『子育ちは 不安や怖さ 飲み込んで』
■徒然子育て想■
『五戒?』
人として「してはいけない」と戒められていることがあります。5つの戒めは,不殺生戒,不妄語戒,不偸盗戒,不邪淫戒,不飲酒戒です。それぞれの意味はお分かりだと思います。ところで,そもそも「戒」の意味は何でしょう? 逆説的ですが,守ろうとして守り得ない人間の弱さを発見することにあります。自分が弱い・不完全な人間であることを自覚する契機として,戒があります。もちろん,不殺生戒は人に対しては厳禁ですが,動物や昆虫や生きものなどに対しては守れていません。
戒を守りきっていると思っている人は,どうしても守り切れていない人に対して厳しくなります。自分は努力しているのにと思うからです。自分も完全には守れていないと思っていれば,他人の弱さを許せるようになります。子どもに対してしてはいけないと責めながら,親自身がしているということがあるはずです。子どもはちゃんと見ていて,大人はずるいと感じています。「またやっちゃった」,大人が自分に向かって戒を破ったことを反省してみせることが大切です。
守れない! どうすればいいでしょう? 戒を破る必要性を少なくするように努力することです。例えば,子どもに対して「正直に言えば叱らないから」という約束をするときは,それをキチッと守ります。子どもは親に正直に言えるようになり,嘘をつかなくて済みます。してはいけないことがある,それを人は何とか守ろうと努力している,いけないことをしなくて済むようにするにはどうしたらいいかを後ろ姿で教えてやってください。
【設問22-09:お子さんの喜怒哀楽を弁えていますか?】
○こんなこと・あんなこと!
子どもは子ども時代を子どもとして精一杯に生きることが育ちです。大人になるために育つと考えると,育ちを見誤ります。ところで,もう一人の子どもが育ってくると,なりたい自分をイメージするようになります。例えば,ヒーローやヒロインの真似をしています。その先に,「お父さんのようになりたい,お母さんのようになりたい」という憧れが生まれてきます。それが育ちを喜びに彩ってくれます。「早く大人になりたい」,そう思わせられる大人でいてください。
子どもはどの子もいい子です。時には「悪ガキ!」と思える子どももいますが,それは今現在の姿であり,そのまま固まってしまうわけではありません。いい子になるための準備運動をしているのです。もちろん大人からの誠実な導きが必要です。いい子であることにこだわると,そうでない子はわるい子と見てしまう癖がつきます。あげくには,いらない子どもと排除するような素振りが出てしまいます。子どもは生きている値打ちを疑うようになり落ち込んでいきかねません。
子どもたちが生きている喜びを感じるときはどんなときでしょう? 幼い子どもには生きている喜びなど分からないでしょうが,児童になると例えば「美味しいものを食べたとき,お風呂に入ったとき,寝るとき,空気の良い所を散歩しているとき」などの答が返ってくる場合があります。何かおかしいと思われませんか? 自分で喜びを作っていないということです。それでは生きているとは言えません。自分の行動で喜びを生み出すようにし向けてやりましょう。
論理療法で,心のプログラムというのがあるようです。例えば,いじめられているとき,自分は「絶対に嫌われている」,「誰も好きになってくれない」と思います。この"絶対に"とか,"誰も"という断定的な言葉を自分に向けるからつらくなり,死にたいと追い詰められます。「多分嫌われているかもしれない」と考え直すようにします。人生観を柔軟にして,明るい気持ちを残すようにします。人の思いを想像するときは,「多分」としか言えないのです。
○ママへのメッセージ!
試験では育てられないことがあります。
(1)問題が出てから答えればよい:問題意識を持つ必要がない
(2)答の無い問題は出ない:答があるからと安心して取組める
(3)易しい問題から解きに掛かる:10問中8問解いても残りが難問
まとめると,試験にはチャレンジがありません。挑戦とは「やってみなければ分らないこと」です。答があるかどうかも分からない問題が,本当の問題です。秀才が往々にして弱いのは,答があると思えない不安に直面し,挑戦できないときです。現実世界では,そんな問題ばかりです。
勇気について考えておきましょう。子どもはついついいい気になって派手な行動を取りたがります。カッコイイということです。本当に実力のある子どもは危険を避けるようにします。人にどう見られるかということの前に,状況と自分の能力の見極めが出来るからです。怖がるときは堂々と怖がることの出来る子どもが,真に勇気のある子どもです。怖がっている子どもに無理を押し付けずに,怖いという気持ちをしっかりと受け止めてやりましょう。格好悪くていいんです!
やる気をつぶす10条というのがありました。
(1)自信・希望を無くされている
(2)親の価値観を押しつけられている
(3)爪の垢でもと,比較されている
(4)ハヤク,サッサと,急かされている
(5)余計なことはしないと,体験を禁止されている
(6)無視・無関心にされている
(7)当たり前と,価値を認められていない
(8)進歩・成長を認められていない
(9)取り柄を認められていない
(10)欠点・短所をいつも言い立てられている
もしも思い当たることがあったら,子どもに対面するとき,ちょっと息を抜いてからにしてみてくださいね。
○リンカーンは凡人が好きだったようです。こんな言葉を残しています。「神様はきっと凡人を愛しておられるに違いない。だから神様は凡人をたくさん作っておられるんだ」。子どもに向かって「世の中の役に立つ人間になりなさい」ということがあります。素直な子どもは,無意識のうちに役に立ち方で人を評価・査定するようになります。人間をランク付けするとき,人間大好きという優しさは育たなくなります。平凡に普通に生きている人,神様はそんな人を愛しているのです。