*** 子育ち12章 ***
 

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「第 30-13 章」


『子育ちは 心の憂さを 晴らしつつ』


 ■子育ち12イメージ■
『子育ち第12指標』

 人が集まって何かよいことをしようというとき,「それはいい,皆でやろう」といいながら,陰で何となく自分を外すための理由を考えていることがあります。総論賛成,各論反対という流れはありふれたことです。皆で清掃をしているとき,汗をかきながら懸命にする人がいれば,汗をかくほどする気はないという人もいます。授業を熱心に聞く子どもがいますが,自分の話を私語することに熱心な子どももいます。空気が読めないという"KY"が有名になりましたが,空気を読んで自らを参加させたいと望むもう一人の自分が育ち忘れているのかもしれません。

 休日前の夜,いつもは川の字で寝ているのに,どうして今日は違うのと子どもがすねています。居場所が変わると子どもは落ち着かなくなります。眠りが浅くなり目が覚めやすくなるかもしれません。なぜだか分からないけれど不安になることがあります。そんなとき,明日を楽しみに待つという明るい気持ちがあれば,バランスが取れて安定します。子どもに不安を与えないようにし続けることはできません。時には仕方のないこともあります。そんなときは明るい期待を与えるようにして,収支を合わせておくようにします。そうすることで,不安を乗り越える術を身につけていくことができます。

 夫婦とは冷静に考えると他人です。元は他人なのに,親よりも気持ちが通う不思議な結びつきです。そう信じているうちはいいのですが,時折やはり他人と思ってしまう瞬間があるかもしれません。でも,他人だからこそ愛し合うことができるということを思い出して続いていきます。親子は他人ではありません。特に母親にとって子どもは分身であり,愛すべき対象と思われています。愛さなくてはいけない,そう思い込むと母子ともに辛くなることがあります。子どもにとっては重い荷物になることもあります。子どもは親を乗り越えて育とうとします。そのつらさを吸い取ってやることが,親としての愛になります。

 できちゃった結婚という言い方が耳に入ってきます。それが不謹慎であると感じていない風潮には薄ら寒さを覚えます。父親が責任を取って生まれてきたと知ったら,子どもはどう思うでしょうか? 親はさすがにあからさまには言わないでしょうが,何となく素振りに現れたり,周りの者がつい冗談めいて言ってしまうかもしれません。子どもにとっては,自分が親に望まれて生まれた来たという一点が絆となります。親との小さなすれ違いがあるとき,自分なんかいない方がよいのではと考えこむことがあります。そんなとき,望まれた子どもであったと信じていることが心の支えになります。できちゃった,それは封印すべきです。

 人の心が読めたらいいなと思うことがあるでしょう。でも,もし自分の心が読まれるとしたら,それは恐怖になります。人は頭の中であれこれ考えますが,その中には言葉には出さない、出せないものがあります。人は自分の心のままに生活することはできません。子どもは親に対してもそんな二面性を感じ取っています。お父さんは怖いときもあるけど優しい,子どもはそう言いますが,そうであって欲しいという願いが強いのです。子どもが人の心の陰に気付いたとき,不安が募ります。親は信じられるとしっかり覚え込ませておけば,どちらかと言えば人を信じていいと思うようになります。



【指針30-13:明暗の心情を調和することができる子ども!】


 ■子育ち支援メモ■
『健全な心の葛藤という経験をさせましょう』

 ものやお金を貸し借りすることがあります。貸したお金を返して欲しいと思っていても,返せと言いにくいこともあるでしょう。返してくれたとき,ほっとしながらも「忘れていた。急がなくてもよかったのに」とつい言ってしまいます。そんな矛盾も気遣いの一つとして身につけています。もっとドライに割り切って正直に言えばいいという考え方もあります。契約社会でははっきりさせるべきでしょうが,友達つきあいという領域ではそうもいきません。お互いによかれと願う思いが必要な関係もあります。正直だけではうまくいかないこともある,そのようなことも経験しなければなりません。

 子どもたちの身体発育はよくなって手足は長くなっていますが,気は短くなっています。心の栄養がバランスを欠いているのでしょう。食事が甘く軟らかいものに片寄っているように,経験も優しく心地よいものに片寄っています。固いものや苦いものを経験しなければ,育ちはひ弱くなります。ひ弱いというのは,気持ちが浅くて余裕が持てないということです。些細なことで限界に達してしまうので,怒りの感情のスイッチを入れてしまいます。物事はそうたやすく思い通りに運ぶものではないということを,経験を重ねて学習できる環境を整えることが大切です。

 不甲斐ない自分,情けない自分に直面することがあります。弱い自分に嫌気がさしてしまうと,辛くなります。そんな自分を見せたくなくて、強がりを言ったり,ふてくされてみたりします。いじめられないように,ひょうきんさでごまかそうとします。子どもであっても自我が育てば,隠された思いを持たざるをえなくなります。ひっそりと抱え込んでしまうと,だんだんと深みにはまっていきます。こんな自分は嫌だと,思いっきり泣く場所があれば救われます。弱くてもいいんだよという拠り所があれば,一時避難ができます。暗い気持ちもはき出していい,受け止めてあげるという母親の懐が不可欠です。

 子どもは徐々に親の手のひらからはみ出していきます。子どもには子どもの社会生活があるからです。親の言うことよりも友達の言うことを優先しようとします。それが親には反抗期と映ります。子ども社会の価値観は大人社会のそれとは質的に違っています。親が家庭の約束と社会での約束のどちらを優先しているかということと同じです。仕方がないというジレンマを経験します。親がいつまでも子どもを支配しておこうとすると,子どもは子ども社会の中での立場を失うことも出てきます。それを避けるために,どうしようもなくて嘘をつくかもしれません。見え透いた嘘であればいいのですが,注意しておくことです。

 いい子に育ってくれたら,それは親の願いです。子どもは親の気持ちを受け入れようとして,素直にいい子に育ちます。寂しいときもメソメソしたら親が心配するからと,じっと堪えています。その健気さに気付いてやることができたらいいのですが,暮らしに追われてバタバタしているとつい見過ごしてしまいます。暗い表情も見せないので,親の方が甘えてしまいます。歳を重ねていくにつれて,いい子である条件があれもこれもと増えていきます。見せかけている自分と本当の自分の違いがドンドン広がります。燃え尽きるしかなくなったとき,やっと自分を取り戻すことができます。普通の子であれと・・・。



 この号で第30版を終わります。子どもの育ちを考える12指標をワンクールとして,30シリーズまで繰り返してきたことになります。必ずしも読みやすいマガジンではないのに,熱心に購読をしていただいている多くの方のお陰です。この子育て羅針盤は,マニュアルではありません。子育てに迷ったとき,進む方向を見定めるために皆さんがご自分で使いこなして頂くためのものです。子どもが育つとはどういうことか,ご自分なりの子育て観を作る上でのモデルとしてご活用ください。次号からは第31版に入りますが,これまで同様に12指標を解き明かしてまいります。おつきあいくだされば幸いです。

 社会は,人のホンネを半分に割り引いて,タテマエによって動いています。したくないけどしなくてはならないことがたくさんあります。どうして自分だけがしなくてはならないのか,不公平ではないかと思うこともあるでしょう。だからといって放り出すこともできません。どうせするならいやいやするより前向きにする方が気持ちが楽になります。自分なりに工夫をするチャンスがあると思ったり,やり遂げた満足感を手に入れたり,あるいは感謝されたり,いろんないいことを見つけるようにすればいいのです。ものは考えようです。自分で自分を追い詰めるのではなく,開いていけるような経験に導いていきましょう。


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