*** 子育ち12章 ***
 

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「第 3-09 章」


『育児する ママの意気地が 空回り』


 ■はじめに

 闇に舞う蛍の光,色鮮やかに装う鳥の羽根などは目を楽しませます。
 その化粧は全部に備わっているのではなく,雄だけですね。
 異性に選んでもらわなければならない立場の弱さがあります。

 弱いものは弱いものなりに健気に生きようとしています。
 弱いからこそ意気地を示そうとするのです。
 決して強くなることが意気地のあることではありません。

 幼稚園や学校に行けない子は意気地のない子でしょうか?
 いじめられても親に言えない子は意気地なしでしょうか?
 虫を怖がり触れない子どもは意気地がないのでしょうか?

 どの子もみんな,自分を守ろうと精一杯生きています。
 大人から見れば,何の解決にもつながらない無駄なことかもしれません。
 有意義なことをしようとしないのは,その仕方をまだ知らないだけです。

 子どもはいつも自分の弱さと直面し格闘しています。
 その最中にはなかなか大人の思っているような結果は出てきません。
 意気地という気持ちが形になるまでには時間がかかるものです。



【質問3-09:あなたは,お子さんの意気地無さが気になりませんか?】

 《「意気地無さ」という内容について,説明が必要ですね!》


 〇叱る意気地?

 病院の待合室で大きな声で話したり,走り回っている子どもがいます。母親らしい人は一応注意をしますが,子どもは聞きません。それも無理がありません。お隣の方とのおしゃべりの合間に注意しているのですから。止めさせるべき時はきちんと止めさせるケジメがついていません。叱る意気地がないと思われます。

 親が言っても聞かない子どもを,誰が注意できるでしょうか? 見かねて下手に注意でもしたら,「自分の子に要らぬ世話」とにらまれます。それほど子どもが可愛いのなら,他人に後ろ指をさされないようにしつけた方が賢明ですし,お互いにハッピーです。

 「あなたが騒ぐから,あのおじさんに叱られたでしょ。おとなしくしなさい」。おじさんは敵役にされてしまいますが,それで静かにしてくれるのなら,「まあ,いいか」とあきらめます。でも,このママはちょっと勘違いをしているかもしれません。おじさんは子どもに注意したのであって,決してママのしつけがなっていないと非難しているのではないのに,ママは自分が叱られたと受け取ってしまったようです。

 本当は自分に代わって叱ってくれたおじさんに,「ありがとうございました」とお礼の一つも言えたら,素敵なママになれるでしょう。そういう意気地を子どもに見せてあげてはいただけませんか?

・・・気の乗らないことをするときに意気地が必要です。・・・


 〇意気地ある日々?

 子どもは自分から大きくなりたいという気持ちがないと育てません。もう一人の子どもがそう決意するように導かねばなりません。ところで,肝心の導き手であるママが《一日が暮れりゃ寝るだけ明日が来る》とか,《昨日生き今日も生きてる明日も多分》という具合に日々を送ってはいませんか? それが子どもたちに伝染しているようですよ。

 大人になると毎日が同じ日です。一日,一週間は平凡に過ぎていきます。一方で,「明日が来なければいいのに」と願ったりすることもあります。でも,明日はお構いなしにやってきます。

 「明日が来る」と思えば,自分の明日に無頓着になったり,追い立てられるようになったりします。「明日を迎える」と考えれば,気持ちが楽になります。主体性とはどんと来いと意気地を示す態度のことです。明日を楽しみにできたとき,大人は充実感を味わい,子どもは育ち続けます。

・・・意気地無く待つだけでは何も得られません。・・・


 〇先の心配?

 死に神は後ろからやってきます。何か恐ろしいと感じたときに背筋がぶるっと震えるのが,その証拠です。紋付きには背中に家紋を染め上げます。あれは背中から取り憑こうとする不幸に,「こちらは表ですよ」と家紋を見せてごまかすためなのです。

 ムーミンの友だちに「無駄だ,無駄だ」と口癖のように語るおじさんがいました。どうせ人間は死ぬんだから何をやっても無駄だということらしいです。子どもには将来のことを心配してあれこれ指導をしていますが,大人自身は自分の将来である死ぬことから逃げています。考えないようにしています。だって,それを考えたら生きられません。

 死に神がどこまで迫っているのか分からないから,安穏と生きられるのが私たち凡人でしょう。でも,逃げているだけではつまらないですね。明日に向けて自分の可能性を求めていくことが,唯一の救いになるでしょう。自分は懸命に生きているという意気地があれば,不安を軽減できるでしょう。同時に,子どもに対して「そんなことでどうするの?」と将来を不安がらせる言い方をしなくて済むようになることでしょう。

・・・先の心配をしすぎない意気地も大切です。・・・


 〇アナログ人間?

 今の生活において,自分の行動に少しでも不自由があると「もう許せない」と大仰に騒ぎ立てる風潮があると指摘する人がいます。単純には言い切れないと思う反面,確かに個人的な場面では当たっている節もあります。特にディジタル世代では "all or nothing" 的な思考が強く感じられます。

 子どもは要求がかなえられれば喜び,かなえられないと泣きわめき騒ぎ立てます。まさに1か0です。この振れの激しさにママは振り回されます。我慢するということは1でも0でもない「0.5」の状態です。普通にいえば白黒ではなくて,灰色の状態です。どちらともつかない不安定な状態に立てることが意気地のあるということなのです。

 いったん灰色の状態に止まっていられるから,何とかしようと考えることができます。意気地がないと,あきらめるか,人を責めたてることしかできません。耐性が無いと言われるのは,この中途半端な状態に入ることができないことです。100点でなければ意味が無いと子どもを責め立てていては,ママには耐性がないと言われますよ。人はアナログ世界に生きています。

・・・意気地とは耐えることと見つけたり。・・・


 〇絶対という魔物?

 論理療法という心のプログラムがあります。いじめられているとき,もう一人の自分が「自分は絶対に嫌われている」とか,「誰も自分を好きになってくれない」と考えてしまいます。この断定的な否定の言葉に囚われると,つらくなり,出口が見えなくなり,やがて「もうだめだ」と絶望に至り,あげくは死にたいというところまで陥ることがあります。ママも子育てに疲れたとき,「誰も自分のことを理解してくれない」と思ったりしませんか?

 論理の筋道を正しくすれば救われます。「多分嫌われているかもしれない」と考え直すのです。大きく言えば人生観を柔軟にするのです。そうすれば,結論が変わり,急には無理でしょうが,だんだんと明るい気持ちに向かうことができます。「ママだけには嫌われていない」と信じさせてやることです。

 「こんなに苦労しているのに,連れ合いはちっとも分かってくれない」と言いたくなる気持ちは分かります。でもそう考えると相手を責めるだけに終わりますし,自分の不遇を悲しむだけになります。「もしかしたら分かってくれていないのでは?」と考えれば,分かってもらおうと努力できるはずです。いや,絶対に分からせてやるという意気地が出てくるかも? 子どもに求めている意気地も同じではないですか?

・・・適当に考えると道は開けるものです。・・・


 〇意気地ある用心?

 若者はついついいい気になって派手な行動を取りたがるものです。特に男の子は女の子の前ではカッコヨクしたがります。まっとうなことで格好良くできれば,それはそれで結構なことです。ママによく思われたいと,おだてられて懸命に働くパパはカッコイイでしょう?

 ところで,見境のない格好良さが不幸を招きます。悪事については問答無用ですが,危険を冒すカッコヨサも困ります。勇気を勘違いしているからです。怖がるときは堂々と怖がることの出来る人が,真に勇気のある人のはずです。無謀というカッコヨサを避けて,退避というカッコワルサを受け入れる意気地を持つことが,勇気ある人の条件です。

 リスクという言葉は危険度という意味だと思われていますが,少し違います。「リスク=ハザード×接触」とでも表せばいいでしょう。危険なものにどれほど近づくかということです。リスクとは不用心の度合いなのです。ハイリスクは用心していないこと,ローリスクとは用心していることです。簡単に言えば,君子危うきに近寄らずです。

 どんなことでも論理上,安全性は証明したり保証できるものではありません。何が起こるかは予見不可能なのです。だからこそ,用心が肝要です。その用心をしている人を意気地なしと断ずることは,人が生きる上で身につけなければならないリスク管理を否定することになります。

・・・用心の欠けた挑戦が無謀になります。・・・



《意気地無さは,見た目やいい加減に言える言葉ではありません。》

 ○おじいちゃんやおばあちゃんがパパやママの小さいころの話をしてくれると,子どもは喜びます。普段はあれこれ偉そうなことを言っているけど,パパもママも結構ダメなところがいっぱいあったんだと安心します。それは今の自分でいいんだという安心です。だって,いつもママから今のままではいけないと言われて傷ついているからです。子どもが知りたいことは,ダメな子どもがどうしたら今のパパやママにようになれたかという秘密です。育児の秘密は意気地の秘密かもしれませんね。

 【質問3-09:あなたは,お子さんの意気地無さが気になりませんか?】

   ●答は?・・・どちらかと言えば,「ノー」ですよね!?

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