*** 子育ち12章 ***
 

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「第 5-13 章」


『連れ合いの 笑顔一つで 和まされ』


 ■はじめに

 何年前のことでしょうか?
 あなたにはじめて出会ったときのことは,今でもこの瞳が憶えています。
 どうしてこの人のことがこんなにも気になるのだろうと不思議でした。

 何年前のことでしょうか?
 あなたに愛を打ち明けられたときのことは,今でもこの耳が憶えています。
 こんな幸せなことがあっていいのだろうかとちょっぴり不安でした。

 何年前のことでしょうか?
 あなたに指輪をはめてもらったときのことは,今でも薬指が憶えています。
 夢ならいつまでも覚めないでとずっとずっと祈り続けていました。

 何年前のことでしょうか?
 あなたに愛の結晶をお届けできたときのことは,今も身体が憶えています。
 そのときあなたはパパに,わたしはママに,この子と結びつけられました。

 つい最近のことでした。
 あなたに聞いてもらいたいと話しかけたときのことは,今も憶えています。
 言葉が空しく通り過ぎていくような隙間ができている気配を感じました。

 つい最近のことでした。
 あなたに手助けをお願いしたときのことは,今でも心の奥に憶えています。
 不機嫌そうな仕方を見せつけられた悔しさに涙が止まりませんでした。

 明日がやってきます。
 あなたに何かを求めてきた日々のことは,今からはもう忘れるつもりです。
 夫婦は常にリフレッシュしていないと続かないものと見えてきたからです。

 明日がやってきます。
 あなたに私が決心したメッセージを,今夜は向き合って伝えるつもりです。
 この子が「この家に生まれてよかった」と言える家族になりましょうと!



【質問5-13:あなたは,お連れ合いと結ばれていますか?】

 《「結ばれる」という意味について,説明が必要ですね!》


 ○誰が結ばれるのでしょうか?

 有名な人が結婚するとき,相手が誰か?,ワイドショーの独壇場になります。インタビューになれば,その方を選んだわけが尋ねられます。かつて選ばれる男性として三高と呼ばれた条件がありました。背が高くて,学歴が高く,収入が高いというものでした。多くの男たちは,逆指名もあるのにと秘かに愚痴っていたようです。

 ほとんどの人がそんな見てくれよりも,人柄を伴侶の要件にしているはずです。思いやりがあり,自分を大切にしてくれるからといったことです。結婚したら人が変わったというケースもあって,不幸な破局が訪れたりします。人柄の結びつきは,連れ合いの中にいるもう一人の連れあいが自分の中にいるもう一人の自分と結ばれることです。

 「私を何だと思っているの?」という不満は,「私のことを家政婦としか思っていないのでは」と感じられたときなどに現れます。役割では夫婦にはなれません。夫婦は男女の結びつきですから,当然に男として女としてお互いを求め合う結びつきが必要なのですが,その上に人として信頼し合うことが伴わなければ完成しません。このもう一人の自分は自尊心を支えに生きています。

 お互いを大事に思うというのは,自分の自尊心と連れ合いの自尊心を融合することです。連れあいが好きなものを好きになろうとする,少なくとも毛嫌いだけはしないようにしあったり,連れ合いが疲れているときに妙にはしゃいだりする前にそっと寄り添ってみたり,些細なことを積み重ねていけばいいでしょう。もし自分の自尊心を頑なに守ろうとすると,道は遠くなります。連れ合いの中に自分を見つけていくという手もあります。

 和風の結婚式で白無垢姿になるのは,婚家の色に染まりますという準備であり,お色直しは無事に染まりましたというお披露目の意味がありました。今は女性だけが自分の色を無垢にする必要はありませんが,夫婦がお互いの影響を喜んで受け入れて新しい色に染まることは大切なことです。子育ちではもう一人の子どもが育っていますと言っておきましたが,実はもう一人の自分の育ちは夫婦という単位で新しい育ちの段階に入ったことになるのです。

・・・もう一人の自分がもう一人の連れあいと結ばれます。・・・


 〇何処で結ばれるのでしょうか?

 ある男性の体験です。どんな話題でもスラスラと受け答えのできるとても理知的な女性と知り合いました。よいパートナーとしてつき合っているうちに,結婚を考えるようになりました。でも,デイトを重ねるうちに何かが違うという小さな思いが芽生えてきたのですが,それが何かは分かりませんでした。

 あるとき,二人で夕焼けを見ていたときです。男性が「きれいな夕焼けだね」と語りかけると,女性は「夕焼けは・・・」と解説をはじめたのです。それからしばらくして,男性はその女性と別れてしまいました。

 夫婦の間でも似たようなことがありますね。「今朝は冷えるね」,「冬だから当たり前でしょ」。「どう,この料理美味しい?」,「ちゃんと食べてるだろ!」。会話がはぐらかされて,すれ違っていますね。

 恋人や若い夫婦では,「幸せかい?」,「幸せよ,あなたは?」,「ぼくだって!」という言葉が交わされています。ぼくの幸せと私の幸せはお互いに別物です。夫婦の会話は,「幸せだね」,「幸せですね」となり,二人の幸せは合わせて一つの幸せになっています。言い換えれば,共感しあえる仲になるということです。

 「きれいな夕焼けだね」,「きれいですね」。「今朝は冷えるね」,「冷えますね」。「美味しいですね」,「うまいね」。共感とは気持ちが重なることであり,言葉も重なるものです。ふっと横を向いたら,そこに連れ合いの笑顔がある。自分の気持ちがスッと吸い取られていく間柄であれば,お互いに安心できます。安心という居場所が夫婦の結び場なのです。

・・・気持ちが重なったところで夫婦は結ばれます。・・・


 〇何時結ばれるのでしょうか?

 第1次南極越冬隊でのエピソードです。冬を越すのですから,当たり前ですが新年を迎えます。隊員の下に留守家族から年賀の電報が届けられます。当時はまだ電報に頼らざるを得なかったのです。

 隊員たちは暖房の効いた部屋に集まって,自分のところに届いた電報をみんなの前で披露することになりました。寝食を共にする隊員たちは,それぞれの思いを自分のことのように受け取る仲間意識が通っていたのです。隊員の健康を気遣うもの,留守家族の近況を伝えるものなどがあり,からからって笑いあったり,励まされたり,楽しい時が過ぎていきました。電文の披露は続きました。

 やがて,ある隊員が電文を読む番になったのですが,ちょっと躊躇しています。促されるように読み上げられた電文に,皆は一瞬戸惑いました。その後,にぎやかであったその場がしーんと静まりかえったのです。読み上げられた電文はたったの3文字でした。

 「アナタ」。それだけだったのです。それだけで十分万感が表されています。他の言葉は必要ありませんね。隊員たちを言い様のないせつない気持ちにさせた言葉,それはごく日常的に交わされていた言葉です。夫婦にしか味わえない感動です。もっとも相応しい言葉をごく自然に選び出せたとき,夫婦の絆の強さが現れるのです。もし,「オーイ」としか呼べないようなら,考え直した方がいいかもしれません。

・・・連れ合いだけに向けた言葉を大切に語るとき,夫婦は結ばれます。・・・


 〇何が結ばれるのでしょうか?

 あるところに仲のよい夫婦がいました。北風が吹きはじめたある日の朝のことです。妻が熱を出して寝込んでしまいました。身体がだるくて,起きあがれません。朝食の準備もできず,布団の中から「ごめんなさい」と済まなさそうにしています。

 優しい夫は,「いいよ,いいよ。ゆっくり寝ていなさい。夕食は外で済ませてくるから」と,仕事に出かけていきました。そんな言葉を聞きながら,妻は秘かに決心しました。「元気になったら,絶対別れる!」。仕事をしなければならないことは分かっています。それでも・・・。

 夫婦の絆は何処にあるのでしょうか? この妻はその絆を切ろうとしています。実のところ,絆は元から無かったのではないかと疑いを抱いたのです。「寝ているのはいい。でも,いったい私の夕食はどうするのよ!」,「”なるべく早く仕事を切り上げて帰ってくるからね。それから温かいものでも作ってあげるから,一緒に食べよう”と,ウソでもいいから言ってくれてもいいんじゃない!」。

 面倒を掛けないようにしようというだけの思いやりは,子どもの優しさです。大人であれば,できることをしてやろうという優しさでなければなりません。相手が一番してほしいことをちゃんと見極めて,それを叶えてあげようとする意志が夫婦の絆です。この人のためなら喜んで無理ができる,それが夫婦を結びつけているのです。そうですよね!?

・・・お互いにしてあげたいと願う思いが夫婦を結びます。・・・


 〇何故結ばれるのでしょうか?

 結婚の動機が昔と今では,ずいぶんと変化しているようです。今は幸せになるために結婚しようとしています。「幸せになろうね!」が動機です。「この人だったら私を幸せにしてくれる」,「君を幸せにしたいから」というわけです。結婚時が幸せの絶頂かもしれません。ですから,少しでもつまずきがあるといっぺんに不幸せになります。幸せがいつ壊れるか?という不安の連続です。そのあげくは自分たちの結婚は間違っていたと思い込み,一気に破局に向かいかねません。

 かつての夫婦は違っていました。「一緒に苦労しよう」,「この人とだったら苦労を共にできる」と結婚していました。はじめから苦労を覚悟しているので,ちょっとでもいいことがあると幸せになれました。二人の生活には明日が楽しみという前向きさが備わっていたのです。苦労を共にしているからこそお互いを労り合うことができます。

 結婚はお互い弱いもの同士,支え合っていこうという心の絆があるから結ばれます。連れ合いのことを「ベターハーフ」と言いますね。幸せになろうと結婚したら,お互いが「ベストハーフ」になろうと努力し,「ベストハーフ」であることを相手に求めてしまいます。これでは無理をするのでどこかに歪みが生じ決して永続きできません。必ずしもベストではない「ベターハーフ」であれば,お互いに楽になれますし,なによりも少々のことは許し合いかばい合うことができます。自分も相手も責めなくて済みます。

 夫婦のことを「割れ鍋に綴じ蓋」と言いますが,欠点を抱えている者同士だからこそ,相手を助けるという愛の手が差し出せるのです。絆という字は糸が半分と書きます。お互いが半分の糸だから,寄り添うことで一つの糸になりたいと願うのではないでしょうか?

・・・絡もうとしても絡んでくれなければ糸は紡げませんね!・・・


 〇どのように結ばれるのでしょうか?

 夫婦関係を年代別に捉えた言葉があります。「十代の夫婦はセックスで夫婦です。二十代になると愛で夫婦,三十代になると努力して夫婦,四十代になると我慢の夫婦,五十代になると諦めの夫婦,六十代になるとお互い感謝で夫婦。やっと夫婦です」。

 どの年代にいらっしゃるかは礼儀ですのでお尋ねしませんが,当たっていますか? どうもこの言葉は男性の述懐のようです。女性の感性はどうなのでしょうか? いずれにしても夫婦の心は時と共に変貌していくものでしょう。大事なことはお互いが近づいているかどうかという点にあります。

 所詮元々は他人で,さらに男女です。育ってきた背景が違うのですから,そうそう簡単には溶け合えるはずがありません。ピピッと来たのはほんのきっかけであり,お互いがそれぞれの生活の隅々までを摺り合わせる作業が必要です。喧嘩という痛みやふっと感じる寂しさなどもあるのが普通でしょう。でもやはりそんなものはなるべく少ない方がいいのはもちろんです。我慢できる程度に抑えられたらきっとよい展望が開けるでしょう。

 ちょっと失敗をして,少し反省をして,大いに学習して,勇気を出して挑戦をする,子どもの育ちと同じように,夫婦も育っていきます。人にできる方法はそれしかないのです。よその夫婦が素敵そうに見えたにしても,その夫婦なりに悩み努力しているものです。夫婦の姿は千差万別ですが,それはそれぞれの夫婦が苦労して作り上げるものです。がんばってくださいね。

・・・お互いを信じて寄り添い続ければ結ばれます。・・・



《結ばれるとは,夫婦としての育ちつつある姿です。》

 ○男が「コイコイ」と誘えば,女が「アイアイ」と寄り添っていく。それが「恋愛」(コイ・アイ)だそうです。お互いが愛を連れてくるから,「連れ愛」になります。連れがなければ,「連れない」仕儀となります。ラブとは愛という意味の他に,ゼロという意味もあります。無私の心が愛に通じているのでしょう。

 なぞなぞです。「パンツをはかない魚は何でしょうか?」。
 答は「コイ」です。どうして?
 だって,昔から「コイははかない」と言うじゃないですか!
 ダジャレづくしでした。


 【質問5-13:あなたは,お連れ合いと結ばれていますか?】

   ●答は?・・・自信を持って,「イエス」ですよね!?

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