*** 子育ち12章 ***
 

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「第 30-01 章」


『子育ちは 自分育てる もう一人』


 ■子育ち12イメージ■
『子育ち第1指標』

 経験したことがないことはできません。育ちの鉄則です。考える子どもに育って欲しいのなら,考える経験をさせなければなりません。そのために,塾にやって勉強させますか? 多少は役に立つでしょうが,本当の意味で考える力は引き出せません。かえって塾の時間だけ考える癖が付いてしまいます。経験は日常の暮らしの中にたくさんあるので,それを利用しない手はありません。考えざるを得ない経験を与えるようにしませんか?

 どうすればいいのでしょう? 簡単に言えば,子どもがちょっと困ったなと思うような状況に置くようにすればいいのです。何かができないで立ち往生しているとき,あっさりと手を貸して解決してやらないことです。人は何かに行き詰まったときに,考えようとします。自分の置かれている状況,自分の能力をもとにして,何をどうすればいいのかを一所懸命に考えます。その小さな体験を積み重ねることが,考えることのできる子どもを育てます。

 人は生きていく上で常に選択を迫られます。朝起きるとき,今起きるか,もうちょっと寝るか,選択します。出かける前の忘れ物チェックをするかどうか,選択しなければなりません。そして,選択には決断が伴います。自分で決めなければなりません。あれこれ言われている間は,自分で決めることはしなくて済みます。とても楽ですが,それは支配されているということです。この状態は,育ちには非常にふさわしくない状態です。

 子どもの育ちにとって見失われている大事なポイントがあります。「子どもの育ち」と何気なく言っていますが,子どもというのはいったい誰のことなのか,きちんと考えておかなければなりません。子どもとは誰か? そんな訳の分からないことを尋ねられても? 少し説明が必要ですね。遊びの中で子どもはヒーローになりきります。昔風に言えば,ヒーローが乗り移ります。そのことを「もう一人の子どもがヒーローになって,自分を支配している」と考えてみることにします。

 お年寄りに惚けるということが起こります。認知症ですが,自分を適正に制御するもう一人の自分が眠ってしまうことと考えてみます。我を忘れるという状態を,もう一人の自分がフリーズすることと考えるのです。昨日の自分,明日の自分を見ることができるのは,もう一人の自分なのです。育てようとしているのは,もう一人の子どもであると考えてみませんか。自分のことが好きになるのは,もう一人の自分です。物心が付くとは,もう一人の子どもの誕生であり,自我の誕生なのです。



【指針30-01:自分で考えて決断することができる子ども!】


 ■子育ち支援メモ■
『子どもなりに考えさせましょう』

 自分のことは自分で決める,そう言って反抗してきます。決めているのはもう一人の子どもです。反抗は親の支配から離れて,支配権をもう一人の自分が獲得しようという,自立への旅立ち,つまり自我の誕生のプロセスなのです。もう一人の自分が自分のことを決めるためには,あれやこれやを考えなければなりません。「余計なことは考えなくていいの」と考えることをさせないでいると,決めることもできずに,もう一人の子どもは眠らされてしまいます。

 もちろん,子どもに何もかも任せて「自分で考えなさい」と放り出してしまうのは行き過ぎです。子どもが考えることができる範囲に止めておくことが大事です。子どもの考えることは危なっかしいものです。子どもが考える力を見極めて,無理なことは親が肩代わりをしてやらなければなりません。幼いうちは自分の力を弁えずに無茶をすることがあるので,目を離さないようにしなければなりません。大変でしょうが,親でなければしてやれないことなので,しばらくの辛抱です。

 大切なことは,子どもの考える力をきちんと見極めることです。いつまでも何もできないと思いこんでいると,見誤ります。至らないのは仕方のないことであり,だからといって考えさせないようにすることがあっては,育ちの支援ができなくなります。日常の暮らしの中で子どもが出会う小さな初体験を見守り,もう一人の子どもが目覚めて考えるように導いてやればいいのです。「こうしなさい!」と余計な干渉をするのではなく,「こうしたら?」と指導をしましょう。

 しつけをするときは,子どもの意向と違うこともあります。そういう場合,できるなら選択肢を与えてみてください。「どっちにする?」。子どもに考えて選ぶ機会を与えましょう。指導をする場合,命令のように言うことを聞かせようとすると,それは干渉になります。言うことを聞くかどうか,その決定権をあくまでも子どもに与えるのが指導です。「どうしようかな?」と考えさせるためです。もう一人の子どもを育てる指導とはとてもまどろっこしいものなのです。

 子どもが大きくなれば,任せる部分が中心になってくるでしょう。自分で決めたことには,その結果に対する責任も持つようになるでしょう。もし親に言われてしたことがうまくいかなかったとき,親の責任を問うことができるので,自己責任という育ちもできなくなります。逃げる育ちをするようになります。もう一人の子どもが自分で決めて行動することで,良くても悪くても結果を受け入れる経験をすることによって,もう一人の自分が自分を信じる,自信が育まれます。



 子どものことはもう一人の子どもに任せることが,第1の子育て支援です。ところで,子どもはわがままなので,自分勝手な決定をすることがあるはずです。自己完結していることについては,自己責任を負えばいいのです。でも,そうではない場合は困ります。子どもといえども社会の一員であり,もう一人の子どもは社会性を育てていかなければなりません。もう一人の子どもが社会の中での自分の立場,つまり適正な自意識を獲得しなければならないのです。(以下次号)

 長かった冬休みももう終わりです。子どもたちは今の年度を締めくくり,次の年度にバージョンアップしていきます。夏と冬の育ちの差が樹木の年輪を刻むように,子どもたちもいろんな体験を積み上げて育っていきます。いろんな体験ということに留意しておいてください。大人は日々決まった行動をすればいいのですが,子どもはそうはいきません。季節の行事や地域の行事,学校でのイベント,多種多様な人々との交際,豊かな環境での体験が育ちには不可欠な要素なのです。


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