*** 子育ち12章 ***
 

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「第 24-10 章」


『子育ちは 楽しみ見つけ 追いかけて』


 ■子育て一言メモ■
『過去にこだわるものは,未来を失う!』

 親は子どもに期待を寄せます。そのことは自然な気持ちです。ところが,期待に添わないと「ダメな子」と突き放すことがあります。子どもにすれば親の勝手な思いこみです。でも,いわゆるいい子であれば,その期待にこたえようと親の顔色をうかがいながら意識しないまま自分を曲げていきます。無理は積み上がりやがて力尽きて本当にダメになりかねません。期待にこたえるということが励みになるか苦痛になるか,その加減は難しいものです。

 人の育ちは決して一直線ではありません。親がなんとなく想定しているようなレールはありません。親の心は「子どもに苦労の少ない道を選ばせたい」というものですが,どんな道を選んでも苦労のない道はありません。親は子どもの将来を見通せるほどの神通力は持っていないでしょう。例えば今流行の職種は今のことであり,明日には別のものが現れるはずです。つまり,今を目指したら,子どもが育った明日には過去になっています。柔らかな期待が大切です。

 期待は「将来のために今子どもはこうあるべき」という形をとります。それがママのあせりを生み,「早く,さっさと,きちんと,ちゃんと」と畳みかけるようになります。赤ちゃんにはとても優しいママだったのに,育ち上がってくると声が一オクターブ跳ね上がり,しつけのための声変わりをします。落ち着いてくださいね。育ちはゆっくり進みます。スイッチを押したらすぐに反応する機器とはできが違うのです。期待とは,期して待つと書きます。

 子どもは親の期待につぶされないように自衛行動をとります。おなじみの「メーカー希望小売価格をズバリ半額」というわけです。そのとき親は子どもを見放したくなります。その時がチャンスです。期待を「ありたい」と考えるようにすれば,将来の可能性をプラスに評価できます。今がダメなのではなく,明日にはできるようになれるかもしれないと待つことです。その方がわくわくしませんか? 親の愛とは無条件に子どものあるがままを愛するのであり,あるべき姿ではありません。

 冒頭の言葉はイギリスの首相であったチャーチルに拠ります。ママの得意技は「あなたはいつでもそうだから!」と過ぎたことをいつまでも持ち出してくる記憶力のよさです。それを言って反省させようというつもりかもしれませんが,あまり効果はありません。言われた子どもには,これから先に対する励ましが感じられないからです。逆にあの頃は良かった,そう言いながら年齢を重ねていては先が楽しくありません。育ちを支える積極性とは未来志向から生まれます。



【設問24-10:あなたのお子さんは,明日を楽しみにできていますか?】


 ○明日に向かう目標?

 子どもは人生の始まりにいますから,時の流れは未体験で実感できません。弟妹がいれば育ちがわずかに見えますが,少子化では無理です。ましてやお父さんに子ども時代があったという育ちの長い時間など,思いも及ばないでしょう。おばあちゃんがいればお父さんの子ども時代のことを話してやれますから,なんとなく時間の流れが想像できるようになります。子どもに親のアルバムを見せてやることも役に立つでしょう。

 縦集団が身近にあると1年先,数年先,10年先と,自分の明日がイメージできます。今日と明日は決して同じではなくて,人は育っているのだということが目に見えてくるはずです。子どもの映像を記録に残しているなら,ときどき子ども自身に成長を振り返らせてやってください。育ったという実感が与えられることでしょう。昔は柱の傷が成長の証でしたが,柱に刻んだ意味はいつでも育ちが目に付くようにということだったのです。

 今の子どもは「早く大人になりたい」と思っているでしょうか? それが育ちの意欲なのですが,子どもたちからは伝わってきません。育ちの意欲を持つためにはどうすればいいのか考えましょう。二つの条件があります。「実現可能性」と「魅力あるモデル」です。実現可能性とは,そのうちにきっと自分もなれるという見通しを持てることです。すぐには無理ですが時が経てばやがて実現するはずと思えることです。お父さんも昔は子どもだったんだと納得できたらいいでしょう。

 魅力のあるモデルとは,親や周りの年長者の中に見つかる「〇〇みたいになりたい」という人です。特に親は子どもにとっては,将来の自分です。生き生きとしている親の姿を見せられたらいいのですが,疲れ果てて苦労ばっかりと嘆く姿ばかりを見せていたら,子どもを大人になりたくないとしつけているようなものです。外で働く親の姿を見せることができたらぜひそうしてください。また地域で活躍する姿も良い後ろ姿になることでしょう。向き合うのではなく,共に前向きになりましょう。

 ・・・期待と強制との違いは,育ちへの信頼感の有無です。

 鉄は熱いうちに打て。いささか乱暴なことわざですが,スパルタ教育という育て方に通じます。甘やかしたらダメになるという不信感が根底にあります。確かに一理はありますが,それはどちらかといえば非常時における過激な教育です。現在のような穏やかな時代に育っている子どもには通用しません。また核家族の中でしか信頼関係がないといった支えのか細くなっている今の子どもたちには,信頼に基づいた子育てがふさわしいのです。


 ○ママへのメッセージ!

 ※また明日!

 毎日子育てにがんばっているパパやママは,日々幸せですか? 忙しくてそんなのんびりしたことなど考えたこともないとは言わないで下さい。簡単な幸せチェックがありますのでお教えしましょう。夜お休みになるときに「明日の朝,起きるのが楽しみな方」は幸せな人です。もしも,「やれやれやっと一日が終わった。寝るだけが楽しみ」と思っていたら,不幸ではありませんが幸せではないでしょう。

 どなたも明日は明日でしなければならないことがいっぱい控えていることでしょう。明日の朝が楽しみなどとは考えられないと思います。しかし,小さいことでもしたいことを見つけられたら,明日が楽しみになるはずです。それを見つけることが幸せの扉の鍵になります。子どもは学校に行かなければならないと思っています。それでも友達と遊ぶ時間といった楽しみがあれば,我慢できます。放課後に自分の好きなことができる時間があれば,それを待つことによって一日を楽しく過ごせます。

 お母さんに作ってもらったお弁当をナフキンで包んで持っていきます。ところがママがよく見るとナフキンが裏返しです。男の子は裏表に頓着しないのだろうと見過ごしていました。その後もママが見ているといつも裏返しです。わざと裏返しにしている風なので「裏返しでしょ!」と注意しました。子どもは怪訝な顔をしています。「どうして裏返しにするの?」。「お弁当を開いたとき,きれいだから」。楽しみを見つけていたのです。

 明日になったらこれができるようになるかもしれないと,成長を楽しみにすれば毎日が楽しみになります。大人になって風呂で幸せになっているときは,成長という楽しみを失っているときです。死ぬまで自分を成長させようとする意欲が見えないと,幸せは逃げていくでしょう。子育てをしているときは,親としての成長をしているときで,明日が楽しみになるはずです。それが子どもからの親への贈り物なのです。


 ○最近,子どもの学力に経済的な格差が反映していると言われています。どこまで確かな関連があるのか分かりませんが,あまり気にする必要は無いと思います。考えられることは,子どもたちが「お金のかかる環境が整っていなければ勉強できない」と,簡単に見限る傾向があるということです。環境がどうであれ,明日に向かう目標を意識して継続することが大事です。環境はただ継続を促すために機能しているにすぎません。続けることの再認識が次の課題になります。

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