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「第 47-06 章」 |
『子育ては 言葉をつなぎ 意味伝え』
■子育て12チェック■
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『子育て第6チェック』
【理解させていますか?】
●何を話しかけても「アー」という返事しか返って来なかったら,どやしつけてやりたくなりますよね。返事をする方の立場を好意的に考えると,「アー」の一言でいろんなことを表現している積もりかもしれません。例えば,犬は「ワン」としか言いませんが,いろんな意味のワンがあるということです。でも,やはりそれは言葉ではありません。言葉には大事な機能があります。それは森羅万象,あらゆる物事を切り分けているという機能です。それが言葉の意味になるのです。
●最近の教育界では,体験が推奨されています。体験の不足が,いろんな場面で目に付いてきたからです。仮想世界に遊ぶ時間が増えるとともに,現実感覚が失われてきたという危惧もあります。親にすれば,多少は体験の種類に偏りはあるにしても,毎日何の体験もしていないということはあり得ないのでは,と高をくくっているところがあります。また,企画される体験行事も,子どもたちを集めて昔遊びをやらせてみたり,地域のオリエンテーリングをしたり,通学合宿をしたりで,限られた時間だけの一過性に終わっています。
●「疲れた」と呟きながら座りこんだママに,子どもがふっと思いついて寄っていき,肩たたきをしてくれます。「いい気持ち,○○ちゃんは優しいのね」。自分がした肩たたきをママが喜んでくれたという「行為の意味」を分かり,同時にママのためにしようとした思いつきを「優しい」と評価されて,優しさとはどういうことを意味するのか,体験的に理解できます。何か特別の体験が必要なのではなくて,ごくありふれた体験を体験として意味づけることが大事なことなのです。その意味づけをするのが,適切な言葉掛けです。
●単純に言葉を覚えるということに限っても,実物を前にして言葉を覚えなければ役に立ちません。「犬」という単語は犬を見たことのない人には分かりません。犬を見たことがあれば,誰にでも通じます。池しか見たことのない人が,湖という言葉は使えません。特定の異性のことが気になって胸が高鳴るようになって,それが恋だと言われたとき,始めて恋という言葉の意味が分かります。そういう体験を誰でも持っています。
●歴史の勉強で,年代を覚えるのに語呂合わせをしましたね。身近な暮らしで電話番号を言葉に代えると,覚えやすいですね。覚えやすいと言いましたが,実はこの言い方は正確ではありません。思い出しやすいという点がセットになっているのです。戸棚に入っているモノを取り出すときに,ごちゃごちゃと入っていたらどこにあるか分からないので,取り出せません。整理整頓されていれば,さっと取り出せます。記憶も同じことです。意味に基づいて整理された言葉を順序よく積み重ねることで,知恵という能力が育っていきます。
●「脱いだ履き物はきちんと揃えなさい」。そう言われて,子どもは慌てて靴を揃えます。見ると,脱いだままの向きに揃えられているだけです。「きちんと揃えなさいといつも言ってるのに,意味が全然分かってないんだから!」。まずは,「きちんと」というのが分かっていません。例えば,「ママの靴と同じように並べてごらん」とでも言えば,きちんとという言葉の意味が見えます。それでも,揃えておくという意味は分かりません。言われるからしているだけです。
●揃えておくとどうなるか,という続きを教えておくことが大切です。出がけに靴を履きます。そのときです。「昨日きちんと靴を揃えて置いたから,今日は靴をすぐ履けるね」。こうすればこうなる,そのつながりを理解できるとき,意味が分かります。揃えること,片づけることが次の動作とつながっているということを,靴を揃えるという例題を通して理解できます。こうして一連のつながりを体験して言語化しておけば,応用が可能になります。
●何遍言ったら分かるの? 子どもに言って聞かせるのは大変ですね。伝えたから伝わったとは限らないのです。言葉の醸し出す意味がお互いに共有されていないことがあるからです。人それぞれに自分なりの意味づけをする傾向があります。例えば,黄色の交通信号。まだ通過できると突っ込む人があれば,止まらねばと急ブレーキを掛ける人がいます。この二人が前後逆になっていると,追突事故が起こります。意味の違いは,人と人がふれあう公共の場では時として危ないことになります。
●親は自分が生きてきた中で体験から得た知恵を子どもに伝えなければなりません。暮らしの中で子どもにあれこれ指示し命令することでしょう。そのときに,大事なことについては,お話をしてほしいのです。いわゆる体験談です。それも失敗した話がいいでしょう。失敗談は大切なポイントを強調できるからです。お話にすると知恵が具体性を帯びるので,子どもにも素直に伝わります。理解させるには,伝わるようにしなければなりません。
●道端に空き缶が転がっています。「この空き缶は,どうしてここにあるんだろうね?」。空き缶が辿ってきた顛末を考えさせます。幼い子どもであれば,捨てられて可哀想という擬人化をすることでしょう。そうでなくても,とにかく小さな空き缶物語が生まれるはずです。そこに意味が浮き上がってきます。子どもがお話を聞きたがるのは,そこに意味を見つける喜びを感じているからです。意味が分かれば,理解できるのでうれしいのです。
●物語には関わりのある人やものが登場します。その世界は皆の世界です。私だけの世界では物語にはなりません。物事がどうつながっているか,それが話の筋として顕わになります。自然に他者への気配りや,一人で生きているのではないといったイメージを持つことができます。子どもにお説教をするよりも,説話をしてください。何遍言っても分からないのは,お話をしてやっていないからです。伝えたつもりでも伝わっていないのは,話し方が拙いために意味が見えていないからで,決して子どものせいなどではありません。
●親子の間でたくさんの言葉が交わされるでしょう。でも,親の言った言葉がちゃんと子どもに受け取られ理解されたかどうかはかなり危ういものです。叱咤激励,叱ることで励ましているつもりですが,子どもは叱られたとしか受け取れません。背後にどんな親の思いがあるのかなど,読みとる力はありません。親にならなければ親心は分かりようがないからです。そのことを弁えて,子どもに理解させるように言葉を選んで与える気配りが大切です。
悪貨は良貨を駆逐するという言葉があります。そんなことを言われても理解できません,とは言わないでください。検索すれば,すぐに分かります。ところで,悪はほとんどが欲望に寄り添っている一方,善は欲望を抑制することが多いので,薄められた悪が世間ではびこりやすくなります。特に子どもは欲望に忠実なので,悪さに流されやすく,真面目な善さは敬遠されがちです。どちらを選ぶ方が正しいのか,知っているだけではなく,肝に銘じるような勇気を育てておかなければなりません。
★落書き★
都会ではイネを見ることはないでしょうが,お米は日々ご飯として食しているはずです。茶碗1杯のご飯は,どれほどのイネを必要としているのでしょうか? お茶碗1杯には3000〜3500粒の米粒が盛られています。一方で,稲の穂1本には80粒ほどの実がつき,1株のイネは40本ほどの穂がつきます。1株には80×40=3200粒の米がなっていることになります。茶碗1杯に盛られた米粒はイネ1株の米粒とほぼ同じということになります。田んぼの稲穂を目にしたときに,思い出してください。
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