*** 子育ち12章 ***
 

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「第 21-05 章」


『子育ては 言葉の質で 様変わり』


 ■徒然子育て想■
『知恵の断絶?』

 いつの時代も「今時の若い者は!」という嘆きが繰り返されているようです。「言葉が乱れている」という言われ方も,またかという受け取り方しかされなくなっています。情報化の進んだことと相まって,その変化の振れ幅が大きくなっているせいで,乱れというレベルを超えています。若者言葉はほとんど外国語であり,推察の彼方に飛び出しています。現代版バベルの塔の現れのようです。

 因みに,バベルの塔の故事は,天まで届く計画の塔の建設を神が人間の傲慢さと怒り,協力ができないように人びとの言葉をバラバラにして,工事を挫折させたというもので,それ以来国毎に言語が異なったということです。今の状況は,世代毎に言葉が分断されて,共存ができなくなっているかのようです。言葉が通じないということの重大さに,大人はもっと真正面から向き合うべきです。それが子どもたちを救う道です。

 人間が知恵を持ったのは,言葉を使う能力に拠ります。物事を言葉によって分けることができたから,物事を分かるようになりました。白い犬。その言葉で,動物の中の犬,色が白いものと区分けができて,さらに人にも伝えることができます。犬という言葉を知らないと,メモリーできないために認識も不可能になります。見ていても見えないということです。見えたというのは,犬というイメージを脳内に持っているからです。

 言葉が通じないと,ちんぷんかんぷんです。例えば,親や先生が何を言っているのか理解できないというのでは,知恵も断絶します。学校に行っても授業が分からないということの原因は,実のところは言葉が通じていないということです。誰とでも通じる言葉数が少ない,言葉をつないで説明ができない,豊かな経験という裏打ちのある言葉が持てない,そんな言葉の貧しさが子どもたちの育ちを阻害していることを大人は分かってやるべきです。



【設問21-05:お子さんは,大人たちと話すことがありますか?】


 ○対話の感動!

 ブックスタートという事業が行政によって実施されている市町があります。乳幼児健診の折に絵本を配布して,読み聞かせをする習慣へのきっかけにして欲しいというねらいを持った事業です。この事業はイギリスに始まりました。移民の多いイギリスで子どもたちの識字率が低下し,コミュニティ機能が壊れようとしていました。ブックスタートを始めてから,低年齢化していた非行が抑制できたという効果も現れたそうです。

 胎児のときから耳は聞こえているので,言葉かけをするようにと勧められています。身体を育てる母乳と同じに,心を育てるためには母国語という栄養を欠かすことはできません。言葉かけという言葉の温もりを受けて育った子どもは,愛されている,守られている,大切な存在であるといったメッセージを受け取ることができます。一歳前後になると絵本に対する興味を持つことができます。言葉を獲得して,もう一人の子どもが育っていきます。

 いきなりおとなしく読み聞かせを楽しむというわけではありません。絵本は遊び道具として扱われることでしょう。それでもママが読み聞かせという行為をしてみせることで,絵本にある言葉というシグナルを認めることができるようになります。ママが何か自分に向かって言っている,この絵のことかなと気がついていくとき,言葉という糧を見つける能力が発揮されます。人としての第二の誕生を迎えるだけでなく,対話の感動を身につけます。

 読み聞かせをする,その子どもとの感動的な触れ合いはパパも参加できます。現に父親の子育てへの関心が高まったという効果も検証されています。言葉という栄養を豊かにすることは,家庭における子どものしつけでもっとも大切なことです。しつけのできていない子ども,それはきちんとした言葉遣いができない子どもという判断が普通ですが,まさに的を射た認識なのです。しなさいという命令・指示の言葉かけでは,子どもの言葉としては栄養失調に向かいます。

・・・真正の育ちの良さとは,美しい言葉を自然に使用できることです・・・


 ○こんなこと・あんなこと!

 黙っていては分からないでしょ! 子どもからの反応が見られないとき,ふてくされてわざとしているように勘違いすることがあります。子どもは言葉を探しているのですが,適当な言葉が見つからないのです。この適当な言葉というのが,意外に難問です。場違いな発言をする大人の方がいることを思えば,大人にとっても状況に相応しい言葉を探すことはかなり難しいことです。ママは言葉の先生,子どもは生徒の立場にあります。

 何をバカなことを言っているの! トンチンカンな言葉を子どもは持ちだしてきます。少ない言葉から,言いたいことをちょっとでも表そうと似たような言葉を使うからです。言葉は意味を限定する機能を帯びているので,状況を考慮しないと,とんでもない表現に変わります。「ママは太いね!」と言ったら,コツンとされそうです。子どもにすれば,ママは自分より大きいと言うつもりです。大きいと太いが違うということ,太いはママには禁句であることを知らないだけです。

 誰に向かって話しているんだ! 言葉は相手に通じなければ役に立ちません。つきあいでは失礼に当たるという場合もあります。きちんと相手に伝わるように言葉の装いを整えることが大切です。親しき仲にも礼儀あり,家族の間でもぞんざいな会話が交わされていれば,結びつきはささくれ立っていきます。電話を掛けるときは,「今お話しできますか?」と相手の都合を確認するエチケットがあります。「あのね」,「な〜に」,枕詞を忘れないようにしてください。

 おとなしく話を聞きなさい! 話を聴けない子どもが増えています。聴く能力が育っていないので,聴こうとする態度が未熟になっています。普段から大人と話すという機会が少ないせいです。子どもはあっちに行ってなさいと,子どもだけの会話しかさせていないからです。大人と話すときには,知らない言葉が出てきます。きょとんとしていると,大人は分かるように言い換えてくれます。言葉の世界の大きさを実感すれば,もっと知りたいと聞き耳を立てるようになります。

・・・最小限の軽い言葉だけを偏食していると,心は快楽に染まります・・・


 ○本を読む,それは心の食事です。漫画はファストフードに似ていて分かりやすいでしょう。でも,表現する力,考える力は言葉が基本です。理解しやすさを求めてばかりいると,子どもの表現する力はおざなりになります。優しさ,思いやり,勇気や感謝など,生きる上で大事な抽象的な概念はスローフードである言葉でしか表現できません。言葉を知らなければ,行動のスイッチを入れることができなくなります。具体的な行動を見て,これが思いやりと理解するのは言葉を介して可能なのです。

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