【第3章】対話の感動

〜あなたのお子さんは,正しく話していますか?〜

 《3.4》 体験することは,育ちにどのように関わっているのですか?

 真っ赤な夕焼けを見ると子どもは何かを感じます。親が「夕焼けがきれいね」と語りかけると,子どもは自分が感じている不思議な気持ちを「きれい」と表現できることを覚えます。育ちにとって体験は必要ですが,体験だけでは十分ではありません。言葉というレッテルを張っておかなければなりません。初体験したときの自分の感動に言葉による名付けをしたとき,もう一人の自分が認知し後で思い出すことが可能になり,他者と共感できます。適切な言葉が付随しないと経験しても知恵にはなりません。あの人の側にいるとなぜかドキドキするという体験に,それが恋だと教えられて,気持ちが納得できます。
 体験と言葉がドッキングすると,行動や情動の再現が可能になります。逆に言えば言葉は体験の裏打ちがあって生きてきます。そんな言葉が人としての行動を誘い出します。きれいねと言える子どもは美意識を,よかったねと言える子どもは思いやりを,危ないと言える子どもは生命尊重を,後でと言える子どもは我慢を、やらせてと言える子どもは自発性を,任せてと言える子どもは社会貢献をすることができます。

答 「体験を言語でイメージ化できたときに,生きた知恵と実行力が育ちます」