*** 子育ち12章 ***
 

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「第 2-09 章」


『忙しい ママには育ちが 遅く見え』


 ■はじめに

 子どもとのつきあい20年,なんで親になったやら。
 始めチョロチョロ,中パッパ,気がつきゃ財布はカラッケツ。
 焦らず,慌てず,くじけずに,期待しません親孝行。

 子育て最中の親には,何をのんきな戯れ言と思われるでしょう。
 そうですね,子育てとは今がたいへんなのです。
 それはどういうことなのでしょうか?

 子どもは今現在一生懸命に育っているからです。
 今必要なものを唯一の頼りである親に求めてくるからです。
 でも親はそこでちょっとばかり欲張ってしまうようです。

 大人になるためには,たくさんのものを身に付けなくてはなりません。
 とても多いのですが,日々の育ちからは減っているように見えません。
 ついあれもこれもと余分に持たせようとして果たせず,焦ってきます。

 子どもの育ちには,子どもの都合があります。
 食べたいときに食べたいだけ食べることしかできません。
 いくら身体によいものでも,一度に食べられる量はしれています。



【質問2-09:あなたは,お子さんの今を大切にしていますか?】

 《「今を大切に」という意味について,説明が必要ですね!》


 〇今のままでは心配?

 マラソン競技でスタートから飛び出した走者がそのままゴールすることはありませんね。子育ちは20年かかります。小学3年生頃が折り返し点に当たるでしょうか。長い道のり,そんなに急いでも息切れするだけで無駄になります。

 成長には大きな個人差があります。そのときどきを充実させることが大切です。他の子より早く歩いたとか,早くしゃべったとか,そんなことを競っても意味はありません。逆に成長が遅いようだと心配することもありません。

 親が子どもを見るときに,「こんなこともできない」という視線を当てます。今のままでは将来が不安であり,不幸であると感じます。親は子どもの将来を案じます。目指すのは将来の幸せです。でも,幸福はあくまでも現在の幸福でしかありえません。「幸せだな〜」と感じるのは,今です。「明日は幸せだな」とは思いません。

 この不安は「今のままでは」という所から産まれます。子どもは育っている途中ですから,今のままで終わるはずがありません。明日は違いますし,一年後も違っています。それよりも,今日一日,できないままで精一杯生きることです。明日のために今日を犠牲にしていては,今日がむなしくなります。

 子どもはできないなりの子ども時代をきちんと過ごさなければなりません。子ども時代を自分の時代としてやり尽くすから,大人になれば家族の時代に入ることができます。子ども時代を明日のためにとよそ見も許されず走らされるから,大人になって自分だけの夢を追うパラサイト(寄生)傾向が現れてしまいます。

・・・つぼみのままでは花ではないと心配しますか?・・・


 〇与え過ぎか,与え足りないか?

 子どもの育ちを止めてしまうのは簡単です。自分だけは特別で自分の思うことは全部叶うべきであるというジコチュウ(自己中心)にしてしまえばいいのです。皆んな自分を祝福し尊敬し可愛がり特別扱いをしてくれるのが当り前と思えば,育つ気にはなれません。

 育つとは明日に向かってよくなろうという意欲に支えられるものです。今が一番いい状態であれば,何もしなくなります。少しばかり過激な言い方をすれば,現状に何らかの不満を感じなければなりません。思い通りにならないこともあるという歯がゆさを実感すれば,何とかしようとします。それが意欲というものの中身です。

 ものを与え足りないことと与え過ぎることの影響を考えてみましょう。与え足りないときは,何かが欲しいという目標が意識できます。我慢しながらもどうにかして手に入れたいと考えるでしょう。お小遣いを貯めて手に入れることができたらうれしいものです。そこまでして手に入れたいと思うか,思わないかで,本当に欲しいものなのかという,自己チェックができます。思いがけず誕生日などにプレゼントされたら,大喜びします。足りないことは補ってやりさえすれば,子どもには喜んで受け止めてもらえます。

 与え過ぎの場合は,自分が本当に欲しいのかというチェックが出来ないまま,そのときに気まぐれ的に欲しいなと思っただけで手に入ります。欲しいという気持ちの深さが伴いませんので,すぐ飽きてしまいます。ましてや欲しいとも何とも思わないのに親から与えられるようなものは,子どもには何の意味もありません。そこで親は与え過ぎを反省し与えないようにしようとします。何でも手に入ると思っていますから,ものを取り上げられるような感じです。これは子どもには苦痛ですから,素直には受け入れてくれず抵抗することでしょう。

・・・与え足りない方が,先の喜びを子どもにもたらします。・・・


 〇チャンとできない!

 子どもが積み木遊びをしていますが,積んでは倒れてしまいます。身のまわりのことでもママの手をさえぎって自分でやろうとしますが,なかなかうまく出来ずにカンシャクをおこすこともあります。ハヤクチャンと出来ないのを見て,ママの方がいらついて手を出してはいませんか?

 先ずママが気持ちをゆっ〜〜たりと持ってください。たとえできなくても,やろうとする気持ちを大切にしてあげてください。できなくて元々,できたら自信になります。何の害もないのですから。ママが感じるチャンとできないという不満は,子どもの今には関係ないことです。

 もう少しダメを押しておきましょう。子どもの育ちにとって,チャンとできないことをすることが重要なのです。自分にはできないことがあるということをもう一人の自分が自覚することは,育ちに向かうために必要なことだからです。できないからこそ何とかできるようになりたいと願うようになります。もしもママがしてやっていたら,自分の弱さが見えなくなります。

 教育と治療の違いをママは知っておく必要があります。お医者さんは検査をして悪いところを見つけようとします。悪いところを治すためです。子育てが治療的になっていませんか? 教育や子育ては悪いところを正すのではなく,正常をよりよいものに伸張する営みだと言われています。そこで親は勘違いをすることがあります。後半の正常を伸ばすというところにとらわれるのです。

 チャンとできないことを正常ではないと判定します。何はさておいても子どもを正常に戻さなければと考えます。本当はチャンとできないことが正常なのです。能力の欠けていることは子どもには当たり前のことです。繰り返しますが,それを子どもが自覚することが必要なのです。

・・・できないことが育ちの始まりです。・・・


 〇子どもが見えない?

 ときどき子どもが見えないと思うことはありませんか? 何が見えないのかというと,どれほど育っているかです。久しぶりに会った子どもは大きくなったと思いますね。毎日見ている我が子の育ちは見えないものです。

 子どもの今が見えるためには,ママが正確な子ども像を持っていなければなりません。○歳の子どもはこんなものだというイメージです。多子の家庭ではごく自然な経験として子ども像が手に入りますが,少子では親が意図しなければなりません。

 育ちは時間の経過に沿ったものなので,今の我が子だけを見ていては見えません。親は大人である自分を基準に子どもを観るので,小さな育ちは無視されてしまいます。小さな育ちをしている我が子を見る工夫をしなければなりません。それには異年齢の子どもたちを視野に入れることです。

 授業参観を例にとってみましょう。我が子の背中だけを参観していませんか? せっかくのチャンスを無駄にしないようにしてください。1年下の学年の教室を見てください。そこには1年前の我が子がいるので,今はずいぶんお兄ちゃん,お姉ちゃんになったことが見えるでしょう。それから1年上の学年の教室ものぞいてください。そこには1年後の我が子がいるはずですから,この程度に育てばいいのかという目安が見えるはずです。

 最後に我が子の級友を見渡します。同じ年齢での育ちのばらつきが見えます。ママが気にしていることもみんな同じだと分かるでしょう。落ち着きがないと思っていても,みんなそうなのです。大して気にしなくていいと分かれば安心できるはずです。

・・・よその子どもたちが子どもの育ちを見せてくれます。・・・


 〇あれもこれも?

 子どもが算数の計算をしているときに,横からママが「字をきれいに書きなさい」とちょっかいを出します。子どもの頭の中では今は数字が駆けめぐっていて,字の形までは気が回らないはずです。子どもには一つのことに没頭させましょう。大人になって仕事中に髪の乱れを気にしていては,仕事が疎かになりませんか?

 台所で洗い物を手伝うと,そこらじゅう水浸しです。お皿を洗うことに集中しているからです。パパも何かに熱中していると回りが見えなくなりますよね。手伝ってもらうのはうれしいのですが,かえって手間がかかります。だから,つい「余計なことはしないで」とさせなくなります。

 子どものお手伝いは,実はお手伝いではないのです。猫よりはましと揶揄することもありますが,実のところはあまりお手伝いにはならないでしょう。 子どもにはお手伝いという理由でさせていますが,本当は練習なのです。単なる皿洗いでも皿を洗うだけではなく,周りに水撥ねをさせたら次にそれを拭くということまでさせてやります。そうすることで,水撥ねをしないように皿を洗った方がいいことに気づき,どうしたらいいのか考えるようになります。

・・・子どもには一つずつ,やり遂げさせてください。・・・



《今を大切にするとは,子どもの育ちをチャンと見届けることです》

 ○親は子どもの将来を考えます。そのときに親が参考にするのが今の社会です。大学生が卒業して就職するとき,今現在景気のよい会社を選びます。しかし,10年後では状況は全く変わっています。小さな会社に渋々就職した者が後になって笑うといったことはざらです。今の大人時代を将来として子どもに押しつけていたら,成人したときには時代遅れになります。今を育つようにしていれば,子どもは将来も今を育っていけることでしょう。

 【質問2-09:あなたは,お子さんの今を大切にしていますか?】

   ●答は?・・・もちろん「イエス」ですよね!?

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