*** 子育ち12章 ***
 

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「第 23-05 章」


『子育ちは 言葉が紡ぐ 共感で』


 ■徒然子育て想■
『目は口ほどに?』

 視聴覚は情報を受け取る代表的な感覚器官です。ところで,家庭でのコミュニケーションの主体は,口と耳によるものです。何度言っても分かってくれないという壁を誰しも経験します。親子の間であれば,親の言葉を子どもが聞く気がないということもあります。指示や指導の場合は別にして,普段の会話の中でも,さっき言ったばかりじゃないの,ということがあります。100%言ったことが伝わっているとは言えないのです。

 話した内容の75%は,無視,誤解,忘却などによって失われ,25%が残存するといわれています。4分の一しか伝わっていないのです。最もよい例が,会合などで語られる挨拶です。全く覚えていないはずです。聞いているのに覚えていない,右の耳から左の耳に素通りしています。何かの説明を聞く場合でも,一度聞いただけでは理解できないことがしばしばです。でも,関心のあることは割と覚えているものです。記憶の準備ができて聞いているからです。

 図解すると分かりやすい,あるいは最近の若者のようにメール画面上の字で伝えられると分かりやすくなります。人の情報検知量は,83〜87%が目から,11%が耳からだそうです。これは情報の形が違うからです。耳からはいる音声情報は1回きりですが,目で見ている情報は形が何時までもそこにあり,繰り返し見ることができます。言った言わないのトラブルを避けるには文書にします。家庭では,大事なことは目につくところに掲示するのも一つの策です。



【設問23-05:子どもって,どうして少しも黙っていないんでしょう?】


 ○こんなこと・あんなこと!

 主観。若者のコミュニケーションがうまくない理由の一つは,主観が中心になっているからです。自分の感じたことを伝えようとします。「ものすごく面白い」,「見たこともない美しさ」といった類の言葉が発せられます。でも,共感はできずに,本人が感動したということしか伝わりません。PTAなどの広報も同じ過ちをしています。事実を伝えるようにすれば,聞き手が居合わせたような体験ができます。主観は共感の邪魔になります。言葉のしつけでは留意してください。

 お手本。子どもが意味のある言葉を発し始めると周りの大人は喜びます。そこで俄然話す意欲が湧いてきて,いろんなことをおしゃべりします。お手本は親ですが,親は身内には感情的な話し方をし,身内にしか通じない言葉の省略をします。テレビからは流行言葉を拾ってきます。もっときちんと話して欲しいと子どもだけに押し付けても無理です。先ずは話すことの楽しさを優先して,親が気長にきれいな言葉で上書きしていきましょう。

 TV。視聴覚的に刺激が強く,子どもはついつい引き込まれて夢中になります。ママは手がすくので助かっています。子どもはテレビに語りかけますが,テレビは決して答えてはくれません。子どもは,やがてテレビからの語りかけが不特定多数の子どもへのもの,自分だけのものではないことに気づきます。自分の話を聞いてもらえないと聞く姿勢が育ちません。ママがよく聞いてやれば,対話の楽しさを覚えるはずです。

 テレビについてもう一つ。赤ん坊がTVを見ながら声をあげて喜びます。自分の意思をTVの人に伝えようとしています。でもTVは反応してくれません。話しかけても無駄と覚えてしまうと,次には外部からの働きかけに心を閉ざすようになり,自閉症に近い症状が現れてきます。TVに子守をして貰った子どもたちに多いそうです。話に反応することで関係が成立し,そこに共感の種が芽吹きます。ママが子どもの言葉をやさしく受け止めてやってください。


 ○ママへのメッセージ!

 夕焼け。「ママ。きれいだよ」。「そんなこと言ってないで,早く来なさい」。子どもって,どうでもいいような,脇道のことばっかり言ってきます。もっと大事なことが他にあるでしょ,今はそんなことはどうでもいいことなのといった風に,親は子どもの無駄話をむげに切り捨てることがあります。子どもは表現する楽しさに目覚めて,気持ちや感動を何とかして伝えようと一生懸命に考えています。今このときの会話を大事にしないで,いつの会話を大事にできるでしょうか?

 受容。子どもの言ってくることを一々聞き入れていたらきりがありません。聞けない場合の方が多いでしょう。受容するというのは,聞き入れることではなく,聞くことであり,共感することです。何かが欲しいと言ってくるとき,与えるのではなくて,欲しいという子どもの気持を受入れることです。聞く耳は持たないと断固拒否してばかりではなく,欲しいという気持ちを分かってやりながら,待つことや一緒に頼むことなど,状況に応じた対応の仕方を教えるようにしてください。

 弁当。高校生が空の弁当箱を渡しながら母親に言いました。「お母さん,今日の弁当,おいしかったよ」。子どもから言われる「おいしかった」という言葉は,母親にとっては言葉の最高の御馳走でしょう。でも,何も言ってくれない子どものほうが普通かもしれません。折角の心尽くしが報われないという思いを抱くことになります。でもそうでしょうか? 「おいしかったと言ってくれることはありません。しかし毎日一粒も残さず食べて来ます」。母親の聞く耳は素晴らしいですね。


 ○セミやコオロギは雄が鳴きます。雄は雌に対して存在を知らせようとします。一方が鳴けば用は足ります。雄の腹は空洞で鳴くための器官になっています。雌の腹は卵用になっていて生殖器官です。生きるために雌雄が機能を分化しています。だからどうしたと問い詰めないでください。ママの悪い癖は,「何が言いたいの?」とすぐに表現の裏を見ようとすることです。セミのことを分かる,それだけのことを子どもやパパは楽しんでいるのですから。バカみたい?

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