*** 子育ち12章 ***
 

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「第 4-12 章」


『ママとぼく 歩幅の違い きついです』


 ■はじめに

 子どもはどのように育つのでしょうか?
 ママはすくすく育ってほしいと思っています。
 でも,すくすくとは育たないので困りますね。

 何年も生きる樹木には年輪がありますが,草花にはありません。
 夏と冬の間の育ちが違うことから,木の幹には痕跡が残っています。
 子育ちにとっての年輪とは,どんなものなのでしょうか?

 生き物である人は外界から食物を摂取して,分解し,栄養分を蓄積します。
 もう一人の子どもは外界と触れ合い,試行錯誤を体験します。
 物事を分解するという学習活動を経て,生きる力を身につけていきます。

 「ご飯をいっぱい食べないと大きくなれないよ」と幼児を育てましたね。
 子育てはもう一人の子どもを育てることですから,別のご飯が必要です。
 「体験をいっぱいしないと大きくなれないよ」と勧めてください。

 これまで繰り返し育ちのエンジンは4ステップとお話ししてきました。
 「失敗し,反省し,学習し,挑戦する」ということでしたね。
 この育ちのエンジンは,体験することで点火されるのです。



【質問4-12:あなたは,お子さんに体験を勧めていますか?】

 《「体験の勧め」という内容について,説明が必要ですね!》


 〇招かざる体験?

 幼い子どもが外で遊んでいるのを見ているとハラハラさせられます。砂場に頭から突き刺さって泣き出します。そばにママがいると抱きついてきます。一泣きすると懲りずにまた遊びはじめます。怖さを知りません。怖さを感じるのはもう一人の子どもですが,まだ生まれていません。

 もう一人の子どもが育てば,こうしたら自分はこんな目に遭うかもしれないと,自分のことを予測できるようになり,そこではじめて怖いという気持ちを持つようになります。いろんな失敗体験をすることでもう一人の子どもは状況判断のための豊富な情報を手に入れることができます。体験が必要な理由です。

 誰しも痛い目に遭うのはイヤですね。一度注射の体験をした子どもは,病院に行くのを怖がります。幼いときにちっちゃな痛い体験を味わっておけば,危険に対する予測ができるようになります。走れば転んで痛いとか,よそ見をすると壁にぶつかるとか,投げたら壊れるとか,泣いた体験があとできっと役に立ちます。

 もちろん注射をしたら楽になったという体験も大事です。そのことをしっかりと気付かせておけば,次からは痛い注射を我慢しようとするでしょう。喉元を過ぎた熱さを忘れさせないように,ママがちゃんと言って聞かせてくださいね。イヤなことをちょっと我慢すればいいことがある,そういう体験が育ちへの応援になります。

・・・どんな体験にも決して無駄はありません。・・・


 〇滑らかな流れ?

 体験の大部分は失敗体験です。それを生かせるかどうかで,その後の育ちに差が出てきます。失敗したら反省する,その自然な流れが育つ道なのです。ところで反省というのは,どうすることなのでしょうか? 首うなだれて「反省!」と唱えれば済むようなものではないですね。

 テストの結果に対して,子どもたちは「当たった!,ハズレタ!」で済ませています。「ラッキー」と言うときに,自分の力ではなく運のせいだと自覚していますが,それが間違っています。体験の後始末ができないでやり放しでは,折角の体験がムダになります。もったいないことです。

 後始末とは片づけることですが,どのように片づければいいのでしょうか? 試験の場合には,どこまでできたか? どこを間違えたのか? その境界をきちんと見極めることです。できなかったと悔いることが反省ではありません。

 まずできた所を認めること,次に間違えた端緒を見つけておくことが大事です。思考の流れに出てきた断絶が見えさえすれば,やり直しのしようがあるからです。漫然と間違えた所を見直すだけでは糸口は見つかりません。考える作業は滑らかに流れているものなので,落ち着いて眺めればズレは見えてきます。そのようなコツを身につけられるのは,失敗と真っ当につきあう体験からです。

・・・道理とは無理なくつながっているものなのです。・・・


 〇とりあえず?

 悩みを相談にいくほとんどの生徒の状況は,「行動しないでの悩み」,「努力すれば解決できる問題での悩み」だそうです。悩みのほぐし方を知らないようです。悩みを解きほぐす道は絡み合っています。簡単ではないから悩みになります。それなのに一発で解決できることを期待します。その無理な期待が悩みの扉を固く閉じさせてしまいます。

 悩みに限らず,課題解決の鉄則はできることから手をつけてみるということです。考えるべきことはできそうなことを「一つだけ」見つけることです。「やれるかも?」という気になりさえすれば,事態はよい方に動き始めます。とにかく着手することが大事です。

 人が考えられることはたかがしれています。成り行きの全体を見通せるほど眼力はありません。あまり結果を急がずに,とりあえず可能と考えた行動をはじめてみます。そうすれば次の選択課題が自然に見えてきます。一歩一歩,コツコツとステップを重ねていけば,やがてトンネルの出口にたどり着くものです。

 地道な取り組み方を自分のものにするためには,パッとし終えるような課題ではなくて,根気のいるような,時間のかかるような,手間暇を必要とするような,何度か迷わせられるような体験が大切です。

・・・腰を据えた取り組みの体験が,悩みも超えさせます。・・・


 〇中途半端?

 子どもがやりかけて途中で放り出しています。「最後まできちんとやりなさい!」としつけをしますか? それともすっかり匙を投げて,「うちの子は飽きっぽくて根気がないんだから」と諦めていますか? どちらでもないでしょう。おそらくしつけをすることもあるし,諦めることもあるでしょう。

 子どもが何かをしているとき,余計なことを言ってはいませんか? きちんと仕上げるように要求し過ぎると,子どもは「止めた」と思います。掃除をしても真ん中だけきれいにして,隅はし残しているはずです。ママは「中途半端だ」と評価します。でも,はじめはそれでいいのです。一通りのことができれば,慣れるにつれてきちんとできるようになります。

 算数の問題を解いているときに,「字はきれいに書きなさい」と余計なことを言われると,算数への集中力がそがれてしまいます。ものを運ぶときこぼしたり,片づけるとき不揃いであったり,線を引くとき曲がっていたりと,することなすこと不完全です。この段階で大事なことは,とにかく最後までやらせるということです。できばえの不完全さはとりあえず置いておいてやらなければ,「できた,やった」というゴールにたどり着けません。

 曲がりなりにでも一つの行為をし終えるような体験がファーストステップです。その後繰り返す中で,一つ一つちゃんとできるように力を拡大すればいいのです。はじめて訪れる土地や家までの距離は遠く感じますが,慣れてくると遠いという感じが薄れてきますね。一度やり遂げたことは難しくなくなります。「できそうだ」という自信が見えてくるからです。

・・・ママは片目をつぶって,最後までつきあってください。・・・


 〇歩く効用?

 参観などで学校に出かけるとき,車で行ってはいませんか? 一年生が雨降りでも傘を差して歩いているのに,大の大人が車とは? ごめんなさい。別に嫌みを言ってるのではありません。折角のチャンスを惜しいなと思うからです。通学路をママも同じように歩いてみてください。

 車で子どもの送り迎えをしていませんか? 危険だからというのであれば通学路ではありませんね。そんな環境であれば何とかすることを考えなければなりません。特に問題のない通学路なら,歩かせませんか? 歩けばいろんな出会いがあります。人や動物や草花や風や雲との新鮮な遭遇は子どものアンテナに引っかかります。そんな体験を糧にして,子どもは考えるチャンスを手に入れます。

 車は便利です。でも車は何も教えてくれません。人や自然との触れ合いを断ち切ります。雨の感触から逃れてばかりいると,雨が怖くなり,雨と友だちづきあいができません。雨の降り方に応じて傘の差し方を工夫する知恵も学べません。傘を忘れた子どもと相合い傘をする思いやりの体験もできません。便利でないこと,ちょっと困ったこと,イヤだなと感じること,そんな体験が何とかしようという気持ち,考える力を引き出してくれます。

 帰宅した子どもに「ママ,橋の下に赤い花がいっぱい咲いていたよ」と言われたとき,ママに橋の下が思い出せれば,その光景が目に浮かぶでしょう。子どもと話が通じます。でもいつも車で橋を渡っていたら,橋の下など思い描くことはできません。生返事をするママに,「せっかく教えてあげたのに,つまんないな」と子どもはがっかりします。美しい体験が無になります。

・・・同じ行動をしなければ,体験を共有してやることができません。・・・


 〇してみせる?

 体験を勧めるときに,「しなさい」と指示してさせることはなるべく避けましょう。嫌々しても効果は期待できません。もちろん,はじめはイヤであっても,やっているうちにおもしろくなると思えるような体験であれば,ちょっと背中を押してやることは大切です。例えば,地域などで実施される子ども向けのイベントなどには,なるべく参加させるようにしましょう。

 日常の体験では,親が一緒にして見せながら,「やってみるね?」と誘ってやってください。忙しいのにそんなことをしていたら用事が片づかないと思われることでしょう。でもそんな体験をやらせてやれるのは親しかいないのです。親がやらせなかったら,大事な体験をしないまま育ちます。それこそ中途半端な育ちになります。生活のことを一通り体験させておけば,子どもが親になったとききっと役に立ちます。それが生きる力なのです。

 生活環境が子どもの育ちに影響する一面として,「してみせて,やらせてみて,ほめてやる」という親からのしつけ方があります。親は子どもにやらせようとする前に,自分でして見せることが大切です。見ることによってまねすることができます。しつけはまねから始まり,まねで終わります。子どもが親に似るのはまねしているからです。

 させられるのではなくて,してみようかなと思えるように誘うことがコツです。子どもにもできるかなと思う作業があったら,させてみましょう。大きな子どもであれば,頼み込んで任せてみましょう。終わったら「ありがとう,ママは助かったよ」とフォローを忘れないようにして下さい。後味がよければいい体験になります。

・・・ママの下請け体験は,子どもには育ちになります。・・・



《体験の勧めとは,子育ちエンジンに燃料を注入することです。》

 ○生活体験は必ず手を使います。現実と虚像の区別がつかない子どもたちという危惧があります。「ゲーム感覚」と指摘されている行動パターンへの心配です。現実は生活体験によって培われます。頭で考えることは「夢みたいなこと」であり,それを現実に引き戻してくれるのが手で体験することなのです。草も生きていると実感できるのは自分の手で草取りの体験をするからです。人は誰でもスーパーマンではありません。ママも子どもがいて手を取られる体験をするから,ゆっくりとママになっていきます・・・!

 【質問4-12:あなたは,お子さんに体験を勧めていますか?】

   ●答は?・・・自信を持って,「イエス」ですよね!?

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