『子育ちは 待ちの時間に 寄り添われ』
■子育ち12反転■
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『子育ち第10反転』
【期待と強制】
《まえがき(毎号掲載)》
子育て羅針盤では,子どもの育ちを6つの方向と2つの領域から考察します。6つの方向とは,「誰が,どこで,いつ,何が,なぜ,どのように育つのか」という問題視座です。また,2つの領域とは,「自分の育ち(私の育ち)」と「他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ち」の領域を表します。6つの方向にそれぞれ2つの領域を重ねた12の論点が「子育て羅針盤」の基本的な考察の構成となります。
この第91版では,子育てと子育ちが反発してしまう心配をを考えておきます。子どものためを思って良かれと作用をしても,子どもからは良くない関わりになってしまうということです。親はしつけのつもりで関わっていても,子どもからは虐待となっていることがあると言われるようなことです。保護するのが親の務めですが,過ぎると過保護となって,育ちを疎外してしまいます。どんな点に注意をすればいいのか,羅針盤の12の視座から考えてみましょう。
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《期待》
親は我が子について,こんな子どもに育ってほしいという期待を持ちます。名付けという形で,願いが子どもに伝えられます。のんびりゆったりと時間が流れていた時代は過ぎて,今はとても忙しく変わっていく時代です。諸事さっさと運ばなければ,苛ついてしまうようになりました。そのペース感覚のままに子育てに向かうと,指示命令が頻繁に出されるようになり,素早い反応が求められます。「しなさい」,「はい,しました」。言ったことができていないと,「なぜできないの」と責められます。
優しい子どもに育ってほしい,そう願って「優しい子に育ちなさい」と強制的に指示しても,それはできないことです。無理ななものは無理なのです。「どうして優しくできないの」と責められても,優しいということがどういうことか具体的に分からない以上,お手上げなのです。「美味しい料理をつくって」と言われても,美味しいとはどういうことか,どうすればいいのか,そういうことが分かる準備期間が必要です。子どもの育ちに関しては,育ってくるまでの待ち時間を確保しなければなりません。期待は待つことです。
《強制》
忙しそうにしているお母さんに,「早くしなさい」と責め立てられています。急かされるとあわててしまい,かえってできなくなります。親は次から次にあれやこれやを迫ってくるけど,子どもは急には育てないのです。○つになったんだから,○年生になったんだから,お母さんはそう言うけど,○年生に急になれるわけはないんです。焦って強制したりせずに,ちょっと離れて見守っていてくれれば,「いつの間にか○年生らしくなってきたね」と言ってもらえると思います。
学校で授業参観があるときに,お母さんの目が背中にぴたっと向いているような気がします。体が硬くなって,心臓がドキドキします。もしそう思っているとしたら,親としての期待を込めた見守りは強制に変質して子どもに降りかかっていきます。期待通りにならなければならないと思い詰めるのではなく,いつか期待のようになったらいいねと,期待を少し向こうに置いておくようにすればいいでしょう。なによりも,親としての期待に親自身が追い詰められないように,ゆったりとすることです。急がば回れです。
母子関係が親子関係になって,父親という看板は開店休業になっているようです。その間に,母子関係は母子密着に進んでいき,子どもが圧迫されています。父親が絡むことによって,母子関係が適度の隙間を持つ事ができます。母子だけでは不安定ですが,父母子という三角関係が機能することで,バランスが取れるのです。同時に,3人の関係が社会関係の基本です。2人は社会ではありません。第3者が絡むことで,社会関係が働きます。家庭に社会性を持ち込むのが,3番目に登場している父親の役目なのですが?
★落書き★
身体全体で気温などの低さを体感する場合,「寒い」という表現を使います。ところで,指先や耳など,身体の一部で感じる場合には,「冷たい」という表現を使いますね? 何気なく使い分けていますが,理由があります。「冷たさ」という概念が未だはっきりと言葉になっていなかった頃,指先が冷え切ってかじかんでしまうことを、人々は「痛み」と認識して,「爪痛し」と呼びました。指先の冷えを痛みだととらえたのです。これが「つめたし」になり,平安時代の書物には「冷たし」という字が現われるようになりました。これが「冷たい」に転化しました。
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