*** 子育ち12章 ***
 

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「第 97-13 章」


『子育ちは 今の自分を ありのまま』


■子育ち12鍵語■

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『子育ち第13鍵語』

【人】

《まえがき(毎号掲載)》
 子育て羅針盤では,こどもの育ちを6つの方向と2つの領域から考察します。6つの方向とは,「誰が,どこで,いつ,何が,なぜ,どのように育つのか」という問題視座です。また,2つの領域とは,「自分の育ち(私の育ち)」と「他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ち」の領域を表します。6つの方向にそれぞれ2つの領域を重ねた12の論点が「子育て羅針盤」の基本的な考察の構成となります。
 この第97版でも,これまでの流れに沿って,子ども自身や親が育ちの確認をしていくときに,思考を開く鍵となる語を使って育ちの状況を展望していきます。今現在それぞれの育ちの度合いに違いがあってもそれは個性になり,達成度の評価ができるなら,幸せに育っていると考えることができます。子どもの育ちは見えにくいものですが,羅針盤としての全方位を見届けることができることを再確認していただけたらと思っています。

《人とは?》
 御縁があって,SOSミニレターという子どもたちからの相談の手紙に返事を書く機会がありました。はじめて出会った寂しい事態にどう対処すればいいのか,戸惑って,一行だけの悩みを書いてきます。いつ,どこで,だれがどうしたのか,状況がつかめません。例えば,「一緒に遊んでくれません。どうしたらいいですか」と曲がった字が訴えかけてきます。どう答えたものか,状況を読むことに苦労します。拙さは別にして,状況の変化に対する弱さが,とても気になっています。

 ○○してくれない,○○された,という意の通りにならない事態に対する耐性が,弱くなっています。それはよく言われている自尊心の低さの裏返しです。○○してくれなくても平気という落ち着きを保つためには,自尊心が必須です。人が人であるための芯になるのが,自分は自分であればいいという自分に対する確信です。人の思惑や態度に振り回されてばかりでは,自分を見失います。そこで,自尊心を持つためには,まわりにいる親や地域の人の温かな支えが必要になります。

 自尊心を育む方法は,周りによる「無条件の受容」であるといわれます。○○できる子どもをほめ,できない子どもを貶し叱るという子育ては,褒められなければ認められないという,自己否定を怖れさせることです。誰しもできない部分を抱えています。そこを否定されたら,人でないといわれているようなものです。「叱られても嫌われない」という確信を持たせることが肝要です。失敗に対して「ダメでもともと」と励ましても,「あなたはもともとダメなんだから」とは決して言わないようにしましょう。



 性同一性障害という障害があります。身体の性と心・意識の性がすれ違っていて,辛い思いをされています。自分が何者かという人としてのスタンスが定まらないということの苦しみはとても耐えがたいことであろうと想像するしかできません。少しずつですが性同一への手立てが社会的に確実に進んでいるようです。自分に対する確信,普段からあまり気にはしていないことですが,大事なことは失われたときに切実に気付かされます。

★落書き★

 江戸時代に十返舎一九が書いた東海道中膝栗毛で,弥次さん,喜多さんが,江戸神田を出発し京都まで東海道五十三次を歩きました。その後の帰路はどうだったのでしょう。元来た道を引き返したのではありません。大阪に足を伸ばし難波見物,難波の宿で知り合った男に誘われ四国の金比羅詣で,広島に渡って安芸の宮島を見物,さらに長野の善光寺にお参りし,草津温泉に立ち寄り,中山道で江戸に戻っています。帰路の方が長旅だったのです。

 子育て羅針盤第97版は今号で終わり,令和7年からは第98版に進みます。当初より3か月毎に版を改めていますが,羅針盤の12方位の一巡りを年に4周することで,子育ちの偏りを避けることができるのではと期待しています。季節毎に一回りの成長,そう思ってお付き合い下さい。

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