*** 子育ち12章 ***
 

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「第 20-05 章」


『子育ては 母の言葉を 厳選し』


 ■徒然子育て想■
『考え様?』

 ものは考えようという助言があります。「人間万事塞翁が馬」という中国の旧い故事があります。かつて漢文という教科で,人生の幸不幸は変転して定まらないという例えとして教えられました。馬が逃げてしまうという禍があったが,数ヶ月後,名馬を連れて戻って来るという幸いに転じました。その馬に乗っていた息子が落ちて足を悪くするという禍に見舞われますが,一年後に戦争になって若者がかり出されて戦死する中,足を悪くしていたので免れるという幸いを得たという話です。

 何が幸いするか分からないのが人生ということでしょう。その上で,結局は幸いに至るということを信じる力が,生きる力を生み出してくれます。暗いトンネルを抜けると明るさが待っています。明るさを見ていれば,途中の道はどうということはありません。ところが,明るさに行くためには暗いトンネルがあると思うと,憂鬱になります。トンネルの向こうにある明るさも頼りなげに揺らいでいきます。

 悩みというのは端から見れば,なんとかなるように見えるものです。その証拠に,後から振り返ると,どうしてあのときはあんなに悩んだのだろうと思うものです。八方塞がりのように思われても,じつはトンネルに過ぎません。出口は必ずあります。信じていれば,気持ちが沈むのを堪えることができます。迷路に入ったら,手を伸ばして冷たい壁に沿って素直に歩いていきます。あっちこっちと行くから不安を振り落とせなくなります。

 あんなに幸せであった家族が,今はバラバラと崩れています。でも,やがては違った形の幸せをつかんでいるでしょう。今日は,明日は,明後日は,日は巡り,苦労の今日はいつまでも続きません。そんな経験を子どものうちに積んでおけば,ゆったりとした気持ちで対処できるようになれるはずです。不幸だと思っているときに最も気をつけておきたいことは,いつまでも続くはずがないという希望を忘れないことです。

 先憂後楽。やりたくないことは先に済ませておけば,後は楽しくできるということです。おかずは好きなものを先に食べるか,後の楽しみに取っておくか,どちらでもいいのですが,少なくとも嫌いなものは,先に食べてしまおうとしませんか? 嫌いなものは嫌いと脇にどけておく手もありますが,それが普通に罷り通ると考えていると,自分を追いつめていくことになります。ちょっとの辛抱。グイッと飲み込んでしまう器量が生きていく上での術です。



【課題20-05:ママお願い! 落ち込むことばかり言わないで!】


 ○こんなこと・あんなこと!

 「赤ちゃんをちょっと見ていてね」。赤ちゃんのそばで,オモチャの自動車を走らせながら遊んでいました。赤ちゃんは手足をバタバタしながら,あっちやこっちを見ています。しばらくしてママがやってくると,いきなり「見てなさいといったでしょ!」という声が振り下ろされました。「見ていたよ」と応えると,「赤ちゃんが敷き布団からずり落ちそうになっているでしょ」,「あなたはどうしてちゃんとできないの?」。「どうしてっていわれても?」。

 ご飯を食べているとき,パラパラとこぼれます。お菓子を食べてベタベタした手を,テーブルクロスできれいに拭います。そんなときどういうわけかママはイライラするようです。「もう,あなたはいつまでも世話がやけるんだから!」。「ママに何も世話をして貰ってないんだけど?」。自分のことは自分でしなさいって言われているからそうしてるけど,どうしてママはいつも不機嫌なんだろう。ボクのこと嫌いなのかな?

 妹が産まれてから,ママはボクのことをお兄ちゃんだからと甘えさせてくれなくなったんだ。ボクも一所懸命にお兄ちゃんらしくしようとしているけど,妹にママを取られたみたいで,本当はとても寂しくてどうしようもなくなるときがある。そんなとき,妹みたいに構って貰いたくて赤ちゃんになるんだ。ママは「T君も大好き」と抱きしめてくれるからちょっとだけホッとするけど・・・。どうせボクは二番目! 赤ちゃんの付け足し? またすねてみたくなっちゃう!

 「早く学校が始まって欲しい!」。ママがそんなつぶやきを漏らしているのを聞いてしまいました。そういえば休みに入る前に「行ってらっしゃい」というママの見送る声がうれしそうだったような気がします。もしかしたらワタシはいない方がいいのかな。ワタシはどうしたらいいの? ここはワタシのお家じゃないの? 子どもだからママみたいには何にもできないけど,それがいけないの? そうだったら,ごめんなさいママ!

 お友だちがお母さんに「そんな子はうちの子ではありません」と言われています。もう不要だと突き放されたら,誰でも落ち込みます。ママの子どもだと思っているからがんばれる。ママに叱られることは仕方ないけど,嫌われたら命綱が切れてしまうような気になるかも? ママにとってボクは,ワタシはどんな存在なのだろうと,ママの言葉に敏感に反応していることを知っておいてね!

・・・叱るときに不快感を表す言葉をぶつけると,子どもは落ち込みます・・・


 ○意味!

 一部文字化けしたメールを受け取ることがあります。何が書いてあるのか気になりますが,見当が付きません。最近テロ関連のテレビ報道で関係集団とかの声明が載っているホームページが映し出されることがありますが,イスラム文字は全く取り付く糸口がありません。ただの模様にしか見えずに,意味が伝わってきません。文字がいけないのではなく,こちらの受信機能が未完成で反応できないのです。表現する言葉が違うと,ちんぷんかんぷんです。

 大人の使う言葉がそのまま子どもに通じているとは限りません。ママは何を言っているのだろうと思うことがいっぱいあります。ママは「分かった?」と念を押していますが,もし同じことが繰り返されるようでしたら,分かっていないのです。決してわざと言うことを聞かない反抗をしているわけでもなく,子どもの理解力が低いわけでもありません。子どもに分かる言葉を普段から見極めておくようにしましょう。

 生きる力を育む学習は,言葉を覚え,整理し,関連づける作業です。子どもの育ちで目に見えるものは身体の成長ですが,知恵のような目に見えないものは言葉の成長として聞き取れているはずです。言葉をしゃべったということが節目として印象づけられていることでしょう。見る見るうちにではなく,聞く聞くうちに,子どもは言葉を覚えていきます。文字という見る言葉は,ずっと後になって覚えます。

 車窓の風景が山また山と続いていると,記憶に残りません。山ばっかり!という印象程度です。目撃情報という場合も,その対象に余程の特徴がない限り,見たはずなのに見えていません。また,関心という受信感度のせいで,見えないこともあります。連れ合いの今朝の服装が思い出せないといった不手際も日常的です。何か違った特徴があると関心が喚起され,注意して見るようになり,メモリーに保存というクリックが行われ,確かな情報になります。

 犬の特徴は「ワン」という鳴き声です。吠えられてビックリして,ワンという発音を犬に結びつけます。尻尾が長い,耳が立っているといった特徴は,後から追加されていきます。犬というフォルダーにいろんな特徴を表す言葉が整理されてリンクされていきます。そのためには,尻尾や耳といった言葉を教えてやることが必要です。尻尾という言葉を知ったら,この犬の尻尾は?という関心の目で観察ができるからです。

・・・ママの口移しの言葉を覚えて,言葉の目で見る力が知恵を育てます・・・


 ○至らないのが子どもであり,だからこそ育ちという楽しみがあります。至らなさがかわいさでもあります。そういう大らかな気持ちで接するようにすれば,子どもはノビノビとしてきます。絵の場合はじめから細々と描くとバランスが壊れてきます。はじめはデッサンで荒削りな描き方の方が仕上がりが美しくなります。子育ても細々としない方が後の育ちがうまくいきます。大事なことだけをきちっと抑えておくようにすれば,余裕が生まれます。

 今はそれでいい,段々と磨かれていくから。子どもの育ちを応援する言葉は,温かくなければ効き目がありません。脅かすような言葉を突きつけると,か弱い子どもは萎縮して育ちに全力を傾けなくなります。おそるおそる育っていては,楽しくありません。育つのが楽しい,そう思えるように誘導しましょう。子どもに向かって明るい言葉を使っているか,時々チェックしてみてください。そうすれば子育ても楽しくなります。

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