*** 子育ち12章 ***
 

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「第 28-02 章」


『子育ちは 持ちつ持たれつ あれやこれ』


 ■子育ち基礎力概要■
『子育ちの第2基礎力』

 21世紀の職場で求められるスキル(技能・熟練)には,学力等のハードスキルの他に,米国政府機関の定義によれば「効果的なコミュニケーション,創造力,分析力,柔軟性,問題解決力,チームビルディング,傾聴力等の,他者と触れ合う際に影響を与える一連の能力」とされるソフトスキルがあります。このソフトスキルは,これまで意図的にしつけや教育に組み込まれているものではありませんでした。社会人12基礎力はその手抜かりを埋めようとする提案でした。

 この号で取り上げる社会人12基礎力は「働きかけ力」です。その内容は,「他人に働きかけ巻き込む力」で,「例えば,"やろうじゃないか"と呼びかけ,目的に向かって周囲の人々を動かしていく」と表されています。最近の子どもたちの傾向として,人にかまうということがないように見えます。人に対してとやかく言わず,それ以上に言われたくないと固い殻を帯びています。誘うということがお互いに迷惑になると思いこんでいるようです。

 子育て羅針盤では,子育ちの第2基礎力を「自分と他者を同一視して協力しようとする力」と考えています。人は一人では生きていけないという根本を熟知した上で,協力することで生きていけると納得すれば,社会生活に素直にはいることができます。自分が生きるために協力を求めるには「一緒に」というパスワードを使うことになります。それが社会人基礎力の働きかけ力を引き出すことになります。

 社会人基礎力の例として示されている「目的に向かって周囲の人々を動かしていく」ことができるのは,その目的が周囲の他者にとっても目指したくなる良いものである場合のみです。皆にとって望ましい目的を選ぶことができたら,お互いに一緒にという機運が生じます。もう一人の自分が自分にとって良いことにこだわらず,自分たちにとって良いことを見つけようとしなければなりません。その心の動きが自分と他者を同じに見ることができる優しさです。

 社会力にとって欠くことのできない前提は,「私たち」という自意識です。子どもにその意識を植え付けるためには,他者は味方であるという経験を通して納得させなければなりません。もちろん,その場合の他者は母親であり,家族であり,友達へと徐々に広がっていくものです。人見知りをするといったセキュリティ意識が高い状態から,レベルをどこまで下げても大丈夫なのかという確認作業が必要になります。



【指針28-02:育ちには,自他を認知し協力する力が十分な要件です!】


 ■子育ち支援メモ■
『多様な仲間づくり』

 甘やかしてばかりいると,子どもは自分のために人を利用してもいいと覚えるようになります。その行く末が闇に紛れてひったくりをする行為になっていきます。人をカモと見なすのです。一方であらゆることが思い通りにならない境遇に追い込まれていると,人は頼むものではないと思いこんで関係を持てなくなります。いずれも極端なケースであり,現実には,たくさんの人との関わり合いによって,甘えていい人といけない人を見分けることができるようになります。

 協力するというつながりを持った集団は仲間と呼ばれます。相手と自分の関係のありようによって○○仲間となります。いろんな仲間関係を持っていないと,無理をするようになります。例えば,クラスの友達しかつながりがないと,生きていく上で必要なあらゆる協力を友達関係の中に持ち込もうとします。友達は親子関係の代わりはできません。社会的な関係も備えることはできません。友達は友達でしかあり得ないのです。もちろん,親子関係だけでも困るのです。

 協力といっても,子ども時代は助けてもらう場合の方が多いでしょう。周りにいる親や大人は,子どもが手を貸して欲しいと言ってきたときに助けてやりましょう。子どもが言わない先に助けてしまうと,困る経験をしないので,協力してもらったときのうれしさを感じることができません。協力しあうということはとてもいいものだという体験を積み重ねることによって,人はお互い様で生きているということを覚えていきます。

 協力関係は,持ちつ持たれつという形を取ります。双方向の関係であるためには,子どもなりにできる手伝いをさせるようにしなければなりません。年下の弟妹や下級生の面倒をみるという機会を与えます。世話をしてやって喜ばれるとうれしいものです。かわいくなります。自分が兄や姉であるという自意識を持つことによって,社会における役割を自覚していきます。役割を持つことによって,協力という機能が発揮されていきます。夫・妻という意識が家庭の協力につながっているように。

 予定されていない突発的な協力もあります。テレビを見ているとき,ママから急にお使いを頼まれるといったときです。テレビが大事か,ママの用事が大事か,判断できる子どもに育てておかなければなりません。自分の都合のいいときだけ協力するという癖を付けると,やがて誰からも相手にされなくなります。世間では,協力してくれない者に協力してあげようという者はいません。協力するかしないか,それは社会人としての試金石にもなります。



 入学したときや転校したとき,クラスの中でお互いに探り合いがあります。隣りの席であるとか,同じ居住地であるとか,当番の班になったとか,何らかのきっかけで関わり合ってみて,気が合いそうならとりあえず仲間としてつきあってみます。何となく気が合わないと,別のきっかけを通じて他の友達を作っていきます。そんな人脈がいくつかできると,そこに居場所ができるので,落ち着きを得て,育ちに向かっていくことができます。

 子どもの絵の作品展があります。素人の目には,どこが上手なのかと思うことがあります。ところで,絵には上手下手はありますが,間違いというものはありません。正解はありません。どのような絵であれ心の素直な表現なので,心理面での手がかりになります。子どもの絵は○×の対象ではなく,認めることしかないのです。絵を学ぶことにより,子どもが人間関係でも人を否定することが無くなっていったというお話を聞いたことがあります。○×のない世界もありますよ。


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