*** 子育ち12章 ***
 

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「第 28-01 章」


『子育ちは 決める自分が 育つこと』


 ■子育ち基礎力概要■
『子育ちの第1基礎力』

 この28版では,社会人基礎力に結びつけながら,子育ちを考えていきます。経済産業省の経済産業政策局に社会人基礎力に関する研究会が設置され,12の能力が選び抜かれました。従来,「組織や地域社会で多様な人々と共に仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力」は学校を出たら付随していると思われていましたが,家庭や地域の教育力が低下したために,現在の若者には学力しか身についていないことが明らかになってきました。

 社会人としての基礎力が備わっていなければ,職場で必須の共同作業の中に入ることができません。産業界などから基礎力の育成を求める機運が現れ,また若年層の社会性の脆弱化が様々な面で社会的な問題にもなっていることから,基礎的な社会力を提示する研究が行われました。その中間の取りまとめが,18年の春に発表されました。発表された社会人基礎力の12の能力要素は,子どもたちが育ちの中で培っていく力と考えることができます。

 各号で社会人12基礎力の一つ一つを取り上げていきますが,まず最初は「主体性」という要素です。その内容は,「物事に進んで取り組む力」で,「例えば,指示を待つのではなく,自らやるべきことを見つけて積極的に取り組む」と表されています。

 子育て羅針盤では,子育ちの第1基礎力を「もう一人の自分がしっかりと育つことによる自ら決める力」と考えてきました。これは上記の社会人基礎力と重なっています。子育ちの先には社会人がいることを思えば当たり前のことです。人に言われるからするのではなく,もう一人の自分という自我がこうすると決める力を持つ必要があります。幼いうちは我を張るという面が先行します。それは徐々に正していけばいいので,先ずはもう一人の子どもがしっかりと育つことが大切なのです。

 社会人基礎力の主体性に付与されている「物事に"進んで"取り組む力」とは,もう一人の自分が自分はこうすると決断する力です。平たくいえば,自分のことは自分で決める力です。何をすべきかを見つける力については,後述する別の力になります。その点では,社会人基礎力の区分けは多少緩くなっています。子育ちの12基礎力としては,できるだけ単純明快に区分けをしておくことが実際的です。



【指針28-01:育ちには,自我を確立し決断する力が必要な要件です!】


 ■子育ち支援メモ■
『決断から始まる』

 進んで取り組むとか,積極的に取り組むという姿勢は,決断する力が無ければ現れません。どうしようかなと優柔不断に止まっていては,物事は先に進みません。また,言われてするといった押しつけられる行動は,いい加減なものになりやすいものです。お手伝いしなさいと命じられてばかりだと,自分が決めたことではないので,すればいいんでしょうという逃げの気持ちがつきまといます。自分ですると決めると,それなりにきちんとしようという心構えになります。

 「早寝早起き朝ご飯」という運動が展開されています。人が生きているリズムは,日照に沿っています。人工的な夜の明かりによって暮らしのリズムがシフトされて,朝の目覚めが日照とずれてしまっています。健康なリズムを取り戻すことが,身体能力を取り戻す道です。早く寝ようと自分で決めれば,朝は早くすっきりと起きることができます。眠たかった授業とも,さようならとなります。充実した学校生活が手に入ります。起こされる毎日のままでは,決断の果実はありません。

 した方がよいことがあります。いいとは分かっていても,つい面倒になったり,自分がしなくてもと逃げてしまうものです。その自分の弱さを振り切るのは,もう一人の自分が持っている決断する力です。重い腰を上げるスイッチを入れる,それが自分を育て生かすスタートになります。「さあ,始めるぞ」,その思いっきりのよさが無いばかりに,人は後悔を増やすことになります。あのときしておけばよかった,子どもが育ちの後悔をしないように,決断する力を応援してください。

 子どもはできもしないことを,自分がすると決めてかかります。どうせ失敗するからと止めさせたくなります。危ないことは別にして,少々のことは見て見ぬ振りをしてさせておきます。できなくて悔しがったり,痛い目に遭うこともあるかも知れません。結果はどうであれ,自分がするという子どもの決断を認めてやり,始末に対するフォローをきちんと教えてやるようにします。子ども時代では結果がすべてではなく,決断する経験を持たせてやることが子育てになります。

 子どもに決めさせるということを,子どもの勝手にさせることと混同しないでください。それは放任になります。わがままを子どもが決めても,それは通りません。子どもの決めたことがすべてかなうということではありません。その壁を体験させることは大事なことです。どうすれば実現可能な決定ができるか,子どもは自分で考えるきっかけを手に入れることになります。そのプロセスも,自分で考えて決断するという主体性の一部です。



 人は自分の思い通りに生きていたいものです。でも自分にできることは限られています。助け合いながら生きているのが社会の原則です。そのことをしっかりと意識できないと社会人にはなれません。ところで助け合うという姿は,直接的なものと間接的なものがあります。どこまで深く認識をしているか,それが人の器量につながります。直接的な助け合いしか見えない人は,器量が狭くなり,結果として住む世界が狭くなります。協力の広がりを考えておきましょう。

 大人のおつきあいの世界にはいろいろな思惑が絡まっています。結構大変ですね。子どもの世界にもおつきあいがあり,未熟なだけに,その苦労はかなりのものです。徐々に慣れていくことが,育ちのプロセスです。わがままな個性がぶつかることで,お互いに必要な資質を刻み込んでいきます。子どもはその気苦労を家庭で癒やす,親に甘えることで癒やしています。酸いも甘いも経験することで,子どもは素直に育っていきます。


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