【第1章】自我の誕生

〜あなたのお子さんは,自分で考えていますか?〜

 《1.4》 もう一人の自分は,どんな力を持っているのですか?

 鏡を見ながら顔の汚れを拭き取れるのは,もう一人の自分がいるからできることです。赤ちゃんにはそれができません。「見られている自分」といった視点を持てるのは,もう一人の自分です。かつての「恥の意識(文化)」ももう一人の自分が他者の目を持っていたからです。
 例えば無灯火の自転車に乗って平気なのは,自分が他者からどう見えるかというもう一人の自分の目を閉じているからです。見えない自転車が歩行者に危険であると同時に,車に対して自分が危険であるという,他者との関係の中で自分を見ていません。
 思いやりは相手の立場に立つことですが,これももう一人の自分にしかできないことです。社会性の基盤である皆の中の自分という認識は,もう一人の自分に備わる資質です。
 幼児でも自分が笑われると傷つきます。笑われている自分にもう一人の自分が気づくからです。人の存在感の基である自尊心・プライドも,もう一人の自分が持つものです。

答 「もう一人の自分がいるから,人は思いやりなどの社会性を発揮できます」