*** 子育ち12章 ***
 

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「第 36-05 章」


『子育ちは 言葉で開く 知恵世界』


【基礎力36-05:文章を声に出して読むようにしよう!】

 ■生きる12基礎力■
『生きる第5基礎力』
〜言葉の世界が心につながるから〜

 子どもに添い寝しながら,本を読み聞かせています。「昨日のお話と違うよ」,「そんなこといいから,早く眠りなさい」。子どもは話を覚えています。覚えていても,読んで欲しいのです。声に反応することが楽しいからです。話が展開していくごとに,自分の中にイメージが生まれてくることが楽しくて仕方がありません。一人になったとき,その話を自分の声で表現しようとします。まるで自分に話しかけるように。こうして,お話が感動を帯びてくるようになります。

 子どもは母の口移しで言葉を覚えます。「こんなに散らかしちゃって駄目でしょ。片付けるのは大変なんだからね」。お姉ちゃんは,お母さんの口調そっくりに弟をたしなめます。単語ではなく,まとまった言葉を一気に発声する癖がついていないと,文章を読むことができません。単語は強くて瞬発的な発声になりますが,文章は息を長く使う必要があるために,穏やかな話しぶりになります。文章を楽に発声できるようになると,読むことが苦にならなくなります。

 子どもが本を読んでいます。「おもしろい?」,「おもしろいよ」。「字が読めるって楽しいね」,「読めない字もあるよ」。「この字なんて読むの?」,「それはね,こや(小屋)って読むんだよ」。字が読める喜びに目覚めると,いろんなものを読もうとします。読んでいる内に,話の展開に合わせて,言葉の発声に気をつけるようになります。同じ言葉でも,場面によって読み方を工夫して,気持ちを伝えることができることを知っていきます。

 「岩の後ろに身を隠したオオカミは,子羊を連れたおじいさんが山道を登ってくるのを今か今かと待ち伏せていました」。本を読んでいると,長い文章に出会います。文章を丸ごと記憶して,場面を想像しなければなりません。山の岩陰にいるオオカミを描きますが,子羊を連れたおじさんは場面にいません。複雑なイメージです。文章を読むというのは,言葉を組み立てて絵を描くことです。この能力が育たないと,授業で先生の話を聞き取ることができません。

 学校で,朝の10分間読書の時間です。昨日の続きのページから読み始めます。昨日までの話が今日につながります。日を重ねて,話が少しずつ進んでいき,何日か後に,終わりを迎えます。テレビでは普通前半15分で話がはじまり,後半15分でけりがつきます。このように短い30分間の話だけに慣れていると,長い時間,数日にまたがる話についていけません。数日掛けて何かを成し遂げるという時間体験は,読書以外の行動にも大切なものとなります。

 竜宮城の絵を皆が描いています。「あれ,どうして描かないの? 思った通りに描けばいいんだよ」,「だって,竜宮城は絵にも描けない美しさなんでしょう!」,「そうだけど!」。文章に曲が付けば,音楽になります。歌は声に出すものです。一つの曲が表現する世界は,心につながることができます。詩の世界が優雅な曲に乗って心に運ばれてきます。言葉は心の糧になります。声に出すことで感覚と共鳴作用が起こり,感動をもたらしてくれます。

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※最も重要な家庭学習は,読書です。宿題は,与えられた問題に答えるだけであり,答える技術を磨くに過ぎません。テレビ番組も与えられた映像を受け取ることが主になります。読書は,文字情報から自分のイメージを創作する必要があります。自分で考える力を養ってくれます。物語であれば,もう一人の子どもが主人公に乗り移って物語の中で経験をすることもできます。その舞台は自分が作ったものです。自分で考える癖は,読書で育ちます。

※家庭に読む習慣がありますか? 見る習慣は,大人が利用するには便利ですが,子どもの育ちにはあまりよくはありません。百聞は一見に如かずといわれ,見ることによって得られる情報量の方が多いのは確かですが,それが子どもの想像を封じてしまいます。情報過多になります。つまり,文字は情報が少ないからたくさんの疑問を産みますが,映像は見えるもの以外の疑問を受け付けません。子どもの考える力を養うには,疑問に出会うことが必須なのです。




 手を使う神経系は複雑です。神経は当然に脳からの指令を伝えるものです。手を動かす脳の機能を発達させることによって,人は能力を伸ばしてきました。例えば,名指揮者が,日本人の箸使いの繊細さとピアノを操る技とつながっていることを語りました。今,子どもたちは,手を使うことをしなくなってきました。ケータイのタッチという単純な動きしかしていません。学力の低下をもたらしたのは,脳を発達させる基礎養育を忘れていたせいなのかもしれません。

★落書き★

 田んぼに案山子が立っています。「山田の中の一本足のかかし」という歌があります。本当は「かかし」ではなく「かがし」です。穀物を食べる鳥や獣を嫌な匂いで追い払っていました。そこで,匂いを嗅がせるという意味で「かがし」というようになりました。今の人間の形になったのは,もとは田の神に守って欲しいという願いだったのですが,いつの間にか人がいることを知らせるためと思われてしまったそうです。願いなどというのは,現在には馴染まないのでしょう。


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