『子育ては 逃げる子どもの 後を追い』
■徒然子育て想■
『早く寝せる?』
4歳までの赤ちゃんが夜更かしの傾向にあるという民間研究所(P&G・パンパース赤ちゃん研究所)の調査が紙上で発表されています。赤ちゃんが寝る時間の比較がありますので,載録しておきます。
│フランス ドイツ イギリス スウェーデン 日 本
──────-┼───────────────────────────
19時以前 │ 6% 36% 33% 26% 1%
19〜22時 |78% 48% 42% 47% 52%
22時以降 |16% 16% 25% 27% 47%
22時以降に寝る子どもの割合が,日本の赤ちゃんでは半数近くになっています。国内調査では,夜間の平均睡眠時間は,午後10時以前に寝ている赤ちゃんが9時間27分に対して,午後10時以降は8時間37分であり,早く寝付いた方が睡眠が長くなっています。当然遅く寝る赤ちゃんが起床も遅くなっています。
9時以降に赤ちゃんを商業施設に連れ出した経験は4人に1人があるそうです。東京北社会保険病院の神山潤副院長が,「夜更かしを続け,その結果,朝日をしっかり浴びていない子どもは睡眠と覚醒,体温,ホルモンなどの体のリズムが崩れ,時差ぼけのような状態になる」とコメントをされています。
(以上,西日本新聞3月3日朝刊掲載)
寝る子は育つという言葉を知っていても,運用が乱れているようです。生活のリズムが夜型になっているのは,子育ち環境としては適当ではありません。遅くても一応眠ればいいという考えが体のリズムを無視していることになります。生きものは太陽のリズムにしたがって暮らすようにできています。大人は育ちを終えているので不摂生をしても構いませんが,育ち盛りの子どもは生体リズムが大切です。保護者というのは,子どものリズムを守る基本的な役割があります。
【質問18-12:お子さんが,逃げ口上を持ち出すことはありませんか?】
○子どもにも理!
ちょっと用事を頼もうとすると,「テレビを見ているからダメ」とあっさり断られます。子どもには子どもの都合があります。都合を融通し合うか,それができないかは,お互いのしていることがそれぞれにとってどれほど重要であるかによります。ママから見れば,テレビの番組を見なくてもどうということがないかもしれませんが,続き物であればそうもいきません。「もういい!」と切り捨てるのではなく,「後でね」という約束を取り付けるようにしてください。逃がさないように!
ものが壊れているのを見つけました。「どうしたの?」,「ボク,触ってないよ」。ママの甲高い声から隠れるように返事が返ってきます。ゴミ出しの間に家には他に誰もいなかったので,状況は不利です。飛び降りたはずみで椅子をガタンとテーブルにぶつけたせいで壊したので,子どもは確かに触ってはいません。少なくとも,嘘は言っていないという妙な自信があります。間接的とはいえ,原因は不注意によるものと認めさせなくてはいけません。ごめんなさいで終わりにしましょう。
幼い妹が涙を流しているのに気がつきました。「どうしたの?」,「ワタシ,何もしてないもん」。ママの咎めるような目を避けて,姉はそっぽを向いています。さっきまで二人で話していたので,何かがあったはずです。妹が絵本を破こうとしたので,凄みのきいた声でダメと制止したので,ビックリしたのです。正しいことをしたと思っていますが,妹が泣いてしまったので,なんとなく気が咎めています。訳をちゃんと聞いてあげて,姉妹のごめんなさいのあいこで終わりましょう。
オモチャが部屋中に散らかっています。「どうして片付けができないの?」,「だって,引き出しが無いんだもん」。園ではオモチャを入れておく引き出しがあって,遊んだ後はそこに片付けています。片付けるとは引き出しに入れることと学んでいるようです。引き出しがなければ,片付けはできないというわけです。子どもなりに理に適っているのですが,まとめて片付けられる箱を与えていないママの手抜かりもあります。できるように整えることが先のようです。
子どもに頼んでいた用事が済んでいませんでした。「どうして忘れたの?」,「だって,友だちが遊びに来たんだもん」。「そんなことは言い訳になりません」。その通りです。子どもの言い分は明らかに逃げ口上です。パパもときどき理由にならないことを言って,ママを怒らせることがあるかもしれませんね。「忘れていた」とあっさり認めればいいのですが,取り繕うという気持ちが許せないと思います。ところで,友だちが来たから,それはどうして忘れたかという問への答では?
・・・逃げ口上は自己保身のためなので,全否定し追いつめないで。・・・
○逃げの蔓延?
逃げ口上は,逃げるとき。人はしない理由を探すのが得意です。勉強しなければならないけど,疲れているから明日からにしようとこじつけます。人が生きていく上では,しなければならないことがたくさんあります。しなければならないこととは,進んでしたいことと違うことがあります。どちらかといえば,したくないことです。したくないから,人に振ったり,できない理由を探そうとします。逃げ上手が昂じると,したくない方に住み着くことになり,結局は後々苦労することになります。
大きなお子さんを持つママなら,学校や地域での役員就任から逃げる理由を探している方を見かけたことがあるはずです。誰かがしなければならないという場合,私でなくてもと考えるときに逃げが始まります。忙しい人はダメ,赤ちゃんや病弱な家族を抱えている人はダメ,さらには,転入したばかりだから,人前で話すのは苦手だから,家族が反対するから,経験したことがないからといった逃げ口上が出てきます。最後には,できるだけの協力はするから,と辻褄合わせをしようとします。
自分の生活に関係のないことはしたくない。その閉じこもり風潮が広く蔓延して,子どもの育ちが本コースを外れていきます。みんな一緒にという心情が人の暮らしであったはずです。ところが世間では,パパは仕事以外のことは関係ない,ママはパートと子どもの寝食の世話以外は関係ない,子どもは園や学校以外のことは知らんぷり,それぞれが勝手に自分の世界に閉じ籠もっています。おそらく,逃げているなんて思いもしていないことでしょう。もちろん,皆さんは分かっておられます。
家庭の中でも,家事はママがするものとなんとなく決まっています。子どもは家事を自分とは関係ないと切り捨てます。その気持ちが家族という世界からの逃避を促すことになります。家族とは家事を一緒にこなすから成り立ちます。誰かに押し付けているようでは,サービスを受け取るだけのお客さんでしかありません。共生するということは,生かされているのではなく一緒に生きようとすることです。そんなことも分からないで育ったとしたら,寂しい明日が待っているはずです。
言い古されたことですが,働くとは傍を楽にするからハタラクと言います。人の傍で動き回ると書きます。自分のしていることが周りの人にとってよいことであるように願うとき,人は温かく暮らすことができます。自分のことしか見えてない人は,誰も付き合おうとはしません。その方が確かに気楽でしょうが,心は冷えていることでしょう。温という漢字は,水の入った皿の上に日があると書きます。一人一人がお日様になって周りを照らすから温かい,そんな生きた学習をしてほしいですね。
・・・気楽な暮らしに逃げているから,温もりが遠のいていきます。・・・
《子育てには,逃げ口上を自制する道標を提示する作業があります。》
○危険に対しては,三十六計逃げるが勝ちです。しかし,普段の暮らしにその計を引き込んだら負けです。育ちは前進することですから,負けてもいいからひたすら前進です。もちろん無茶がいけないのは言うまでもありません。無茶や無理になるのは,人から強いられる場合です。自分でやろうと決めてするときは,あまり無茶には走らないはずです。指導するときは引っ張ろうとするのではなく,大丈夫と支えるつもりで付き添ってやってください。
大丈夫と支える? そう言われてもどうすればいいのか迷われるかもしれません。一つだけお教えしましょう。それは逃げ場になってやることです。くじけたときに泣く場所として温かい胸を開いてやってください。逃げ口上を言わなかった替わりに,逃げ場を与えておきましょう。もしも甘やかしてはいけないと考えてママが逃げ場を閉じてしまうと,子どもは逃げ口上を持ち出さざるを得なくなります。どちらがいいかよ〜く考えよ〜う?