*** 子育ち12章 ***
 

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「第 19-07 章」


『子育ては 価値を教えて 堂々と』


 ■徒然子育て想■
『価値!』

 価値観の多様化が言われて,久しいときが流れました。ますます,その傾向は進んでいるようです。国際化によるグローバル化した社会が,一層の拍車を掛けました。世間が広くなるにつれて,異なった価値観と遭遇せざるを得なくなりました。情報社会は,日本中,世界中の出来事を身近に見せてくれます。自分の世界から遙かに離れているのに,すぐそこにあるような感じになります。価値のチャンポン状態です。

 長寿社会もまた,世代間価値の遭遇をもたらします。時代背景にリンクした価値観が時間を超えて,同時代に生きるという様相を呈しています。養育場面では,自分たちの子どもの時は・・・といった苦言が突きつけられます。時代が違うという大事な違いを忘れています。子どもは常に今を生きているのです。物のない時代では,我慢したのではなく,我慢せざるを得なかったのです。今の子どもは我慢する必要のない世界に育っているだけです。時代価値が変わっています。

 豊かな社会になると,「衣食足りて礼節を知る」という故事が実現するものと思われていました。確かに貧しさを起源とする争い事は減り,行儀よく暮らすことができるようになりました。ところが,それでことは終わりとはならなかったようです。豊かさだけが幸せの条件ではありませんでした。豊かさは助け合うという人のつながりを無用にしました。人が孤独に暮らすようになったのです。自分勝手に暮らすという新しい価値観が軋みを発しています。

 ノーベル平和賞を受賞されたケニアの環境副大臣,ワンガリ・マータイさんが,3月に国連本部の会議で,"MOTTAINAI"をみんなで唱和しようと呼びかけられたそうです。そう,「もったいない」という日本語です。世界になかった旧くて新しい価値観です。今の日本ではすっかり死語になっていますが,今の時代に大切な環境保護という価値視点から見れば,とても大事なキーワードであったということです。

 価値観の多様化とは行き着いた状態ではなく,途中経過に過ぎません。価値の再編成をするために,価値の素材が集められ,今からの世の中に相応しい価値観を取捨選択する作業をしなければなりません。そのプロセスは,人が交流をすることです。皆がよかれと願って付き合う中で,価値の変異と共通化が進んでいくはずです。相容れない価値を受容するという居心地のよくない現状は,人との交流によるしか改善できません。豊かさの中でこそ,周りの人と関わることが必要なのです。



【質問19-07:ほめてやるから,素直な子どもに育ちます!】


 ○第7軸:ほめる

 子育ての中でしつけることは何でしょうか? 大切なポイントは能力の使い道です。育ちの中で子どもは能力を身につけていきますが,使い道を間違えると,破滅につながります。して意味があることと意味のないことの見極めが,真偽という価値観から生じます。してよいことといけないことのけじめが,善悪という価値観から生まれます。して楽しいことと惨めなことの区分けが,美醜という価値観から芽生えます。このような価値判断の物差しが,しつけるべきことです。

 学校では,真偽を学びます。自然や環境を正しく理解する知識が育ちます。栄養が偏れば人は病気になることを知るから,健康になる道を選ぶことができるようになります。地域では,善悪を学びます。社会の中で仲良く共生する意思が育ちます。我欲を通せば人は孤立していくことになるから,助け合う道を共に生きる意志を持つことができるようになります。家庭では,美醜を学びます。人間関係を幸せに結びつける情感が育ちます。愛は家庭から芽生えるものです。

 子育ちは試行錯誤のプロセスを辿ります。してみた後で,価値評価を受けます。○なら続ける,×なら止める,という繰り返しです。経験を活かすということがありますが,人は自らの経験という形で価値観を表現し,記憶するものです。経験したことのないことは,良いも悪いもなく,判断の評価もできません。子どもの育ちの過程では,いろんなことを経験します。それに対して大人から価値評価を受けて,よい経験とわるい経験を区分けしていくことができます。

 もう一人の子どもが成長してくると,経験を元にして,自分の価値体系を組み上げていくようになります。はじめは,ママに叱られたからわるいこと,ほめてもらったからいいことと覚えていきます。友だち遊びの中でも,楽しさやいざこざの経験から,人づきあいの価値を弁えていきます。間違えないことが大事なのではなく,間違えたことをちゃんと記憶して,二度と繰り返さないようになることが着実な育ちです。

 しつけの方法として叱るとほめるがあります。叱るのは×であるときですが,子どもは未熟ですから,いつも叱られっぱなしになります。当たり前のことができたら,ちゃんとほめてやることです。特別よいことでなくていいのです。○をたくさん付けてやることが,子どもの育ちへの応援になります。ほめて育てろといわれますが,育てることはほめることと同義であると考えた方が正しいのです。×でなかったら,すべて○ですよ。

・・・子どもの経験をほめてやることが,育ちを見守ることになります・・・


 ○素直!

 素直な子はいい子ですね。素直な子は人に好かれます。素直な子に育ってほしいと親は思います。素直とは,周りの価値観と齟齬を生じないように振る舞うことができるということです。人の言うことを逆らわずに受け入れるのも,価値観が同じだからです。気に入らないことであれば逆らいますが,価値観が異なるからです。個人的には趣味やこだわりなど,いろんな価値レベルがありますが,認め合うことができれば,共有できます。

 ところで,素直な振りをしているときは,ちょっとならいいのですが,長引くと辛いことになります。親の強制が過剰であったり,寂しさが昂じてママのご機嫌を取り結びたい思いがあると,素直な子でなければという無理をします。育ち盛りの時期では,ゆがみが固まってしまって,修復が困難になります。見た目には素直ですので,親は子どもが無理をしていることに気付きません。おかしいと気付いたときには,どうにもならなくなっていることがあります。

 言うことを聞かないことがあり,ママが「うちの子は素直でないところがある」と思う程度がいいでしょう。そんなことは一度も思ったことはない,うちの子は素直だと思うときは,注意してください。最もいい方法は,ママの目の届かないところでの子どもの姿をじっくりと見守ることです。うちにいるときと変わりがなければ,大丈夫です。子どもは案外と大人が求めていることを敏感に感じ取って装うことがあります。

 大人には,直に会うときはにこやかにしていても,陰では何やかやとこき下ろしているような嫌な面があります。全く素直ではありません。そのような大人の陰を見たとき,子どもは自分の素直さに照らして大人は汚いと思うか,大人だってしていると素直に見習うか,二つ道です。どちらも素直さからする選択になります。陰日向のないママの姿が子どもには頼りになる道標ですから,迷い道に導かないようにしてください。

 叱られるとふてくされ,やけっぱちになります。ほめられると気持ちがよくなり,がんばるようになります。自分の育ちがほめられる向きに進んでいるという確信が,子どもの素直さを育てます。これでいいんだという気持ちを持てると,余裕が生まれ,ママの言うことも素直に受け入れることができるようになります。叱りつけて無理矢理しつけても,すればいいんでしょという気持ちを育てるだけです。不快感に襲われ,よろこびがないからです。

・・・素直な気持ちで子どもに接する親が,素直な子どもを育て上げる・・・



《子育てには,親の生きる信条が反映する深さがあります。》

 ○いい子だね。そう言われていると,子どもはいい子に育ちます。もちろん,からかいやおだての気持ちによる言葉では逆効果です。また,親の都合という下心があるような場合も,いい子の基準となる価値がゆがんでいるので,社会常識としての価値からずれていきます。子どもが社会生活をするようになると,すんなりと通用しないので,子どもは人づきあいを避けるようになります。素直さとは,人との関係を円滑にする価値の共有だからです。

 価値観をしつけるときに,あれやこれやを持ち込まないようにしましょう。大事なことを数個で,具体的に教えておきます。例えば,嘘はつかない,人を叩かない,人の物を黙って持ってこない,といった普通のことです。パパやママが普段の生活の中で信条としていることがいいでしょう。何より身近な生きた手本を示してやれるからです。親の価値観を写し込むことが自然なしつけとなります。人の悪口は言うものではないとしつけながら,親が言っていたら?

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