*** 子育ち12章 ***
 

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「第 30-03 章」


『子育ちは 気持ちの通う 人が居て』


 ■子育ち12イメージ■
『子育ち第3指標』

 もう一人の自分が,自分を特別な存在ではなく,他者と同じ大勢の中の一人に過ぎないと考える育ちが第2指標です。ところが,そのままではとても居心地が悪い上に,自立の途上である子どもにとっては不安な気持ちにおそわれます。雑踏の中で人は孤独感を味わうと言われますが,それは誰とも何のつながりもないことを知っているからです。子どもは不安になれば,育ちを止めて閉じこもります。育ちのスイッチは安心がオン状態ですが,それはいったいどういうことでしょうか?

 好きな人とお揃いであることはうれしいものです。子どもは友達と同じものを欲しがります。同じモノを持つ,同じ番組を見る,同じ趣味である,そんな割り符を持つことで,仲間としてのつながりを得ることが出来ます。自分はひとりぽっちではないという安心感,それは普段ほとんど気にも留めることはありませんが,実はとても大きなことなのです。例えば,シカトされてつながりを奪われてしまったとき,そのつらさは生きる力をも奪うことになります。

 不幸にも虐待を受けている子どもが,それでも親を嫌いにはならないというのは理解しにくいことです。自分がわるい子だから親が叱ってくれていると,もう一人の子どもが思いたいのです。いたずらばかりして親を困らせる子どもがいます。いたずらをすると親が自分に注目していると感じているのです。逆にほめられた経験があると,もっとほめられたいと繰り返してきます。どんな時でも,子どもは母親と気持ちのつながりを持とうと願っています。そうしないと不安になるからです。

 子どもは後から赤ちゃんが生まれるという状況に遭遇すると,自分を赤ちゃんに戻すことがあります。構ってもらうための苦肉の策です。母親の関心が赤ちゃんにあるのなら,自分も赤ちゃんになればいいと単純に考えています。自分がお兄ちゃんやお姉ちゃんであることが母親の関心ではないと思わされているからです。あなたはあなたのままでとても大切だという母親からのメッセージを受け取ることが出来れば,もう一人の子どもは今の自分でいた方がいいと安心することが出来ます。

 気持ちが落ち込んでいる人がいたら,しっかりと抱きしめてやることでしょう。人の懐は温かいのです。具合が悪い人がいたら,そっと手を当てます。手当はぬくもりをお裾分けして元気を引き出します。子どもにとって母親の懐は究極の心のふるさとです。文字通りの触れ合い,スキンシップは幼い子どもには不可欠な体験です。十分な触れ合いがあれば,安心して親離れをして育っていきます。ただし,いつでも逃げ込める場所として母親の懐は開かれていると信じさせておきましょう。



【指針30-03:居所を見つけ安心することができる子ども!】


 ■子育ち支援メモ■
『人は温かいという経験をさせましょう』

 もう一人の子どもが育っているといってもまだ未熟なので,自分を相対化出来る範囲は狭いものです。特に,大人の世界のことは未経験な世界なので,どうしても自己中心な感じ方をするしかありません。例えば,両親が気まずい雰囲気になっているとき,その理由を知るよしもありません。子どもは自分が何かいけないことをしたからではないかと勘ぐります。あれかこれかと考えあぐねて,どうすればいいのかと思い悩むようになります。全く関係ないのに! 子どもの安心は夫婦仲の良さから。

 子どもが安心して育つことの出来る居場所とは,現実に居る場所ではありません。豊かな人とのつながりです。豊かなとは? それは多様性です。父母とのつながり,異年齢の友達とのつながり,周りの大人とのつながりです。今,子どもたちの育ちの場がとても貧弱になっています。特に,大人とのつながりがほとんどありません。あるのは先生や指導者といった大人です。親でさえ先生擬きになって見張っています。人としてのつながり,見守られているという温かなつながりが必須なのです。

 車を運転しているとき,パトカーが後ろについてきたとしたら,安心しますか,それとも不安ですか? 夜道を歩いているとき,後ろから足音がついてきたとしたら,安心ですか,不安ですか? 参観日に後ろから親に見つめられている子どもは,安心しているでしょうか,それともビクついているでしょうか? 自分を見ている相手をどのように意識するかで,安心と不安は逆転します。日頃の出会いの経験からこの人は安心していいと信じられる,そんな人たちの中で育つことが出来ます。

 ご近所の大人たちに囲まれて,子どもは育っています。大人たちは子どもを見ているのですが,親とのつきあいがないとただ見ているだけになります。挨拶程度でもいいですから日頃交わしていると,優しい目で見守っていただけます。周りの大人たちを子どもの味方に変えるのは,大人の普通のつきあいをすることです。子どもの立場から見れば,自分は気に掛けられているという輪の中にいると実感できるはずです。逆の場合は,誰からも相手にされていないという空気が,居場所の無さということになります。

 子どもたちの友達関係がとても狭くなっています。いろんなタイプの友達の輪を持つようにした方がいいでしょう。たとえクラスで友達関係が壊れても,他に友達の輪を持っていれば,落ち込みは少なくて済みます。地域の子ども会や塾仲間,スポーツの仲間,クラブの仲間などがあります。同年齢にこだわらず,年下でも構いません。もしそれも出来ないなら,ペットでもいくらかは友達の代用にはなります。虚像にすがるのではなく,生きたものとの関係を持つ経験が不可欠です。



 子どもの居場所であり,育ちの場である温かな人間関係を持つことが,第3の指標でした。ところで,人とのつながりといっても,ただ知り合っている,遊び仲間といった程度のつながりだけでは十分ではありません。深いつながりを持つことが大切です。深いとは? それは共に生きていること,喜怒哀楽を共有できることと言うことができます。面白いことだけでつながるのは,心が通う間柄ではありません。親友を得るためには,苦い体験を共有することも必要になります。(以下次号)

 モンスターペアレント? 不気味な怪物のような親という意味でしょうか? 嫌な呼称が出来たものです。理不尽な物言いをする親が現れたという社会の認識があるようです。子どもに関することは何を要求しても構わないという誤解のあることが危惧されています。明らかに親としてやるべきことを社会に要求する態度が胡散臭いという印象があります。社会は子育てを支援することまでしかできません。子育ては親の義務であるという世間の常識,その共通理解から教育は始まります。


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