*** 子育ち12章 ***
 

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「第 56-06 章」


『子育ちは 選ぶ言葉の 美しさ』


■子育ち12能力■

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『子育ち第6能力』

【子育ちは,美しい言葉を理解することができることである】

《まえがき》
 この子育て羅針盤では,子どもの育ちを6つの視点と2つの領域から理解することを目指しています。6つの視点とは,誰が育つのか,どこで育つのか,いつ育つのか,何が育つのか,なぜ育つのか,どのように育つのかという問に沿うものです。また,2つの領域とは,自分自身の育ち(私の育ち)と他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ちの領域を想定しています。6つの視点にそれぞれ2つの領域を重ねると,12の論点が生じます。これが羅針盤の方位構成となります。
 この56版では,子どもが育ちの中で獲得すべき「12のできる力」を考えます。子どもが発揮する可能性を拓いていく営みが育ちだと想定します。ここで述べていく力は,人が生きていく上で必須とされる基本的な力であり,バランス良く獲得されなければならないものです。

《理解するのはいつですか?》
 自分の思いを言葉で表現することが第5の能力でした。言葉遣いは話す相手によって変化します。同級生との世界だけでは,そのことがわかりません。親との会話を通して大人相手の話し方を経験すれば,改まった話し方を自然に覚えます。その先の他者に対する敬語や丁寧な話し方,あいさつの仕方,言葉の選び方,声の出し方,態度の持ち方,場にふさわしい話題の選び方などを身につけるためには経験を積むことです。
 優しさという感覚がとてもおかしくなっています。優しさを示すのは仲間内だけに限って,他者には冷酷になります。1か0かのディジタル型です。人の気持ちはアナログであり,強弱の変化による連続性があるはずです。社会は多くの人が幾ばくかの優しさを持ち寄って成り立っています。仲間でない人にも多少の気遣いをするのが,社会生活上の基本です。その気遣いを洗練された形に作り上げているのが礼儀です。優しい言葉で気持ちを引き出すことができれば,美しい立ち居振る舞いが身につきます。
 美しさとは,生きることへの共感です。花に美しさを感じるのも,花が次世代に命をつなぐ受粉の印であるから,共感できます。笑顔の赤ちゃんを可愛いと感じるのは,そこに命を見ているからです。人が見せる一所懸命な姿に感動するのも,生きようとする意志に共鳴できるからです。自分の周りにいる人たちが自分と同じようにあくせくと生きていることを感じとる感性が,美しさの感覚です。何気ない普通の共同生活の中にある言葉を真面目に覚えて使っていれば,美しい言葉を理解できるようになります。

 日々の平凡な生活の場で,親子は,側にいて同じことをし,同じ思いをするときに共感することができます。その同じ思いをするということが,意外と難しいのです。例えば,子どもの目線に立つということです。屈んで目の高さで向き合う犬は,大きくて恐いものです。大人の目線では見下ろしているので,小さな犬と思っています。大人と子どもの目線は,同じものを違ってみていることに気付いてください。こんなことも出来ない?と大人が思っても,子どもには無理なことです。人を理解する美しい目線で見てください。

 二歳の誕生日に鯛の尾頭つきが出されました。そのりっぱな塩焼きを見て,子どもは泣きだしました。「この魚,目がある」というのです。普段は切り身のパック入りの魚しか見ていません。生き物を食べるという実感がありません。生きるために食べることとは,殺すことを必要とします。その厳かな事実が見えにくくなっています。生長して魚に慣れてくると,「お魚の一番美味しい所は目の所!」なんて言い出します。命を頂きますという美しい言葉を,きちんと伝授してください。

 かつてビアフラ内線のときに,国際赤十字の救援活動が行われました。現地人の看護婦さんが,注射をするときに,「ンド,ンド」と話しかけています。居合わせていた日本人医師は,「我慢しなさい」,「動かないで」と言っているのだろうと思っていました。「してやっている」という立場からの発想です。ビアフラ語の意味は,「痛くして,ご免なさい」ということだと知って,ショックを受けました。こちらの都合を押しつけるのではなく,相手に気持ちを寄り添わせるとき,美しい言葉が人を結びつけます。

 美味しいものとはどういうものでしょう? 「昔食べた母が作ってくれたもの!」。そういう答えがどれほど出てくるのでしょう? 我が子はきっとそう言ってくれると思っていますか? 美味しいものは,ただのありふれた食物に特別な思いが込められているものです。調理のコツ,それは「あの人に食べさせたい」という願いだそうです。健やかに育ってほしいという母の願いが込められているから,子どもは美味しいと感じるのです。食べ物も美しい言葉になります。



 教育は方向性を持ちます。人の行為を正と負の価値に分けて,正(プラス)の価値を追求する方向性を,教育的活動に課しています。ところで,正負の価値は一律に扱うことができません。負の価値は,個性を伸す材料に,すなわち正の価値を生み出すこともあるからです。例えば,おとなしい=優しさ,のんびり=確実,という具合に,別の価値尺度を当てると,無駄なものは無くなっていきます。潜在能力の臨機応変な使い方を弁える,その実行指標として正の価値を参照すればいいのです。

★落書き★

 熱が出る前には,ガタガタ震えて寒気がします。どうしてでしょう? 脳が,筋肉を収縮させて体温を上げるように命令を出すからです。体温中枢からの情報によって体温は上下しています。この体温中枢が病気によって刺激を受けると,設定温度を高くして病原菌から身体を守ろうとします。ガタガタと筋肉を動かして体温を上げようとしているのです。寒気がするのは,病気に対する対抗作戦開始の身震いということでしょうか。


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