『子育ちは 言葉を交わす 楽しさで』
■子育ち基礎力概要■
『子育ちの第6基礎力』
この号で取り上げる社会人12基礎力は「傾聴力」です。その内容は,「相手の意見を丁寧に聴く力」で,「例えば,相手の話しやすい環境をつくり,適切なタイミングで質問するなど相手の意見を引き出す」と表されています。人の話を聞かずに自分の話を一方的に話すだけという最近の状況では特に大事な力です。相手に押しつけるのではなく,私は私,あなたはあなたの御勝手に,という突き放した感覚が背景にあることに着目すべきです。
子育て羅針盤では,子育ちの第6基礎力を「抽象概念を構築し理解する力」と考えています。言語は人間関係を築くコミュニケーションの手段でもあり,概念の共通理解が人として「十分な要件」となり,育ちの課題になります。独りよがりの表現や捨て台詞は何の共感も得られなくて,意味がありません。自分の理解と他者の理解がきちんと整合しているか,対話を通して確認しなければなりません。そのためには,人の言葉を聞き取る傾聴力が求められます。
情報社会の中で,言葉がマスコミから垂れ流しされています。膨大な言葉のうねりに巻き込まれて,心の偏食が起こっています。言葉をたくさん知っているような思いこみをしていますが,実のところ,その意味を問われると答えられないようです。大人の会話でも,受け売り半分,尾ひれが半分という底の浅い話に終始し,展開して深まる気配はありません。うわべの知っているというだけの理解では,話し手も聞き手も堂々巡りで,次のステップに話を進展させることはできません。
例えば,学校とは学ぶ所であり,教わる所ではありません。先生の教え方に目を向けるよりも,先生の話に耳を傾ける態勢ができているか,予習や復習をしているかといった子どもの学び方の方に注目しなければなりません。また,義務教育とは,教育する側である行政や親に義務があるのであって,子どもが学校に行く義務があるのではありません。子どもは学ぶ権利を持っているのです。言葉によるイメージを正確に理解していないと,考え方や見方が間違い,話が通らなくなります。
三人寄れば文殊の知恵。文殊とは仏陀の弟子の中で知恵一番といわれた人で,凡人が3人寄れば文殊並の知恵が出てくるという故事です。そのようなことが実現するためには,意見や考えを交換する中で,お互いの話をよく聴くという手続きを踏むことが前提になっています。一人の考えていることをもう一人が違った側面から見れば,新しい展開が可能になり,知恵が得られます。また,ディベートという討論法がありますが,相手の言うことを聴かなければ,反論も賛成もできません。
【指針28-06:育ちには,概念を構築し理解する力が十分な要件です!】
■子育ち支援メモ■
『言葉の共鳴』
言葉のしつけの際に親の気にすることは,言葉をきちんと話すかどうかです。子どもがおしゃべりをするとうるさいとは思いながら,心配はしません。ところが,子どもが話を聞いているかということについては,ほとんど無関心です。親の言いつけを聞くということではなく,人の話を聞いて理解しているかどうかです。人の話をきちんと聞き取ろうとすることができるかどうかです。絵本の読み聞かせが大事なしつけであるのは,聴くことが楽しいと経験させることです。
情報社会の中では,少ない言葉で事足りるというパラドックスがあるようです。同じ関心興味を持つ者が,何処かにいます。若者であればネットで出会ったりするのでしょうが,公民館やセンター施設での行事等を通しての出会いもあるでしょう。通信手段の便利さが,遠くにいる人との結びつきを可能にしたお陰で,気の合う人とだけつきあうようになりました。そのような間柄では,言葉少なくても十分に話が通ります。くどくど言わなくても済む,その環境が言葉を貧しくします。
身近にいる人とつきあおうとすると,例えば,世代が違うなどで,話がスッとは通らずに,事細かに説明する必要が出てきますし,また説明を求めて聞き返さなくてはなりません。そんな面倒があるから,知らない間柄でいた方が簡単です。こうして大人のつきあいは片寄ります。子どもの場合,同学年の子どもとつきあっているので,話すことも聴くことも苦労が無く力がつきません。何とか分かり合おうとする苦労があってこそ,自分の言葉が磨かれ,人の言葉が理解できるようになります。
言葉をつないでイメージを作り上げる,すなわち文章表現ができなければ,意味のある話を構築することができません。人が生きていく上で拠り所にするのは,ドラマの筋書きです。生活の中で脚本に組み上がりますが,そこでは精密な文章が必要になります。例えば,子どもが好きな「面白い」という概念を現実の場面に作り上げようとすると,起承転結の揃ったかなり詳しい脚本が必要になります。一発芸のような単発では,人生に関わるような深い感動には届きません。
人の話を理解するためには,自分の中に共鳴できるイメージを予め持っていなければなりません。大人の言ったことに子どもがキョトンとしていることがあります。子どもの方に理解できる準備ができていないからです。先生が授業で話す説明を理解できない,それは子どもの側に新しいイメージを受け止めることのできる似たような体験を言葉で整理構築していないからです。先生の言葉から,そんなことがあったと思い出せるかどうかで,理解度は左右されます。
「やればできるのに!」。とにかくやってみる。それが子どもの特権でした。でも,やる前から,あれこれ心配してしまって,二の足を踏むのが今時の子どもです。そんな子どもの背中を押してやりたくなります。いきなりでは怖いという急ブレーキが働きますので,先ずしてみせる,大丈夫だからと言って安心させ,やってごらんときっかけを与え,少しでもできたらここまでできたとほめてやる,そんなステップを踏んでみてください。
ママは何が楽しみなの? 子どもは休む暇もないようにあれやこれやで忙しいママを見て,思っています。でも,忙しいあまりにとばっちりが飛んでくると,自分がいけない子どもなのかと考えて,育ちを立ち止まります。ママが笑顔でいると,子どもは元気を出して育ちに向かっていきます。子どもはママが大好きです。好かれていることを忘れないでいれば,ママも元気になれるでしょう。優しくすれば優しさはきっと返ってきます。子どもを信じてやってください。
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