『子育ちは 先の用心 できるよう』
■徒然子育て想■
『文化?』
情報化社会。子どもは今の時代に育ちます。その今の時代は情報化で特徴づけられます。そうなった背景は,不確かな未来を巡っての競争です。例えば,株価がこの先どう動くかといった関心が世間的に大きくなったことなどです。その判断を支えている情報は常に未来を向いています。そこでは,今日の情報は昨日の情報を陳腐化することによって成立ちます。新しいことだけに価値があるという世界観が蔓延していきます。情報機器の新発売も繰り返されています。
新しいか古いかだけが判断の基準になり,型落ちしたモノは25日を過ぎたクリスマスケーキと同じ扱いを受けます。人が持ち続けていくべき善悪,真偽,美醜の価値は旧いといういわれのない尺度で脇に退けられていきます。人の行動の指針となる価値観が,価値観の多様化という波に遮られて,子どもに届かなくなっています。むしゃくしゃしたからという理由で,心の暗闇の中で暴れてしまい,事件を招き寄せていきます。心の闇の中で光る価値観を持てない不幸です。
情報化は進歩を内蔵する科学技術に伴って現れた特徴です。科学は発明・発見など新しいことに価値を置きます。大きな区分けをすれば,暮らしを彩る文明の姿です。ところで,人が生きるということは文化の支えが不可欠です。文化的価値観は伝統を重んじながら,悠然とした優しさを持って人を生かしてくれます。でも,現状は少し逸脱が目立ちすぎます。例えば,信頼が基盤である世間を偽って,分からなければいいと不誠実な所業をしでかす輩が出没しています。文化の脆弱さの現れです。
【設問23-07:子どもって,どうして用心しようとしないんでしょう?】
○こんなこと・あんなこと!
わがまま。家庭や学校では,管理上という名目で,子どもに余計なことをさせないようにしています。子どもはお客様として育っています。例えば,ドアを開け放しにして入ってくる女性がいます。「閉めて下さい」と言っても,平然として「ドアは自然に閉るものだと思いますが」,「あれ違ったかな」。それでも立ちません。研修の場で仕出し弁当が出ました。若い女性が喜々として配ります。「あれ一つ余っちゃった?」,「ああ,そうか,先生の分だわ」。礼儀という用心ができません。
援助。災害地に向けて援助物資という名目でモノが送られます。一般の方がする場合,自分の要らないものを出しているだけになりがちです。例えば,子ども用のパーティドレスなどはすぐ小さくなるので不用となり,よい機会と途上国に送り出されます。簡単に押し入れのゴミを始末でき,更に気の毒な人を助けたという善意の気持ちも持つことができます。でも,あげるなら自分が必要としているものをあげるように,相手の生活を思いやるのが用心です。用心のない善意は迷惑になります。
ペット。子どもは小動物が好きです。手元に置きたいと思うと,飼ってとねだります。飼う理由は,家族の一員として,情操教育に,優しさを引き出す対象に,といろいろ考えられます。ところで親の方は,世話の忍耐を真っ先に考えます。結果として,子どもはクラブで多忙になり,興味も移り,親が世話をします。それが難しい状況では,行政の手で処分? そのとき,子どもが悲しむから内緒で,とはしないことです。一時の気まぐれや無用心の結果を教えないと,「犬死?」になります。
視野。物事を考えるとき,どういう範囲・広さを想定するかが大切です。視野が広いか狭いかということです。例えば,演歌では,昔は「遠く,皆で」という広がりがあり,視点は「LONG」でした。星空を見るといった歌詞が見られました。最近は「近く,二人」という狭さになり,視点は「CLOSE UP」です。人の視野が身近に狭まったことを反映しています。いきおい人の付き合いも狭まって,皆でという発想が薄れてきました。近視眼的な視野になっていないか,ご用心を!
○ママへのメッセージ!
ラッキー。努力をして手に入れるという地道な行動が,若い世代に伝わっていないように見えます。試験にしても,ここが出題されるという事前の指示がないとできないと訴えてきます。同じ種類の問題でも少し変えると,手をつけようとしません。しまいには,テストの点が良ければ「ラッキー」という始末です。理解の結果ではなく,単に運が良かったと白状しています。ちょっと考える努力をすれば報われて,能力につながるはずです。少し先を考える努力,それが用心につながります。
天気観望。暮らしの中で気象状況は,かなり用心しなければなりません。寒暖や晴雨を見分ける用心が,体調維持につながります。雲の動きを知れば,晴雨の判断ができます。今はひまわりの映像で雲の動きを見ていますが,そのために自分の頭上の雲を直接自分の目で見ることはしていないでしょう。日の出を見たことがない子ども,それは気象への無関心の証拠です。また,川の水の増減を見ていることで,水の事故に対する用心にもなるのですが・・・。
知力。「あ,それ知ってる,知ってる」,「テレビでやってた」。子どもたちはいろんなことを知っています。でも,それまでです。大人も世間のことにあれこれご意見らしいことを言われますが,それまでです。自分で何か行動するという展開が見られません。知っていることとできることの間には大きな段差があるということです。そのことを弁えていれば,もっと実効的な知力を得ようと経験に努めるはずです。「できもしないのに!」,そんな不用心は避けたいと思われませんか?
○子どものしつけは,方向性を持ちます。行為を正と負の価値に分けて,正(プラス)の価値を追求する方向をしつけはめざします。そこで,負の価値はできるだけ削られます。でも,負の価値は個性を伸す材料,すなわち正の価値を生み出すこともあります。例えば,おとなしいのは優しさ,のんびりは確実さといった風に別の尺度を当てると,無駄なものはないということになります。子どもを見るときに,温かな目で見てやることが大事になります。
「子育て羅針盤」は,「育児のまぐまぐ!」5月9日号において,おすすめマガジンとしてご紹介をいただきました。平成4年11月に続いて2度目です。マガジンの発行は,海に向かって叫ぶのに似て,こだまが返ってこない寂しさと隣り合わせなので,認めていただいたことはとてもうれしく思います。これからも心を込めて書き続けていくエールと受け止めて,皆様にメールをお届けいたします。今後とも,よろしくお願いいたします。