*** 子育ち12章 ***
 

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「第 16-09 章」


『育ちとは 目当て見つけて ただ歩く』


 ■徒然子育て想■
『音のしつけ?』

 歌を口ずさんでいますか? 気持ちに重ねてつい唇に浮かんでいる歌があるでしょう。赤ちゃんに聴かせていた子守歌は,どんな歌でしたか? 寝顔を間近にして,朗々と歌うのではなく,囁きかけるように,眠る子だけにそっと振りかけてあげた優しさでしたね。子守歌を歌っている自分に,幸せを感じたはずです。置いてきぼりを喰っているパパはちょっぴり寂しかったでしょう。

 歌といえばカラオケというご時世ですが,それは歌に酔いしれるという楽しみを持ち込みました。点数に挑戦というテクニックの向上というおまけもあります。気持ちの発露という純真な歌とは程遠いものです。炊事をしながら歌っているママの歌は,子どもの気持ちを包み込みます。家族のためにしているというママの愛情が,ほとばしっている歌声と共に,子どもにじわっと伝わっていきます。

 あなたのためにしているという思いをことさら言葉で恩着せがましく押し付けても,子どもには伝わりません。言葉は迫る力が強すぎる上に,意味を理解する力がないと受けきれません。歌は気持ちを伝えるには,とてもよい手段です。歌には共感を誘う力があるからです。ママがどんな気持ちなのか,子どもは歌詞を味付けしているメロディーに誘われて感じることができます。うれしい,楽しい,悲しい,つらい,寂しい,気持ちを揺さぶられます。

 子ども自身が持ち歌を持つことも大事なので,歌と行動の連鎖をしつけてみましょう。元気に遊ばせようとするなら,スキップしたくなるような歌を聞かせます。音楽に乗るのは,子どもの得意技です。お片づけも歌で誘ってテキパキと進められます。子守歌で子どもが眠りますが,同じことは応用可能です。もしも実際と歌詞が一致していなければ,ママと一緒に替え歌を作ってしまえばいいのです。二人だけの歌になります。

 ジョーズという人食い鮫の映画がありました。映画の製作は当初ハイテクを駆使した精巧な鮫の模型を用意して撮影するという形で進められました。ところが,撮影を始めると模型が水中では思っていたようには動かないという事態に陥ったそうです。模型の製作に費用をほとんどつぎ込んでいたので,撮影中止の局面に至りました。監督は,鮫の撮影を諦めて,背びれだけといった部分だけの映像に絞り,音声に工夫を凝らしました。見えないけど何かが迫るという音楽の成功でした。

 音楽に限らず,音一般に関する感性を育てることも忘れないでください。人工的な音が溢れる中で,蝉の鳴き声,虫の鳴き声,川のせせらぎ,風の音のような自然の音を聞かせることも,大事な情操のしつけになります。もちろん,人の話し声,歌声にもいろんな感性的なメッセージがあります。絵本の読み聞かせも,文字を肉声にするから,文字が生き返ってきます。生きた言葉として,共感できる形になります。



【質問16-09:子どもは,自分で感じようとしているんですよ】


 ○第9条:向上権!

 うっかりママとしっかりママ。ご自分はどちらだと思われますか? どちらでもいいんですよ! どちらでなければという重みはなくて,個性ですから。ただママとして子どもに対するときには,どちらかといえば「うっかりママ」のいい加減さを持って頂いたほうがいいようです。ママはうっかりしているから,ボクが,ワタシがしっかりしなくては!といった育ちもあります。しっかりママには,とてもママみたいにはできないと諦めてしまって,頼ろうとすることがあります。

 子どもは親や年長者,友だちの真似をしようとします。自分も一緒にしようという気持ちが向上心です。向上心は人より優れようという競争とは違います。あくまでも自分を高めようとする願いです。ですから,昨日まではできなかったが,今日はできたという実感が少しでもあれば,それが喜びになって育ちを加速してくれます。幼い頃の育ちは見る見るというほど早いので,その時期に向上するという育ちの喜びを,親が「できるようになった」とほめることで気付かせてやりましょう。

 やる気をもつ子どもに育てたいですね。子どもは元々前向きな気持ちを持って生まれてきます。育つというのは前向きそのものです。動物の赤ちゃんは育とうとしていますよね。親はその育ちを支えてやればいいのです。ところが,人の育ちは動物のように短時間では済まず,十年単位になりますので,親も大変です。教え込むことがあれこれありすぎて,どうしても焦りが出てきます。子どもの持っている前向きなペースが亀のように遅く感じられます。

 人は子どもの育ちに対して教育という手法を使うことを知りました。教えればできるようになると無意識のうちに考えてしまいます。ソフトをインストールすれば直ぐに稼働すると思っています。そんなことはない! そんな無茶なことを考えている親はいるはずがない! 確かに落ち着いて考えると,人間と機械は違うのは明らかです。でも実際は,「何度言ったらできるの」,「同じことを何遍も言わせないの」という声が聞こえます。一度教えたらできるはずと思っていないのでしょうか?

 育ちとは,そのうちにできるようになるということです。直ぐにではなくて,そのうちです。教えて育つのを待つ,それが教育です。子育ては待つという時間が不可欠です。傷が治るのに時間が掛かるのと同じで,育ちも時間が掛かります。ソフトをインストールするとき,待ち時間があります。その間にプログラムの膨大な書き込み作業が行われています。人の場合はタンパク質の合成と連鎖の反応による知恵の建設作業ですから,その待ち時間が長いのです。

 そのうちというのは,明日に対する期待になります。親は祈っているしかできませんが,子どものほうは作業をコツコツと持続する努力が求められます。このプロセスをきちっとこなせることが,人生という道を切り拓く鍵になります。地味な過程ですから,なかなか目に見えるような進展がありません。昨日と今日では何も変わっていないように感じられます。この一見無駄に見える努力の成否は,きっとできるようになるという育ちへの信頼の強さに掛かっています。親の励ましが不可欠です。

・・・生きる力として確保すべきものは,第五に持続力です。・・・


 ○向上のために?

 将来のことを考えてしつけをしている親,そんなことには無頓着な子ども。そのギャップが,親子のストレスになります。どうして子どもは分かってくれないの? どうしてママはわけの分からないことを言うのだろう? いい子になりたいと思っている子どもほど,ママのいう通りにできない自分を,もう一人の子どもは責めるようになります。叱られるのは自分がいけないからだと。育ちは自分を明日に向かわせることで可能になりますが,今を否定すれば立ちすくむだけです。

 ママは衣替えの季節に子どもの育ちを実感しているはずです。大きくなって着られなくなった服をもったいないと思いながらも,大きくなったという喜びがあります。そのとき,子どもを呼んで,洋服を着させてみてください。「着られない!」。いつの間にか育っている自分を感じることができるはずです。感じるというのは,言葉ではなく肌身で感じるものです。柱に刻みつけた背丈でもいいです。育ちの経過を子ども自らに体験させてください。

 子どもには,学年制という節目が準備されています。大人は忘れていますが,子どもにとって学年は時の経過を実感する重要な目盛りになります。もうすぐ一年生という言葉は,明日に向かう子どもの気持ちを表しています。一年生になるんだという育ちの実感,それが向上しようとする意欲を点火します。もちろん,誕生日毎に刻まれていく○歳児という節目もあります。ママは誕生日がうれしくないかもしれませんが,子どもには大切な節目ですので,育ちを祝ってやってください。

 節目には二つの意味があります。前後があるからです。もうすぐ一年生という目標としての意味,一年生になったというゴールとしての意味です。なりたい,そしてなれた,その育ちを実感するのが節目です。このような大まかな節目だけではなく,日常の育ちにはいろんな形でたくさんの具体的な節目を見つけてやらなければなりません。なんとなく育っているという状態では,向上への歯車が回りません。しようとしていることを見守り,できたねというエールをこまめに送ってください。

 30分間,歩いていますか? ほぼ2kmの距離です。近くのスーパーまで車で数分走っていませんか? 急いでいるから仕方がないという事情があります。そのパターンを子どもとの時間にまで持ち込まないようにしてください。テクテクと歩きましょう。時間は掛かりますが,歩きでもかなり遠いところまで出かけることができます。車でサーッという感覚しかないと,歩きを嫌がるようになります。面倒なことを嫌がらない,そういう気持ちを育てておかないと,向上できません。

 歩いているとき,人はごく自然に,いくつかの目印を想定します。あそこの角を曲がれば後は一本道とか,ここまで来れば半分だとか,あの橋を渡れば直ぐだとか,そんな目印を決められたら,頑張りが持続できます。行程をイメージできるからです。知らない土地に出かけたとき,往きは遠く,帰りは近く感じるものです。行程が見えるからです。あそこまで歩けたという経験が,後からの歩きの地図になり,やる気を導いてくれます。自分でできる範囲をゆっくりと広げていけるように育ちます。

・・・目標や目印,目当てを見つけることが,向上への導きになります。・・・



《子どもの育ちは歩くことに似ていてゆったりだと心掛けて下さい。》

 ○暮らしを維持するには,いわゆる裏方の仕事があります。美味しい夕食は,台所でのママの頑張りがあるからです。その地味な裏方仕事を子どもにも分担させるようにはからってください。テレビを見るよりも大事なこと,勉強よりも大事なこと,それをしないと食べられないこと,嫌だけどしなくてはならないことがあるということをしっかりとしつけてください。そうしないと,寄生する育ちに流れます。

 しつけをするということの親に対する目的は,親がやがていなくなるということです。そのために,子ども一人で生きていけるようにしておくということです。しつけは子離れのためにあります。子どもが向上するのは,親離れのためです。勉強さえしておけば,そうやって育てられた子どもが親にいつまでも寄生しています。親のまねごとでいいですから,暮らしのすべてをしつけるように心掛けてください。そうしないと,10年後に後悔が待っています。

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