*** 子育ち12章 ***
 

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「第 34-03 章」


『子育ちは 安心できる ところ得て』


【設問34-03:安心できる居場所とはどんな所でしょう?】

 ■子育ち12設問■
『子育ち第3設問』
〜見守る人がいるところ〜

 落ち着いている子ども。そんな子どもに育って欲しいですね。もっとも子どもとはじっとしていないで動き回るものです。「おとなしくしていなさい!」といつも言わないといけないかもしれません。ここで取り上げようとしている落ち着いている子どもというのは,ちょっと違います。逆に,落ち着きのない子どもを考えた方が分かりやすいかもしれません。子どもが落ち着かないのはどうしてなのか,考えてみましょう。

 子どもは未熟なので,親や周りの人に依存しなければ生きていけません。しかし現実には,必要な支援が常に十分に与えられるわけではありません。そんなときに子どもは不安になり,落ち着きを失うことになります。そのことを訴えようとして泣きます。その声が聞こえると母親が抱きしめてくれて,必要な世話をしてくれます。日常の繰り返される経験をすることで,子どもはそばにいる人に気持ちを伝えればきっと支えてもらえるという安心感を育みます。

 「親という字は木の上に立って見ると書きます」と言われます。子どもにとっては,見られていることになります。親が見ていてくれる,そう信じることができたら,子どもは安心します。後顧の憂いがないという言葉がありますが,背中に親の支えがあると思えば,前向きに歩くことができます。ただ,子どもは親の目といえども届く限界があるということを知らないので,先走りしすぎて迷ってしまうことがあります。迷い子は不安に苛まれます。

 子どもにとって親は頼るべき人です。ところが,親が先生擬きに評価者であったり,裁判官擬きに裁定者であったりします。しつけと称して罰を与えたりします。大人でも自分を評価する立場の人の前では緊張し不安になります。それが四六時中であれば,気の休まることがなく,落ち着きを失うようになるでしょう。人としての善悪の評価といったことをきちんと教えることは必要です。しかし,信頼を基盤とした諭しであることが必要です。

 親は子どもを見張るのではなく,見守るようにしなければなりません。叱られてばかりいる子どもは,親との信頼関係が持てなくて,見張られていると感じます。褒められたり叱られたり,そのバランスが保たれている子どもは,親を信じて頼りにして,見守られていると感じます。自分が見守られていると思うときに,もう1人の子どもは安心することができ,大丈夫という居場所を得て,自分を素直に生かすことができます。

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※講演をしたときに,できちゃった婚という言葉は子どもにとってうれしい言葉ではないとお話ししました。自分はたまたま生まれてしまったと感じられるからです。講演後のアンケートを主催者から届けていただいたのですが,その中に,「できちゃった婚だけど,産むときには産まれて欲しいと思ったからいいのでは」という声がありました。出産というチャンスに母親という気持ちを引き出してもらった感謝を,新たに子育ての原点にしてもらえればいいのです。

※安心できる居場所は家庭です。そこには,頼りになる親がいるからです。仕事の関係で親と過ごす時間が十分に取れないこともあるでしょう。必ずしもそばにいなければならないわけではありません。好きなおやつを用意しておくなど,気配りが伝わるようにしておけばいいのです。気にかけてもらっていることが分かれば,子どもは親に包まれていると感じます。その気持ちが居場所であり,育ちの芽が発育できる畑なのです。




 子育ちの目標を自立することに置いて,自分のことは自分でできるように子育てが進められていませんか? それは必要なことなのですが,十分ではありません。手のかかる子どもが自分のことをしてくれると,ずいぶんと助かります。早く育って欲しいと親は思ってしまいます。その先に行きましょう。子どもに助けてもらいましょう。お手伝いです。社会性の基本はお互い様です。自分のことだけではなく,家族のこともしてもらいましょう。

 万葉集に「旅人の 宿りせむ野に 霜ふらば 吾が子羽ぐくめ 天の鶴群(たづむら)」という歌があります。羽ぐくめは羽包む(はぐくむ)で,育むの語源といわれているそうです。親鳥が羽の下に雛を抱いて育てるという意味です。慈しみ大切に扱う,かわいがるという意味から,養育する,保護して伸ばす意味も加わってきました。しっかりと子どもを包むことが,育むことであると再認識してください。


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