*** 子育ち12章 ***
 

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「第 30-05 章」


『子育ちは 喜怒哀楽を 言葉にし』


 ■子育ち12イメージ■
『子育ち第5指標』

 子どもが社会を安心できる居場所であると認めるのは,人間関係の中にある信頼を通してであるというのが,第4の指標でした。その人間関係を組み上げているのが言語です。人としてのあらゆることが言語という記号によって可能になっています。もう一人の自分は言葉を取り込むことで知恵を獲得していきます。その知恵が自分に向かうとき,もう一人の自分は自分を理解し他者を理解し,社会で自分を生かすソフトを作り上げていくことが出来ます。

 言葉の習得は,先ずは音声言語から始まります。聞く話すという動作による言葉の世界に暮らしていると,一緒に暮らしている大人と同じ感情を抱くとき,特定の音声を聞くことになります。例えば一緒に外に出たとき,「さむい」という母親の叫び?を聞きます。自分が感じている感触と関連づけてみます。目の前に現れた動物に驚き指差しします。母親が「いぬ」というので,自分で「いぬ」と言ってみます。母親の声との重なりを耳で確かめます。こうして言葉の存在を感じ取っていきます。

 「あれは何?」。見たものが何かという疑問,その最初の答は「名前」という言葉です。環境を理解し記憶するためには,ラベル付けが必要です。名前が付けられることで,モノを区別できます。言葉で分けること,それが分かることになります。また,子どもたちがお遊戯を好きなのは,身体の動きと言葉が連結しているので,とても分かりやすいからです。さらに行動に伴う感情表現も言葉とリンク付けされていきます。こうして実世界が言語世界に翻訳されていきます。

 子どもは周りに飛び交う言葉を聞き,その意味を推し量り,まねをして話してみて,どう伝わるかを確認します。このような言葉の習得能力を子どもは持ち合わせています。人間を含めた環境との交流の手段を持つことが,生きていく上で必要な資質なのです。母の言葉としての母国語によって,もう一人の子どもは自分と環境の交流をすることが出来ます。母はそばにいるときは寸暇を惜しんで,子どもが生きている世界に必要な言葉をしっかりと口移ししてやらなければなりません。

 人は感情の動物という一面があり,その生活には随所に喜怒哀楽が埋め込まれています。その感情表現を言語化できなければ,共感を通した社会生活を送ることが出来なくなります。特に欲望に起因する感情は極めて個人的,自己中心的なものなので,生のままの噴出はもう一人の自分を押しのけてしまい,必ずトラブルを引き起こします。いったん言語を主とした形に整えようとする作業工程を経ることによって,もう一人の自分の抑制が可能になります。誰かに話すことで気持ちが安らいだという経験は,そのよい例です。



【指針30-05:思いを正しく表現することができる子ども!】


 ■子育ち支援メモ■
『気持ちを話すという経験をさせましょう』

 言葉は最も基本的な生活文化遺産です。年長者から若年者に確実に伝授しなければなりません。人が生きていく社会は先人たちが築いてきたものであり,そこで必要なノウハウは言葉として凝縮されているからです。世の中が進歩すると,新しいモノや事柄が生まれますが,新しい言葉が必ず付随します。その言葉を知らないと,用をなさなくなります。子どもにとっては初めて出会う教科書の中の言葉をきちんと理解することで,生きていくのに必要な知恵が身につきます。

 話し言語だけでは足りなくなって,書き言葉が使われるようになります。文字は記録できるので,時と所を越えて知恵が広く共有できることになりました。そこで,聞く話すという力の他に,読み書くという力が求められるようになり,子どもたちに教育を受ける権利が与えられ,親に教育を受けさせる義務が課せられています。絵本から始まり小説に進み,年代にあった文字文化に浸ることで,もう一人の子どもは主人公の感性を表現する言葉に出会い,自分の身に重ねて覚えていきます。

 読書の良さについて5年生が考えました。「本の中に入ってしまう」。「主人公が自分のような気になる」。「知らない世界にいける」。「夢をあたえてくれる」。「楽しくなる」。「感動する」。「いろんなことがわかる」。「歴史のことがわかる」。「そうぞう力がつく」・・・。もう一人の子どもが主人公に同化し,物語の世界に入り,いろいろな喜怒哀楽の経験をし,人の世界に埋め込まれている知恵を受け止めるという読書の効用を,子どもたちはきちんと理解できています。

 知性を,頭で考える知性=IQと,心で感じる知性=EQの二つに分けて考える説があります。欧米では,社会人に不可欠な知性は心の知性であるとして,感情と社会性に関する学習(SEL=Social Emotional Learning)に注目しているそうです。もう一人の自分が自分や他者とよい関係を持つために,自分の感情を見つめ,適切な言葉で表現し,効果的に自分の感情を統御できることを目指します。大事なポイントは,多様な感情体験とそれを表す言葉を学び記憶しておくことです。

 言葉の習得を測る目安として,次のような例があります。(1)適切な言葉づかい(あいまいな表現をしない)。(2)言葉の理解力の深さ(おとなとの会話が理解できる)。(3)すぐれた会話能力(ポンポンと,軽快な返事が返ってくる)。(4)思考力の深さ(何か話すと,じっと考える様子を見せる)。(5)微妙な表現力(デリケートな問題について,巧みな言い方で,それを表現する)。(6)読書力(速さ,流ちょうさを含む。自然な抑揚をつけて本を読むなど)。参考にしてみてください。



 自分の思いを表現することが,第5の指標でした。その表現である言葉遣いは,話す相手によって変化します。同級生との世界にしか住んでいないと,そのことを知る機会を失います。家庭でも親との会話を通して大人相手の話し方をしていれば,改まった話し方を自然に覚えることが出来ます。その先にある他者に対する敬語や丁寧な話し方,挨拶の仕方,言葉の選び方,発音の仕方,態度の持ち方,場にふさわしい話題の選び方など,それらを身につけるのは経験を積むことです。(以下次号)

 子どもたちに夜更かしの傾向があります。親は「子どもが眠りたがらない」と,子どものせいにしています。生活のリズムをしつけるのは,親の責任です。放置せずに,寝るまで繰り返し,忍耐強くしつけをしなければなりません。そのまま放置していると,状況はより悪い深みに落ち込んでいきます。遅寝をするから,目覚めが悪く,食事をしない,ぐずぐずする,午前中の授業が頭に入らない,分からなくなる,学校が嫌いになると悪循環になります。早めのしつけが楽です。


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