことであり,いけないことでもあるということになり,わけが分からなくなります。どうすればいいのでしょう。子育ては迷うことが多いものですが,これもその一つです。大事なことは,甘えの区別をすることです。甘えにはいろんなものがあり,それを使い分けなければなりません。

 よい甘えとわるい甘えの境界は何でしょうか? もちろん,見境なく可愛がるあまりに甘えさせてしまうのは論外です。喜ばせるつもりと自分に言い聞かせながら,実のところはご機嫌取りをしているだけになります。子どもとの日頃のつきあいが薄いという後ろめたさを感じたりすると,目を曇らせてしまいます。このように親の方は自分の思いで動く傾向があるので,甘えの境界は子どもの方に見つけておいた方が無難です。

 最も簡単な目安は,子どもの求めるものが有償か無償かということです。モノをねだるような甘えは有償ですから控えるようにします。あっさりと買い与える癖をつけると,買ってくれないから嫌われているという判断の仕方をします。人のつながりをモノの授受で計算するようになりかねません。ママ〜と言って甘えてくるときは,無心に抱きしめてやればいいのです。ママの胸は無償ですから。ママもただ抱かれたいと思うときがありますよね!

 子どもが何かを語りかけてきます。言葉も無償です。親は忙しいときに面倒だなと思っても,それを有償と考えてはいけません。ワザワザしてやることになっても,無償なのです。膝にダッコされたがるのも時間を取りますが無償です。簡単に言ってしまえば,親が自分の身体を使ってできることを求められたのなら,それはよい甘えだと言ってよいでしょう。親らしいこととは,スーパーやデパートには売っていないということです。

・・・甘える子は臑をかじろうとしているのではありません。・・・



《しっかりしているか,甘えるかは,自立した姿の表と裏なのです。》

 ○しっかりしていた子が,下にきょうだいができてから急に甘えるようになることがあります。表ではしっかりしていても,裏の甘えの部分を下の子に持って行かれて,うろたえているのです。取り返さなければ表裏のバランスを壊して倒れてしまいます。そんなときの,お兄ちゃんでしょ,お姉ちゃんでしょという励ましは,逆効果になるということはもうお分かりですね。

 甘えは砂糖と同じです。砂糖ばかりではよくありませんが,だからといって砂糖抜きではまずいことになります。よい砂糖の使い方は子どもの育ちを促す効能を持っています。隠し味としての塩も活かされるのです。お袋の味を作り出す腕前が求められています。フクロの味ではありませんよ。

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