《第3章 子育て心温計の仕様》

 子育て心温計の全体図は別ファイルに示すとおりです。

【3.3】子育て心温計の発育不全部

 前にも述べましたように,子育て心温計の左側は発育不全な面を表しています。健全な発育から外れて袋小路に迷い込んでいる状態を表しています。放置すれば発育が止っていますので立ち枯れてしまいます。何が原因かということが心の表情で示されてはいますが,具体的な対象事例は個々のケースで異なり,また子どもの実態は複合的な症状を表しますので,注意深く診断をして頂くようにお願い致します。
 ここでは,心温計の目盛による分類ではなく,状態別に説明することにします。ここの状態は袋小路であって,目盛に沿って分離されて連続性がないからです。
 (1)[無法状態?]
 この無法状態では他人の権利を犯しています。生きて行くための本能的防御として働く飢餓感から,自分の欲望充足のみを求め,乱暴な行動をします。また生命保存のために機能する恐怖感から衝動的に他を害することもあります。いずれの場合にも人を人と思わなくなってしまいます。
 今までにあまり無かった型として,子どもに対する虐待行為があります。わが子を放置して男と遊び歩いていたとか,泣き止まないので口におしめを押込み毛布をかぶせて窒息死させたとか,子どもが邪魔で面倒くさいから○○したといったことなど,子どもに対する愛情の欠落が見られます。本当の意味で愛を知った男女になれないままで親になってしまった結果でしょう。親自身が人間として踏むべき課題を修めていない発育不良な状態です。行動の動機は母親というより女のエゴしかありません。この様な母性行動の変容は,妊娠と出産の神秘性が喪失されたことに原因の一つがあります。
 現在,子どもは当事者の意志により生みたいときに生めば良いと考えられています。以前は「授りもの」という抽象的な価値を子どもに与えていましたから,情緒的な愛が素直に入り込めました。ところが今,自らの意志により「作りだしたもの」になってしまいました。そこには人間としての尊厳などは感じようもなく,極端な場合には口にするのも恐ろしい不要品扱さえされてしまいます。親としての人間的成長しか救いの道はないようです。
 私たちが意識していない子どもいじめがあります。努力を嫌う風潮があり,できるだけ手抜きをして効果をあげることが合理的であり現代的であると思い込まされています。例えば,手抜きのインスタント食品は自分が食べますから構いません。ところがミルクの授乳などの手抜きの子育ては母が楽をし,望ましくない影響は子どもだけに及んでしまいます。親の身勝手は子どもを無視し,結果的にいじめになります。気を付けるべきでしょう。
 また多くの事例が示しているように,遊び化したいじめの中では,人間を玩具と同一視しています。女の子たちが「何か面白いことないかな」,「あの子何となくムカ付くね」と単なる衝動で標的を選び,攻撃すること自体を楽しんでいます。私たちの子ども時代にも冷酷で残忍な遊びはありました。とんぼの羽根をむしり取ったり,蝶を捕まえて蜘蛛の巣にかけてみたり,何かをしたはずです。無意味な殺生事を。ごきぶりを追いかけ回して踏みつぶすのとは少しわけが違います。何の罪もない生物への暴力です。こんないじめの対象となる昆虫が姿を消したことと,人間の尊厳への意識の低下が,人間をいじめの標的にしているのかもしれません。このまま放置すれば,自分は選ばれた民族であるという過去に出現したあの化け物がまた復活しかねません。世界の中で生きているのは人間だけと思い上がってきたことが,今では,その人間が生きていることさえ見えなくなってきています。生半可な意識改革ではとても回復できない重病にかかっているような恐ろしさを覚えます。