*** 子育ち12章 ***
 

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「第 6-11 章」


『はじめての お使いする子 ママ不安』


 ■はじめに

 何度学んでも,いつまでも間違えてしまうようなことがあります。幼いときには右と左をなかなか覚えられません。箸を持つ方が右と覚えさせられます。普段ミギ・ヒダリと言い慣れていないと,とっさの時に出てきません。一瞬,間があく人がいますが,おそらく頭の中で箸を持つ方が右と思い出しているのでしょう。

 クマさんの苦手は,漢字の音読みと訓読みの区別です。息子に聞かれて教えてやったら,見事に逆でした。「シュンカシュウトウ」と音読みする言葉は春夏秋冬です。訓読みすれば「ハルナツアキフユ」となり,意味を表すことになります。復習しましたが,いつまで覚えているやら・・・。

 春は,発つ(ハツ),張るが語源で,芽が出てムズムズと張るという意味。夏は熱つ(アツ),成るが語源で,作物が生長する意味。秋は飽きが語源で,実った穀物を腹一杯食べて飽きが来た意味。冬は冷ゆ(ヒユ)が語源で,作物はなく,寒い意味だそうです。知れば何とも他愛のないことです。

 人は一度痛い目を見ると臆病になります。それが苦手意識になります。人から見ればなんと言うこともないことが,本人にはとても大変な思いをしなければならなくなります。気持ちがブレーキを掛けてしまうからです。こうして,大人になるまで苦手なままに据え置かれてしまいます。

 幼い子どもの失敗を気持ちの痛みにしないようにしてください。からかったり,バカにしたり,笑ったり,ちょっとした軽い気持ちであっても,子どもには意外とこたえてしまうことがあります。ママの優しさとは,か弱い心を包み込む産着なのです。



【質問6-11:あなたのお子さんは,冒険をしていますか?】

 《「冒険をする」という意味について,説明が必要ですね!》


 〇どのようにおつき合いをすればいいのでしょうか?

 飲食店に入ると,ときどき,有名人の色紙が飾ってあるのを見かけることがあります。この人が来店するような格式があると宣伝しているのでしょう。同じようなことが初対面の人と話しているときにも飛び出します。それなりの方を引き合いに出して,懇意にしていることを得々と話されます。ご近所のおつきあいでも,誰それさんの話題になったときに,昔から仲良くしていることを自慢げに言われる方が出てきます。

 人はどんな方とおつきあいがあるかで,人の格を測ろうとしています。悪く言えば,朱に交われば赤くなるであり,類は友を呼ぶということでしょう。人が集まれば,何となくグループができて,派閥になり,セクトになり,結束力が生じてきます。若い方はそんな思惑がイヤで,誰ともつきあわないという選択をしています。

 仲良しができることはいいことです。ただ,その副作用には十分に気配りをしておかなければなりません。副作用とは,仲良しでない人を敵視しやすいということです。敵か味方かという偏狭な尺度は,すべての争いの元です。戦争がイヤだと願っている一方で,暮らしの中では敵を作って喜んでいる姿を見かけると,怖くなります。

 誰でも,仲良しになれないという方がいるものです。無理に仲良しになろうとしないことです。ただ,決して敵だとは思わないようにすればいいのです。普通につきあえば済むことです。少しでも相手のことを陰で悪く言うことがあったら,必ず相手からも同じように思われます。目が敵を見る目に光ってしまうので,容易に気取られてしまうからです。

 間合いという言葉があります。イヤな人とはそれなりの距離を置くようにすれば,それほど嫌みを感じなくなります。いろんな間合いを取る工夫が,人づきあいを楽しくしてくれます。もちろん,仲良しにも間合いは必要です。あまりに近づきすぎると,思わぬ反発に出会います。それは,相手の方にも間合いがあるからです。

・・・人づきあいにも,スピード違反,脇見運転などしない安全運転を。・・・


 〇懲りない?

 幼児は怖さを知りません。見ているとハラハラさせられます。冒険心の始まりであり,育ちの活力の発露でもあるのです。おもちゃの車に乗って遊んでいるとき,バランスをはずして仰向けにひっくり返ります。ママはびっくりして思わず「危ない」と大声を上げます。子どもはその声に驚いて泣き出します。駆け寄ったママにすがりつくかもしれません。

 もしママが見ていなかったら,どうでしょう。子どもはびっくりするでしょうが,すぐに立ち直ります。何事もなかったように,おもちゃに乗っかっていきます。何度かそんなことを繰り返すうちに,上手に乗れるようになっていきます。

 このことから,育ちの形が見えてきます。ママが好きな「上手に」という状態は,実は「失敗しなくなる」ことです。失敗しないためにはどうすればいいのか,それを身につけるためには,あれこれやってみることが必要です。考えるだけでは決して答えは見つかりません。

 兎に角やってみる,それが育ちのステップです。ママが思い描く冒険のイメージとは違うかもしれませんが,子どもは幼いときから冒険をしていると思っていてください。もちろん,危険が待っているようなことは回避させなければなりません。それを見極めることが保護するという意味です。

 前にも話しておきましたが,小さな失敗をさせないことが過保護であり,大きな失敗に手を回して庇うことが保護になります。少々の失敗をしないと,育ちが停止することになります。失敗は成功の元ですが,子どもにとっては失敗は育ちの元なのです。

・・・ママがハラハラとハラを痛めた分だけ,子どもは育っていきます。・・・


 〇初体験?

 このマガジンを読んでくださっているママは,はじめての子育てかもしれませんね。経験者なら一応の要領は十分に分かっているでしょうから,そつなく子育てをこなしていける自信を持っているはずです。とはいえ,子育てはそう簡単にはとらえきれない深さを秘めています。

 ある程度予定していたこととはいえ,とうとう舞い込んできた子育て,それは新しい状況に直面することです。初体験のことに関わること,先が見通せないこと,それは正に冒険です。ママはそんなことは露程も意識してはいないはずですが,傍目から見れば十分に冒険です。特に,ママのご両親はママぶりをハラハラして見守っておられることでしょう。

 立場をそのままママと子どもさんにシフトすれば,子どもの思いが推察できるでしょう。子どもは何もないところから育っていくので,あらゆることが初体験です。でも,冒険しているといった意識は持っていないはずです。ただ目の前に迫ってくることに素直に対処しようとしているだけです。もちろん好奇心から,いろんな状況を自ら招き入れているところはあります。

 一般的に考えれば,冒険という言葉にはわざわざ余計なことに首をつっこむというニュアンスがあります。どこか未知の土地にわざわざ探検に出かけるといったことです。でも,冒険小説の流れを見ると,何か突然に起きるアクシデントが発端になっていることが多いようです。日常の暮らしからふっと迷い込んだ新天地での体験,千と千尋の神隠しは,そういう冒険です。

 冒険の主人公は,冒険せざるを得ない状況の中で,どう生きていくかということだけに専念します。それは育ちのプロセスそのものです。子どもは子どもの世界の中で,ヒーローでありヒロインなのです。子育ちの冒険,子育ての冒険,そこで主役がどれほど一所懸命か,それが感動を生み出します。生きることへの共感が感動だからです。

・・・はじめてすることから逃げたら,育ちの扉は開きません。・・・


 〇淡々と?

 前向きに生きるという言い方があります。披露宴で仲人がする挨拶には,「これからの二人にはいろんな山や谷があることでしょう。二人で手を携えて何とか乗り切ってくれるものと思いますが,まだ二人は未熟です。どうぞ,二人がくじけそうになったら,温かいご支援とご指導を賜りますようにお願い申し上げます」といった文言が入っているはずです。覚えていらっしゃいますか?

 人生は切り開くものと言われています。平々凡々と見える生活にも,苦労の種は尽きません。大小の山谷があるからこそ,人は成長していきます。その生活の苦労を苦労と思わない心構えが,前向きということでしょう。それもまた,冒険を楽しむことになります。

 その点で,女性が見せる生活のたくましさは,豊かな冒険心の発露のようです。そんな悠長なものではないと叱られそうですが,男の目から見ればそれが実感です。冒険といえば男がするものといったイメージがありますが,それは単にパパが冒険してると力んで言いふらしているだけかもしれません。ママは淡々と冒険しているようです。

 結婚生活が夫婦のお互いにとっては冒険の連続です。お互いにハラハラドキドキする場面があれば,新しいストーリー展開があって,飽きることはないでしょう。日々が同じことに思えたら,そこには冒険はありません。外に冒険を求めようとすると,ちょっぴり困ったことになりかねません。それを見越した神の采配でしょうか,子育ての冒険がちゃんとプログラムされています。

 子どもは,ある日突然に,妹や弟が誕生しママの膝を奪われるという理不尽な目に合います。相手はわがままいっぱいですから,ことある事に自分の邪魔をしてきます。幼い子には悪意がないからと,お兄ちゃん,お姉ちゃんという新しい立場に追い込まれていきます。冒険の始まりです。続章として,入園,入学などが控えています。

・・・人生楽ありゃ苦もあるさ,くじけないで生きましょう。・・・


 〇現場?

 冒険,それはママにとっては「とてもできそうには思えない無茶!」と感じられるでしょう。子どもはそうは思っていません。ただ単にしてみたいだけであって,できるかどうかなどは度外視しています。子どもに思慮分別を性急に求めるのは理不尽でしょう。だからこそ,危険な無茶に対しては保護責任が親の方に課せられているのです。

 物事はやっていくうちに見えてくる部分があり,それが大事な部分であることも珍しくはありません。創造への門を開くのは誰もができないと思っているとんでもないことへの好奇心です。幾多の発見・発明は別のことをやっているときに,偶然に目の前に現れてきた小さな現象を見逃さない眼力の賜物でした。何事も完全に見通すことはできない以上,やってみなければ分からないという余裕が肝要でしょう。

 自転車に乗れるようになるには,乗ってみなければなりません。実際にやってみることで状況を体感し,試行錯誤の中から答えが見つかります。字を書く練習をしますが,書くほどに上手になります。体が覚えるべきことはすべてがこのパターンです。子どもが育ってくると頭で覚えることが増えてきますが,その場合も同じです。

 友だちづきあいも,実際に仲間に入ってみて,あれこれ経験するうちに覚えていきます。「習うより慣れろ」という養育の実効性を再認識する必要があります。何に慣れるのか言えば,壁に直面するたびに何とかできないかと積極的に考えることに慣れるのです。習うことには必ず限界があります。そのことは「習っていないからできない」という言い訳に現れています。

 十分な準備ができないままに現場に飛び込むこと,生きる力はそこでこそ発揮されるものです。小さな冒険の途上で思いもしない課題が飛び出してきますが,それが物事を見極めていく学びになります。それはやってみなければ手にすることのできない貴重な知恵です。

・・・現場の真剣勝負が本物の育ちを促してくれます。・・・


 〇臨機応変?

 遊ばない子どもたち,遊べない子どもたち,そんな子どもたちに対する危惧は体験の不足です。体験といえば,数日のキャンプ生活をすることといった風潮があって,それなりの効果はあるようですが,それが体験の意味をミスリードしているようです。

 体験が大切であるという本当の意味は,適応能力への目覚めです。体験して何かができるようになったというのは,単なるオマケに過ぎません。自然や社会の中では人間は一部に過ぎず主役ではありません。どういう状況であろうと,その場でできることを見つけて,折り合いをつける工夫を編み出さなければなりません。自分にはその力があったという体験による気づきが,自信と安心につながります。

 遊びは冒険の宝庫です。道を歩いている子どもは,普通には歩きません。縁石に乗ってバランス感覚を楽しみます。ジャングルジムで戯れている子どもを大人のサイズに引き延ばしてみてください。自分の背丈の3倍から4倍ほどの高さですから,大人であれば家の大きさに匹敵します。怖いですよね。砂や泥にまみれる小さな冒険は,ママにはちょっぴり迷惑ですが,素手でできること,スコップなどの道具でできること,トンネルが壊れやすいこと,いろんな形を作れることなど,学んでいることがたくさんあります。

 子どもにとっての遊びは,自分の今の力を見極めるチャンスになり,同時にその場の状況に臨機応変に対応しようという意欲を育てることにもなります。あれがないから遊べないといった駄々をこねるのは,遊びを自分で考え出す能力を使っていません。手近にあるものを何でも遊びのおもちゃにしてしまう,それなりに楽しめる,そのような柔軟な発想を育て続けたいですね。

 ゲーム遊びに熱中する子どもについては,遊んで貰っているという心配があります。遊ばされているという受け身であることから,遊ぶ側の意思が封じられています。さらにゲームとして当然ではあるのですが,勝負という冒険に限定されているのも気がかりです。たまにする程度ならそれなりの効用を否定するわけではありませんが,偏食はいただけません。

・・・冒険の豊かさが幅広い適応能力を育てます。・・・



《冒険をするとは,前向きに育とうとしている証拠です。》

 ○なまこをはじめて食べた人は勇気があったと思いませんか? でも,本当のところは,お腹が空いてやむにやまれず,仕方なしにそこにあったから食べたということでしょう。食べてみたら,まあまあいけるという発見になりました。冒険とは降りかかる危難(?)に対して試行錯誤をしてみようという気持ちから始まります。

 子どもにとっては,何の予備知識も持ち合わせていませんから,育つためにはやってみる方法しかありません。口に入れてみる,手で握ってみる,叩いてみる,転がしてみる,引っ張ってみる,走ってみる,跳んでみる,乗ってみる,言ってみる,書いてみる,ねだってみる,甘えてみる,・・・。きりがありませんので,後はママにお任せします。


 【質問6-11:あなたのお子さんは,冒険をしていますか?】

   ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね!?

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