*** 子育ち12章 ***
 

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「第 6-02 章」


『見かけより 話せば分かる 人の性』


 ■はじめに

 最近メル友というつきあいが流行っているようですね。言葉だけが行き交う関係ですが,そこに虚実が縦横の糸のように織り込まれています。言葉だけの世界に限定していればそれなりの効用は期待できます。言葉を自分のものとして消化していれば,毒気に感染することもありません。

 その言葉のつきあいを現実の世界に引きずり出そうとすれば,虚の部分が歪みとなってとんでもないイメージを描き出していきます。不幸な顛末はたくさんあるみたいです。もちろん,すべてがそうというのではありません。このマガジンは実際に肉声でたくさんの方に聞いていただいているものですから,ご安心くださいね。

 人は匿名であるときに歯止めがゆるむという弱さを持っています。一番手軽な犯しやすい間違いは虚言です。嘘つきは泥棒の始まりと言われるように,悪行への入り口なのです。責任を負わなくてもいいという言いっぱなしの言葉は気楽なイタズラですが,言葉を信用した人には重大な不利益・迷惑を掛けることになります。

 情報化社会は情報の信頼の上に成り立つものです。現実社会の信頼できる人間関係が前提になっています。地域社会という信頼関係から浮き上がった暮らしに浸りきっていると,自分の言葉に責任を持つことの大切さを見失ってしまいます。信頼を失う怖さを教えるのは地域の役目です。



【質問6-02:あなたのお子さんは,ご近所の大人と話していますか?】

 《「大人と話す」という意味について,説明が必要ですね!》


 〇何処でつき合うのでしょうか?

子どもは人の中で育ちます。子どもが最初に出会うのは親子関係です。そこでは家庭教育が行われます。これを「家庭内教育」と呼んでおきましょう。家を動かすパパと,家をまとめるママの下で,子どもはもっとも基礎的なしつけを受けて,少しずつ人になっていきます。

 家の外にでるといつも顔を合わせるのはお隣の家族です。よく知っているおじちゃん,おばちゃんですがやはりよその人ですから,少しは遠慮しなければなりません。我慢することを覚える練習場なのです。この関係はお互い様であり,パパやママはお隣の子にとっておじちゃん,おばちゃんになります。この養育の場では「家庭間教育」が行われます。つまり,社会的人間関係のオリエンテーションの場なのです。気心が知れていますので多少の失敗は温かく見逃してくれますが,子どもにとってマナーやエチケットなどのブレーキ操作の練習場になります。

 子どもの生活圏が広がって校区程度になると,地域が育ちの場になります。そこには時々ですが見かける親の知り合いがいますし,友だちの家族もいるはずです。他人ではありますが少なくとも自分の敵ではない人がたくさんいて,安心していい場です。この「家庭外教育」の場は人とのつきあいの仕上げの場になるのです。知り合いの程度に応じて,徐行から停止までの間合いを変えなければなりません。

 社会性とは悪くいえば「人を見る」ということです。子どもなりに,この人は甘えていい人,この人はきちんと対応しないといけない人,そんな具体的な間合いの取り方をそつなくこなせるように育たなければなりません。

 今時の子どもが置かれている状況は,この3段階の家庭教育が機能していません。子どもは親や先生に甘えっぱなしで育っています。学校や家を離れるといきなり無慈悲な世間です。ちょっとした甘えでも即刻糾弾されてしまいます。いまどきの子は我慢を知らないと言われますが,それは家庭内教育の責任ではなくて,家庭間,家庭外教育がパパやママから疎かにされているせいなのです。

・・・親が親たちにならなければ,子の社会性は育てません。・・・


 〇花のおじさん?

 子どもは3歳を過ぎると,その活動範囲が広くなっていきます。旺盛な好奇心につられて冒険をします。親の目が届かないところで,ハラハラするようなことをしでかします。近くの大人が目に留めると,大丈夫かなとしばらく見守って,危険だと思われたら声を掛けます。「そっちは危ないから,こっちにおいで」。危なくない方に誘導してくれます。子どもは自分のことを思ってくれる人にはすぐになつきます。

 親の知らないところで子どもは人脈を作っていきます。家の近くに住んでいる人を見知っています。ちょっとしたふれあいの積み重ねです。犬のいるお宅があります。子どもは犬の名前がレオであることを尋ねて知っています。犬をつれて散歩している方に出会ったとき,「あっ,レオのおばちゃん」と走り寄っていき,犬をなぜてやります。そう呼ばれたおばちゃんは,おそらく苦笑いしているかもしれませんが,それでいいと思ってくれているはずです。

 子どもは自分の興味や関心にくっつけて,素直に知り合いを増やしていきます。かっこいい車のおじちゃん,いつもお花に水を差しているおじいちゃん,郵便屋さんのおじちゃん,コンビニのお兄ちゃん,赤ちゃんのおばちゃん・・・といった具合です。

 子どもは知っている人に会うと,ニコッとします。その笑顔が周りの大人から優しさを引き出します。「元気だね,かわいいね,いい子だね」といった声を掛けられて,こっくりとうなずくだけかもしれません。それでも,周りの大人との信頼関係は十分です。みんな味方だという安心感が,子どもを真っ直ぐに育てていきます。ママの知らない世界があるのです。

・・・子どもの世界には多彩な人脈が配置されています。・・・


 〇返事?

 3歳初め頃から遊びの中にお店やさんごっこが入ってくるようになります。お店のおじさんやおばさんがどんな風にしているかを見ながら,まねをしようとします。自分に優しく声を掛けてくれた大人は印象に残りますので,まねしやすいでしょう。

 ままごと遊びをしている子どもを見ていると,パパやママはおそらく冷や汗ものでしょう。「早くしなさい」という時の口調はママにそっくりです。本当によく見ていますし,その特徴を見事に掴んでいます。その観察力は周りのものすべてにも向けられます。

 庭のアリさん,スズメさんやカラスさん,お花さんから大きな木のおじさんまで,擬人化することで,子どもは楽しくおつきあいをしていきます。話しかけて自分で返事をして会話をしている姿をごらんになったことがあるでしょう。子どもは誰かとお話ししたいのです。

 テレビを見ることが多い子どもは,このお話しする喜びを味わうことができません。大好きなテレビアニメの主人公と話をしようと語りかけても,主人公は画面の中で自分を無視した会話をしています。テレビからシカトされるのです。ですから自分なりの思い入れができる絵本の方が好きでしょう。

 その点,暮らしの場で出会うものは自分の言葉に反応してくれます。大人に対しても「おじちゃん」と呼びかければ,「なんだい,坊や」と自分の方を向いてくれます。「何してるの?」と尋ねれば,よくは分からなくても自分に説明してくれます。人と人とのつきあいは言葉が行き交うことだということを知ることで,人と話すことが楽しくなり,その人を好きになっていきます。

・・・よそのお子さんにもちゃんと返事をしてやってくださいね。・・・


 〇大きい子のママ?

 はじめての赤ちゃんを産んだママは,病院から自宅に戻った途端に,何もかもが分からないことばかりで,不安と疲れにまいってしまいます。病院や電話相談にいちいち尋ねるような日々が続きます。近くに先輩の親がいればいろんな知恵を授かれるので,ぜひ声を掛けて親しくなりましょう。

 そんなアドバイスが聞かれます。ちょっとした勇気を出せばいいと言われますが,なかなかきっかけがつかめません。そんなときは無理をしないで,子どもに任せましょう。子どもは子どもに興味を持ちます。大きな子どもが自分の子のそばにきたら,その子に優しく声を掛けることです。子どもに対してだったらそれほど勇気は必要ありませんね。

 親であればわが子に優しい人とは直に仲良くなれます。最近親のネットワークを作ることが盛んですが,若いママだけで集まるのが多いようです。似たもの同士であることはもっとも結びつきやすい条件です。気軽におつきあいができます。でも,そのときに大きな子どものいるママを意識して仲間にすることが大切です。上の子が未だ小さいママと下の子が小さいママとが仲間になるということです。そうしないと,長続きしません。

 子どもが同じ年のママ同士だけがつきあうと,確かに話題は共通しているので,はじめは取っつきやすいでしょう。しかし,しばらくすると,お互いの子どもの小さな違いが気になり始め,素直なつきあいがしづらくなっていきます。妙なところで意地の張り合いをしたり,やっかみや勘違いが混じり込むことが多いからです。変に競争心がかき立てられる場合もあります。子どもの年齢が違っていたら,お互いにゆったりした気持ちを維持できるはずです。

・・・ママにもちょっと大人のママとのつきあいが大切です。・・・


 〇はい,チーズ?

 このマガジンはママに子育ての自信を持っていただくことを目的に発行されています。ところで,ママの自信は長い目で追いかけてみると,次第に低下しています。かつては過半数のママがどちらかといえば自信を持っている方でしたが,最近は自信を持てないママが過半数です。

 以前,地域生活と子育ての自信の関係を公的に調査したことがあります。その結果,地域生活に溶け込んでいないママの方が自信を失っており,地域に慣れてくると自信を持てるようになっていることが分かりました。ママが地域に馴染むということは子育てにとってとても大切なファクターなのです。

 馴染むというのはどういうことかが分からなければ対処のしようがありませんね。それは地域の人を信頼し,地域の人から信頼されるということです。住んでいるところでママ自身が人間関係に安心していることが,何よりも大事だということです。周りの人に警戒心や不安を抱いていてはママの気持ちが閉じこもります。子育てどころではなくなります。

 人付き合いは鏡のような関係があります。こちらが面倒だなという気持ちを隠していたら,相手も同じように対応してきます。こちらが笑顔を見せれば,地域の方も心を開いて好意を示してくれます。相手の表情は自分の鏡なのです。周りの人が冷たいと感じていたら,それは自分が冷たい表情をしているせいです。

 子どもが誰とでも語り合えるのは,ニコッとして素直だからです。そんな子どもに育てるためには,ママが素敵な笑顔を思い出すことです。ネクラだから笑わないのではなく,笑わないからネクラになっていくということを知っておいてください。

・・・人と話す前には,そうなるような雰囲気作りが必要です。・・・


 〇窮屈?

 地域の教育力という言葉を耳にされたことがおありでしょう。それって一体何なんでしょう。もちろん一言で言い表すことはできません。このシリーズでおいおい解き明かしていくつもりです。子どもにとって地域の育ちをしているかどうかは,社会人としての育ちに関わる一大事だからです。

 中学校が荒れるという事態が起こることがあります。そんなときの対応が地域の教育力として表立ってきます。例えば,地域の人が常時学校に出かけて,子どもたちの様子を見守るといったことです。子どもからすれば,見守られるより見張られるといった感じかもしれません。

 見張られるとはよい印象ではありませんが,それは邪な気持ちを抱いている者だけが感じます。パトカーやお巡りさんが近づいてきたとき,普通にしていればどうということはなく,自分の味方だと思えるはずです。ところが,悪さを心に潜めていると,逃げたり隠れたり,自分の敵に見なします。同じです。

 人目に付くということは邪心がもっとも嫌うことです。あそこの家の子がこんなことをしていると知れわたることは,十分に抑止力になります。どこの子かも分からないといった地域の状況では,子どもでも高をくくっていい加減に羽目を外してしまいます。小さな歯止めを失ったら,後は弾みがついて一気呵成に暴走しかねません。

 もちろん,地域の教育力とはこのような抑止力ばかりではありません。地域はいつも子どもの味方です。確かにわがままは許されないのでできれば逃げていたいかもしれませんが,それを窮屈だと感じなくなることが社会性の育ちです。親の顔が垣間見える地域であれば,子どもも安心できるはずです。

・・・我慢を覚えるには,よその人が見ていてくれることです。・・・



《大人と話すとは,信頼関係の門を開くことです。》

 ○ママにはいろんなおつきあいがありますね。機嫌良く話を合わせているだけといったこともあるでしょう。疲れますよね。それはそれとして,気の置けない仲間同士の親しいつきあいもあります。いろんなつきあいを楽しめればいいですね。

 ところで,お子さんの前で態度をがらっと変えてみせることはありませんか。例えば,電話で話しているときと切った後での態度の違いです。誰でもありがちなことですが,程度があります。なるべくさらっと流した方が素敵ですよ。そうしないと子どもがよそでばらしてしまうかもしれません。見られていることをお忘れなく・・・。


 【質問6-02:あなたのお子さんは,ご近所の大人と話していますか?】

   ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね!?

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