*** 子育ち12章 ***
 

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「第 25-05 章」


『子育ちは 言葉操り 知恵付けて』


 ■子育て一言メモ■
『言葉は第二の母乳』

■赤ちゃんは母乳で育ち,もう一人の子どもは言葉で育ちます。ボク,ワタシという言葉で,男女としての自意識が紡がれます。

■体験が言葉と結びついたとき,知恵として記憶になります。体験が伴わない言葉は,ほとんど役に立ちません。机上の空論がその例です。

■気持ちを表す言葉を知らないと,表現として噴出することができず,イライラや不安が募るようになります。赤ちゃんは泣き声で発散できますが,子どもになると泣くわけにはいきません。言葉が感情を導いてくれます。

■もう一人の子どもは言葉を手がかりにものごとを理解し,考えることができるようになります。知るということは,言葉を手に入れることです。

■言葉は抽象性を帯びてくるにつれて効力を増します。優しさという言葉には,実体がありません。言葉とは深いのです。

■名前,それはあらゆる関係性のはじまりです。ママ。パパ。○○ちゃん。親子関係はその言葉を覚えてから意識されるようになります。



【指針25-05:言葉を理解し記憶できたとき育っていきます!】


 ○こんなことはありませんか?

★先日,メガネ屋に行ったときのことである。団塊の世代と思われる疲れた男性が横に座った。店員が色々と説明し,希望を聞いていた途中で・・・。「形はこれでよろしいでしょうか?」,「ええ。お任せします」。「無色ですか?」,「えぇ! わかりますか? 実は突然リストラされたんですけど,息子は大学に入ったばかりで,家のローンもまだ・・・」。「・・・」。私は心の中で「レンズの色やっちゅうねん!」とつっこんだ。

 「無色」という書き言葉を読めば何の齟齬も生じませんが,「ムショク」という話し言葉は「無職」という聞き取りに誤誘導します。聞く人にとってムショク=無職という感度が高まっているからです。言葉の行き違いはお互いの関心事がかみ合っていないときに起こります。親子の関心は違うから,何度言っても通じません。

★104の番号案内の交換手をやっていたときのこと。「番地までわかんないんだけど、■■市××町の○○△△さんの番号調べてください」と言われ,調べたところ,同じ町内に2人同じ読みをする方が登録されていました。そこで,どちらか確定するために「どのような漢字ですか?」と聞いたら,「ん〜…色白ぽっちゃり」と答えが返って来た。。。

 言葉の行き違いは,ほとんどが単語の使用から生じます。漢字→かんじ→感じ。勘違いを避けるためには,文章化することです。例えば,最低限「お名前はどのような漢字ですか?」とお名前という主語の言葉を付け足します。もっと丁寧には,「同じ読みの方が二人いますが,お名前の漢字は分かりますか?」とこちらの事情を説明すればいいでしょう。

★3歳の娘が「M君(8歳)に叩かれて血が出た」と帰ってきた。いつも優しいM君がそんなことするわけはないと思いつつ,叩かれたという手を見ると,確かに娘の腕で蚊が叩かれて血を出して死んでいた。

 子どもの話は,一度聞いただけでは要領を得ないことがあります。言葉のつながりによってものごとを説明するというのは,かなり高度な知的作業です。大人でも文章を書くというのは,かなり苦労します。状況を説明するために必要な言葉を揃えるようにすれば,何とかなります。「蚊」という言葉が欠落しただけです。

★子どもの頃,「こぶ取り爺さん」の話を聞いた時,「小太りな爺さん」はちっとも出てこないのに,どうしてタイトルになっているのか?と,不思議でならなかったのを覚えています。

 子どもが経験から作り上げた自分の辞書に,こぶ=瘤という言葉があったにしても,こぶを取るという経験はしていないはずです。こぶが取れるとは想定外であり,「こぶとり」=小太りという連想しかできなかったことでしょう。話を聞けばこぶが取れるという展開に出会いますが,小太りという思いこみを正すことには結びつかなかったのでしょう。いったん思い込んでしまうと強固ですが,やがて修正できるときがやってきます。

★自宅でことばの練習帳をやっていた我が家のやんちゃ娘(5歳)。なかなかはかどらず,教えていたカミさんも,だんだんイラついてきたようで,言葉もきつくなり,娘もシュンとなってしまった。そして次の問題「『みじかい』の反対のことばは?」でも,いっこうに答えを書かない娘に対し,ついに切れてしまったカミサンが,「短いの反対のことばって何よ!」と怒鳴ってしまった。すると,もじもじとしながら「いかじみ?」。思わず鼻水がふき出してしまったパパでした。

 大人にとって反対語は自明のことです。長いか短いかという「長さ」に関する比較を数多く経験しているからです。幼い子どもは長さという物差しを使うことがほとんどありません。長さという概念ができあがっていないのに,短い・長いという言葉の結びつきは理解不能です。文字を逆読みするしかありません。

★娘が幼かった頃のこと。「ちががーッ!ちががーッ!」と大泣きしていたので,何事かと思いそばに行くと,娘の指先に血がにじんでいた。以前に親である私が言った「血が…」という言葉=「血」だと覚えてしまったのだった。似たようなことがどこでもあるようで,「蚊にに刺された〜」,「蛾ががいる〜」,「歯ががーッ!」などのバージョンも聞きます。一文字のことばって、難しいですね。

 「おしっこ出た」。「お腹空いた」。「足痛い」。子どもの話し方ですが,それは聞き方にも適応されます。「血出た」と言えば,子どもは「ち=血」と聴き取りますが,「ちが出た」と聞けば「ちが=血」となります。助詞の「が,は,に,を」などは意味を持っていないので,子どもには難しいでしょう。文章を話すようになれば自然に覚えていきます。

 ●上記の★項のエピソードは「まぐまぐVOW」を参照しています。感謝!


 このところ「食育」という言葉がもてはやされています。その文字からなんとなく意味が見て取れますが,定義を見なければ正確な理解はできません。聞いたことがあるという程度では,自分の言葉として発言するのは憚れるでしょう。きちんと意味を理解した上でないと,使えません。なんとなく知っている言葉とか〜,仲間内でしか通用していない言葉?とか,そんな曖昧な言葉ではコミュニケーションもいい加減なものになります。「語育」という言葉を作りたいですね!

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