*** 子育ち12章 ***
 

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「第 22-11 章」


『子育ちは 行きつ戻りつ 少しずつ』


 ■徒然子育て想■
『復元力?』

 健康であるとは,風邪を引かないことではなく,風邪を引きかけても治癒力が機能するということです。疲れると風邪を引きやすくなるのは治癒力が低下するためです。健全であるとは,真っ直ぐに育つことではなく,逸れかけても回復力が働くことです。安定という状態は,復元力があるときに実現するものです。置かれている状況に的確に適応できる能力が,生きる力と呼ばれている力です。

 ロケットなどの制御をする方法はサイバネティクス法と呼ばれています。舵を取る人という意味を持つ言葉です。発端は,生物の運動の形式の観察です。
    (1) 目標を定めて運動を開始
    (2) 目標とのズレを調べる
    (3) 狂っていたら修正をする(機敏に変化に対応する力)
    (4) 再びズレを調べる(以上を繰返す)
精密な目標の決定だけが科学的方法ではありません。それは無限の計算量となり実現不可能です。とりあえず行動しながら,ズレを修正しつつ目標に到達する方が効率的です。それが自然の妙理であり,自然に任せて計算の省略をしているのです。ズレを感じたら復元する,それが生物の基本的な能力です。

 人間の場合には,人体の情報は全てが共有されて機能しています。ですから,歯が痛くても行動全てに影響が出てきます。一見不便なようですが,だからこそ全身全霊を打ち込んだ高度な行動が可能になっていると言えます。子どもの育ちは,立てるようになるのではなく,転ばないようになることです。できるようになるのではなく,間違えないようになることです。だから,たくさん間違えておかないと,育てないのです。



【設問22-11:お子さんの失敗体験を許していますか?】


 ○こんなこと・あんなこと!

 道理。叱られたから腹いせに火をつけたという中学生が現れました。背景となった事情もありますが,行動が短絡的すぎます。プロセスの把握が弱い,つまり物事のつながりが狭くしか認識されていません。原因と結果とはつながっているものと認識する力が幼稚です。例えば,試験の結果に対して「当たった!,ハズレタ!」で済ませる子どもがいます。自分のどこに弱点があるのかを見つけること,それこそが育ちなのですが,目を逸らしています。間違いが折角見えているのに!

 少年野球。スポーツ活動をしている子どもの場合,例えば,野球の上手・下手という判定だけが幅を利かせています。落ちこぼれたら救えないという状況です。昔の草野球チームでは,野球以外のこと,グラウンド整備,マネージャー,場所取り,相手との交渉など,スルコトが豊かであり,その中で役割が持てていました。仲間で有り得たのです。今は野球以外のことは大人が取上げ,子どもにさせていません。多少失敗するでしょうが,任せてやらないと,子どもは育てません。

 不器用。最大の原因は,コントロール能力を養う動作や作業が絶対的な経験不足になっていることです。例えば,上手に転ぶ,木を削る,買物など,かつては日常生活の中で自然に体験していました。今子どもは生活から隔離されているので,不器用に追い込まれています。コップの水をこぼさずに運ぶ,そのことに必要なのは力ではなく,筋力のコントロール能力です。失敗経験に修正を加えながら,運動神経は身につき,神経系が学習の記憶をしていきます。

 失敗の報酬。優等生よりも落第生のほうが人間として厚みや面白みがあるのはなぜでしょう? 成功は人間の表側を飾るに過ぎませんが,失敗は人間の内面を豊かにするようです。自然は人間の成長のために失敗を用意してくれたのでしょう。人間が動物より優れているのは,人は失敗によって学びますが,動物は偶然の成功しか当てにできないからです。勉強のできる子どもとは,間違いをきちんとフォローできる子どもです。


 ○ママへのメッセージ!

 悩み。相談にいくほとんどの生徒は,「行動しないでの悩み」,「努力すれば解決できる問題での悩み」といった状況です。それは経験豊かな大人から見た判断であり,当の生徒にはやはり相当な悩みです。そんなことぐらいでと軽くあしらうのではなく,しっかりと受け止めることで信頼関係を結びます。その上で,もつれているように見える状況に対して,その成行き(道理)を具体的にきちんと整理し刺激してやります。「やれるかも?」という気にさせることで,悩みは半減します。

 失敗の転換。「あなただめねえ」,つい軽く言ってしまいそうです。でも,使わないでください。子どもをだめにします。ちょっと考えれば分かることですね。そこで,「次,できればいいんだ。もう一度やってごらん」,「おしかったわね。もうちょっとだったのに。もういっぺんやってごらん」という言葉を口癖にしてください。「こうするんでしょ!」と教え込むのではなく,子ども自身が「こうしよう」と考えるように,子どもを慰め,励ましていくことが子育てですから。

 頑張れ。この言葉も,子どもの尻を叩くようによく言いますね。でも頑張るって,どうすればいいのでしょう? 具体的には,やりかけていることを「ちょっとだけ」続けることです。一気に成功しなくてもいいんです。小さな挑戦を見極め,失敗を許すようにします。失敗して多少の迷惑があるような場合でも,親が引き受けてやります。ちょっとならできる,それが意欲であり,それを引き出すキーワードがガンバレという応援です。60点を65点にするのだったら,できそうでしょ!


 ○子育てにもマニュアルがあればいいですね。何か新しいことを始めようとするとき,まず本を買って来ることから始めることが普通になっています。しばらくすると,本を読んだからといってできるものではないことに気付かされます。本の通りにはことが進まないからです。経験との突き合わせをしながら,自分流のマニュアルに書き換える必要があります。かつては,人は自分の経験をノートに記録していました。手で行動(出力)することで,学びが進むことを知っていたからです。

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