*** 子育ち12章 ***
 

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「第 29-14 章」


『子育ちは 12指標で 健全に』


 ■子育ち12支援■
『子育て羅針盤の構成について』

 どんな子どもに育って欲しいですか? そう尋ねられたときに,どのように答えたらいいのでしょう? 優しい子に,明るい子に,好かれる子に,しっかりした子に,頭のよい子に,元気な子に? さまざまな形容詞で表される子ども像は,挙げていけばきりがありません。さらには,どれか一つを選ぶことは意味がありません。実のところ親が思っていることは,人として育って欲しいということでしょう。では人としての育ちとはどう理解しておけばいいのでしょうか?

 物事を理解する手段は,疑問符5W1Hに答えていくことです。育ちとはどう理解すればいいのか,そのために6つの問を設けなければなりません。誰(WHO)が育つのか? 何処(WHERE)で育つのか? 何時(WHEN)育つのか? 何(WHAT)が育つのか? 何故(WHY)育つのか? どのように(HOW)育つのか? さらに,人としての育ちであるという要件から,6つの問それぞれに対して,子ども自身の育ちと社会的な人としての育ちの二面(自・他)を解き明かしておかなければなりません。結果として,12の問と解答が必要になります。子育ち12指標はこのような分類から生まれました。それぞれについて,概略を述べておきましょう。

1.誰が育つのか?
【第1指標】(WHO-01)
 自我の誕生:物心つく頃から,冷静に自分を見るもう一人の自分が誕生してきます。できない自分に腹が立つのはもう一人の自分です。お腹が空いたなと空腹を説明できるのはもう一人の自分がいるからです。もう一人の自分がいなくなるとき,心神耗弱状態になります。我を忘れるのはもう一人の自分がパニックに陥るのです。したがって,自分ともう一人の自分が手をつないでいる状態が健全な状態です。子育ての場面では,「子どもが自分で考えているか?」という確認が必要です。親が言うようにしている子どもは,もう一人の子どもが育っていないことになります。

【第2指標】(WHO-02)
 自他の連結:もう一人の自分が自分だけを見るのではなく,他者を同時に視野に入れることで,もう一人の自分が人として育っていきます。もう一人の子どもが誕生すると母離れをしますが,そこに母と夫婦としてつながっている父親を見つけます。母子関係を薄めながら父母と共に家族という新しい関係に入ります。自分を父親と同じ母とは違う別個の存在と認識していきます。自分を第三者の立場から見つめることのできるもう一人の自分が育っていきます。その結果として,見られる自分という自意識を持つようになります。

2.何処で育つか?
【第3指標】(WHERE-01)
 居所の確保:種が畑でなければ育たないように,子どもにも育ちにふさわしい居場所があります。居場所といっても本当の場ではなく,気持ちのつながりです。それは安心という居場所です。不安になれば閉じこもってしまい,育ちどころではありません。子育てでは,少なくても孤立の不安を解消してやらなければなりません。監視されているのではなく,見守られていると思わせる必要があります。そのためには,子どものダメな所をつつくのではなく,できた所を見つけて認めてやることです。簡単に言えば,叱りたいのは半分にして,ほめにくくても無理してほめようと努力するのです。

【第4指標】(WHERE-02)
 共存の確信:生まれてきて良かったという思いを持たせることができたら,子どもは育ちに向かいます。ひとりぽっちで誰からも相手にされないということは,生きていく意欲さえ失わせます。自分は一人ではない,それは人と信頼関係があり共存しているという確信です。最初の信頼関係が家族,次に友人関係,ご近所の人間関係へと広がっていきます。自分がいることで,誰かの役に立っている,誰かが喜んでくれる,それが自分の存在を喜ばせてくれます。もう一人の自分が自分を認めるためには,自分と他者の良好な関係が不可欠なのです。

3.何時育つのか?
【第5指標】(WHEN-01)
 感性の表出:自分の五感で感じたことを言葉で表現できたとき,感覚と知能が連結します。極言すれば知能とは言語感覚です。分かるというのは,言語で物事を分けて整理していくことです。普段の生活でもきちんと整理する態度が身につくほど,知能は洗練されていきます。普段の会話で正しく話しているかどうか,曖昧な表現や,単語による捨て台詞しか語れないようでは,深い知恵を構築することはできません。もう一人の自分が誕生して,自分をどういう人間か理解するのも,言葉が必要です。その上で自己紹介が可能になります。もう一人の自分が育つ糧,それは母から教えられる母語という第二のおっぱいなのです。

【第6指標】(WHEN-02)
 共感の完結:人は知恵を分かち合うことで賢くなります。学びが教科書という言葉=文字を使っているのは,共通語を作ってきたお陰です。言葉がコミュニケーションの道具であるということは人間にとって最重要なことです。信頼関係もお互いに分かりあえていることが基本であり,その背景には言葉による共感が機能しています。子どもは暮らしの中でさまざまな体験をします。その体験が言葉によって表現できたとき経験として定着していきます。経験知を積み重ねていくことで,もう一人の自分は賢く育っていきます。言葉が貧弱であることは,無知であることにつながります。豊かな言語生活,それが人としての成長の道です。

4.何が育つのか?
【第7指標】(WHAT-01)
 能力の発揮:人は自分が思うように行動できなければなりません。自立するということは,最低限自分のことは自分でできることです。そのためには自分の力を伸ばす必要があり,それが普通の意味での育ちです。人として自分を磨いて能力を発揮していくのが生きることになります。自分の能力を適正に見極めておかなければなりません。過小評価すれば臆病になって閉じこもり,過大評価すれば無茶をして暴走します。いずれも育ちの道から逸脱することになります。自分の能力ぎりぎりのところで努力する苦しさを乗り越えたとき,新しい世界を手に入れることができます。文字を覚えたときの世界の広がりを思い出すべきです。

【第8指標】(WHAT-02)
 価値の選択:人が能力を発揮しようとするとき,何をなそうとしているのかという行動目標があります。それが自分だけに関わることであれば,注意する必要があります。端から見て迷惑な,自分勝手な行動になる場合があります。ポイ捨てなどのマナー違反です。して良いこととしてはいけないことがあります。少なくとも迷惑をかけないこと,できれば人の役にも立つことでなければなりません。社会的な価値に照らして認められる行動を選択する能力が求められます。美しい行動,それは人が共に生きることに合致する行動なのです。金銭的な物欲に頼っていると,結局は能力の発揮の向きを間違えて身を滅ぼすことになります。

5.何故育つのか?
【第9指標】(WHY-01)
 可能の開拓:人は生きていく上でさまざまな環境に適応しなければなりません。そこには,いろんな形の困難が待ちかまえています。おいそれとはできそうもないことも出てきます。そこであきらめずに踏みとどまる辛抱ができるかどうかが大事になります。辛抱しながら,自分にできることを見つけコツコツとやり抜いていく道を選ぶ必要があります。自分にできることをする,それが適応することになり,壁を通り抜ける新しい可能性を開拓することにつながります。忍耐を道連れにしながら努力を継続をするという,時間の流れの中に生きる強さを発揮しなければ,生きているという喜びも得られないことでしょう。

【第10指標】(WHY-02)
 希望の発掘:日々を漫然と生きていると,虚しさがわき上がってきます。展望を持っているから,今日を心安らかに生きていくことができます。一日の終わりに寝付くとき,明日の朝起きるのが楽しみな人は幸せです。子どもにとっては明日への夢とは,成熟するということです。その思いが育ちに対する意欲の根源です。明日もまた友達と遊ぶことができる,そんな無邪気な明日への期待が子どもを元気にします。どんな些細なことでもいいから,明日に楽しみを見つけている子どもはぐんぐんと育っていく力を発揮します。魅力ある大人が側にいれば,子どもは未来に対して明るい希望を抱くことができるはずです。がんばれ大人たち!

6.どのように育つのか?
【第11指標】(HOW-01)
 反省の豊饒:人に成長していくということは,本来持ち合わせている能力を開発し伸ばすことです。できなかったことができるようになる,知らなかったことを知るようになる,分からないことを考えられるようになることです。0からの出発です。最初からできるわけではありません。失敗にめげずになんとかしようという練習を通して,自分の機能を高める必要があります。失敗してもいい。大事なことは失敗を繰り返さないために,失敗を反省し原因を分析することです。その育ちのプロセスを大切にするために,子どもの失敗は育ちのスタートと受け止めてやらなければなりません。失敗を越えるのが育ちなのです。

【第12指標】(HOW-02)
 挑戦の結実:自分に欠けていることを見極めたら,次の段階は学ぶことです。周りの仲間や先輩の様子を見て学ぶのです。見習うということが学びの最も基本です。学校の授業も先生を見習うという形式です。遊びでは兄や姉のまねをして,いろいろなことを覚えていきます。異年齢の中で遊ばないと学びが始まりません。育ちは知恵や能力を受け継ぐことです。もう一人の自分が学べば自分に対して試したくなります。身につけるための挑戦です。失敗・反省・学習・挑戦の4サイクルがクルクルと動いているとき,育ちは進行しています。失敗しても「気にするな」という励まし,達成したら「よくやった」と励ましてください。

 子育て12指標は,子育てのトータルを包括する指標です。健康における栄養素と同じで,健全な育ちにはそれぞれをまんべんなく満たしておくことが大事です。もちろん,すべてに満点といったゴールがあるわけではありません。12指標に向かって日々精進していくのは,大人になっても続きます。そういう点では,親自身にとっても12指標は適応するものかもしれません。いずれにしても,バランスよく育ってくれるように,目配りをしてやってください。



 子育て羅針盤の第29版は,今号で完了します。親は指導しているつもりでも,子どもの立場に立てば干渉されている,そういった類のすれ違いのあれこれについて考えてきました。新年からの第30版では,12指標に沿った子どもの健全なイメージについて,単刀直入に述べていく予定です。子どもはいろいろな姿を見せてくれますが,それが今現在は完全な姿ではなくても,伸びる方向がちゃんとしていることを見届けてやるだけで,子どもは育ちやすくなるはずです。

 和歌のことを「みそひともじ」(三十一文字)といいます。三十を「みそ」と読んでいます。この流れでいくと,三十日をみそかと読むことができます。そこから,みそか(晦日とも書く)とは月の最後の日という意味になっていき,大晦日は一年の最後の日を表すことになりました。お正月を迎えると三が日の間はお節料理をいただきます。一家の台所を預かっている奥様が炊事をしなくていいようにという思いやりでもありました。昔のことです。


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