*****《ある町の社会教育委員の活動》*****

【第10章 社会教育計画書の更新について】

 我が町では,毎年「社会教育計画書」なるものを教育委員会が発行しています。その案文つくりを社会教育委員の会が請け負ってきました。その作業プロセスについては,第4章に紹介しておいた通りです。毎年度,計画書の見直しをして修正を施してきました。その手直しも繰り返すうちに,全体としての整合性が危うくなり,一方で訴求力も色あせてくるような印象を持たれてきました。そこで,平成15年度に全面的なリニューアルをしましたので,そのコンセプトと全文をまとめておくことにします。

《担当分野》
 組織的な体制の変更について,はじめに説明しておかなければなりません。町の社会教育委員は定員10名ですが,それぞれに担当の専門分野を持っています。従来は「成人教育分野」,「公民館活動分野」,「社会体育分野」,「芸術文化分野」の4分野でしたが,最近のボランティア活動の増進を考慮して,新たに「ボランティア分野」を設けることにしました。それぞれの分野に委員2名が割り振られることになります。「青少年育成」については,重要な課題であるとの認識から全員が担当することにしています。

《協議の流れ》
(1)平成14年度に計画書の全面改定を提案し,委員全員にその気になってもらうことを図り,翌15年1月に会長による改定試案を会議の席で提供の上,じっくりと検討してもらうことを促しました。2月に開かれる分野ごとの部会で,計画と実績をつきあわせて,反省並びに評価を行い,次年度の課題を明らかにしますが,その流れを新計画書に込めてもらうことにしました。
(2)3月の社会教育委員の会で,各部会から提出された意見等について具体的な報告を受け,全体的な調整を行いました。
(3)4月の社会教育委員の会で,新計画書の細部を練り上げました。
(4)5月の社会教育委員の会で,新計画書の原案について最終確認と校正を行います。その承認が得られた上で,完成した計画書が会長により教育委員会に提出されます。その承認を受けた計画が教育委員会名で正式発行されます。
(5)6月の生涯学習研修会において,社会教育計画書が出席者に配布され,社会教育委員がその特徴や内容について説明しました。新しいということで,時間を掛けた紹介が行われました。この点については,社会教育委員の会が教育長に進言することで実現できました。マンネリ化していた流れを断ち切ることができたようです。

《付帯する情報》
 社会教育計画書には,「基本方針と重点目標,具体的方策」といった主題のほかに,いくつかの情報を同時掲載することにしています。
 「町民憲章」,「町歌」,「人口構成グラフ」のほかに,「年間の社会教育行事の分野別月別予定表」,「社会教育委員名簿」,「体育指導委員名簿」,「社会教育関係団体代表者名簿」,「自治公民館名簿」がまとめられています。

《配布先》
 この社会計画書が誰の手に渡っているのかということも大事なことです。生涯学習研修会に参加する町民に配布されますが,その参加対象者は次の方々となっています。
 町職員,町議会議員,教育委員,社会教育委員,体育指導委員,分館長,分館主事,分館体育委員,青少年指導員,子ども会関係者,学校関係者,PTA,保護司,人権擁護委員,民生・児童委員,体育協会,文化協会,婦人会,青年団,空と海の会,老人クラブ,その他一般町民。
 社会教育分野に関わっている指導的立場にいる方々が中心です。もっと広く配布すべきであるという考え方もありますが,事業や体制整備に関する計画が主になっている内容なので,現状でよいと判断しています。


*****************************************************************************

社会教育計画書

-----------------------------------------------------------------------------
  1.はじめに
-----------------------------------------------------------------------------

 21世紀という歴史的な節目も,その端緒となる数年が過ぎていこうとしています。時代の特徴を表すキーワードも出そろってきました。国際化・情報化の波に乗って人のつながりが広がる一方で,親密度はどうしても薄れていきます。また,高齢化・少子化という世代構成の変動は社会構造の改革を迫ってきます。例えば,世代ごとの価値が競合する社会が出現し,その変遷の過程で教育改革や構造改革などが目白押しです。その先には,共生や男女共同参画といった特性で表現される新しい社会が徐々に見えてきました。
 このような時代のうねりを受け止める主体は,もちろん自立した個人です。20世紀の歩みを導いてきた後追い型の姿勢は平均的な成果を目指してきたものですが,これからは独自性を基盤とした開拓型の姿勢が望まれます。社会活動という面で考えると地方の主体性が必然とされ,すべての面で地方分権が期待されています。
 このような時代を背景に,町では『太陽と緑の町』づくりを提唱し,『○○町民憲章』の実現と第三次○○町総合計画後期基本計画の達成を目指しています。特に社会教育分野に対しては,町民一人ひとりに生涯学習による生きる力の増進を促しつつ,一方で個性的な活力に満ちた人々が集うような地域社会を築き上げていく役割が強く求められています。その結果として,「生涯学習によるまちづくり」が現実のものとなり,あらゆる分野で○○町らしさという特徴が浮き上がってくるはずです。
 受け皿としての○○町民も町の発展とともに多様化し,特に若年層の流入が盛んであり,世代の構成は望ましい形で推移しています。地域住民としての定着化はまだ十分な状況とは言えませんが,これまでに積み上げてきた社会教育活動のより一層の拡大により,共生意識が浸透することは十分に期待できます。
 住民意識調査によると,町民の生涯学習に対する関心は高まっており,その学習活動への自己評価の割合は全国平均を上回る勢いを示しています。幸い「青年団」や「空と海の会」という青年層の組織が健在であり,また地域住民の融和を支える「婦人会」も活発に活動を展開しています。さらに「老人クラブ」を中心とした高齢者層の意欲も衰えを見せずに旺盛な社会参加をしています。このような得難い活力を核として広く町民に生涯学習によるまちづくりに参画する意欲を育て,町民自らによる具体的且つ多方面の活動を創出できるような体制を構築することが,社会教育に関わるものに期待される課題と考えられます。

 この社会教育計画書は,○○町の社会教育活動がより一層の進展をするために,各団体や組織が協調して活動する「指針」を提供するとともに,町民が求めるニーズに対応する方策,さらには自ら創生する生涯学習活動への支援のあり方などを提案するものです。それぞれの立場と機会を生かして有効な活用をしていただければ幸いです。


-----------------------------------------------------------------------------
  2.基本方針
-----------------------------------------------------------------------------
 個人による生涯学習実践を町・地域の活力に結集することが社会教育活動の目標です。町民が自らの意志によってまちづくりに参画するためには,最も身近な地域コミュニティの形成に関わる可能性を広げておくことが大事です。高齢社会を支える環境づくり,青少年の健全育成,防犯防災などの面においても有効な歩みと考えることができます。
 ここで確認しておかなければならないことは,共生の基盤としての地域とはどこかという定義です。この計画書では,居住地の広がりを次のように定義しておきます。
   ○「地域コミュニティ」とは,自治区である。
   ○「校区コミュニティ」とは,小学校校区である。
   ○「まちコミュニティ」とは,○○町全域である。
社会教育活動は,それぞれの規模に応じた活動がバランスよく実践されることによって,町民の求める多様なニーズに応え,その成果を地域に還元することが可能になります。

 「心豊かなまちづくり」を最終目標とする生涯学習には,個人の幸福を地域や町の豊かさにまで広げようとする動きを産み出すことが期待されています。その実践プログラムとして三つのステップを想定することができます。

 第1段階は,「知り合うこと」です。お互いに顔も名前も知らない人々の集まりからは「まち」は生まれようがありません。組織に対しては連絡協議を意味します。
 第2段階は「助け合うこと」です。できることがあれば手助けをし合おうという気持ちとその実践がなければ,人のつながりは持てないからです。組織に対しては連携活動を意味します。地域コミュニティにおける当面する活動については,知り合う,助け合うことを目指す施策が最重要と位置づけられるべきです。
 第3段階は「学び合うこと」です。心豊かなまちとはお互いを尊重できる人々の集まりですが,その具体的な関わりは学び合う心から発露するものです。生涯学習によるまちづくりの本質はここにあります。組織に対しては共催・融合を意味します。

 まちは希望が溢れていてこそ,そこに住む人のよりどころになります。希望とは明日への願いであり,それを生み出していくのは子どもたちです。それゆえに,「育てよう心豊かな○○の子ども」を合い言葉として,町政の基本理念である「人づくり」を念頭においた教育的取り組みが行われてきました。まちづくりにおいても,新しい次代を担うことのできる人材の育成を目指すような地域活動が展開されるべきです。たとえば,青少年と高齢者の学び合いを軸とする「老若融合」を進展させることが考えられます。

 社会教育に携わる者は,心豊かに生きようとする町民のために,学習活動の場と機会を提供し,発展と結集に向けた支援を図る役割を担っています。ところで,その任務の遂行には町民の学習意欲が前提であり,啓発などの活動を通して意欲の掘り起こしと,学習体験のよい積み重ねを企画する必要があります。この導入の仕掛けとして,各種団体による活動を核とした学習の喜びを共有しあう実践が有効になります。
 ○○町における社会教育活動は,その実現に向けて堅実な歩みを進めてきました。その活動主体は,行政と町民という二つの立場に分けることができます。社会教育計画を実行するためには,その立場に付随した役割を明確にしておく必要があります。計画の成否は実践責任の所在が明らかであるか否かにかかっているからです。
 以下に,基本的な役割分担を類別するとともに,それぞれについて実践プログラムの段階毎に活動方針を例示しておきます。実践活動を計画する際には効果の検証のためにも,予めその活動目標がどの範疇に入るものであるかを認定しておく必要があるからです。

(1)行政による「まちコミュニティ」活動方針
  《知り合い》:同じ時間,同じ場所に集えば,顔見知りになれます。
   ・学習施設を充実し,いつでも気軽に利用できるようにする。
   ・学習機会情報を広域的に収集し,連携を図り,相互利用できるようにする。
  《助け合い》:人・団体が備えている知的資質は提供し合うことで生かされます。
   ・行政総掛かりで各種団体や関係機関と活動面での協力関係を作る。
   ・学習する環境の整備に向けた情報及び人的ネットワークを構築する。
   ・地域学習団体の振興を促進するアドバイザーを養成する。
  《学び合い》:専門的な学習領域を統合することで,学び合いが可能になります。
   ・既存の社会教育推進体制の有効な運用による連携を強化する。
   ・継続した学習機会を提供することにより,自主学級として定着させる。

(2)行政による「校区・地域コミュニティ」支援方針
  《知り合い》:活動指導者が相互交流の機会を持てば,効果的計画が立てられます。
   ・学習ニーズに対応できる学習プログラムを提供し,相談体制を充実する。
   ・校区連携組織,関係団体連絡会議等の,連絡調整ネットワークを構築する。
  《助け合い》:提供できる人と求める人を結びつける仲介役が欠かせません。
   ・生涯学習推進員・アドバイザーを養成し,自治公民館等に配置する。
   ・「人材派遣による入門講座開設」により,講師のサポートを受けやすくする。
  《学び合い》:節目毎の学習者同士の評価活動が,学習意欲を高めます。
   ・学習成果を発表する場を段階的に設けて,学習の気運を盛り上げる。

(3)町民による「地域コミュニティ」自主活動
  《知り合い》:多様な行事の企画で,新しい参加者を巻き込むことができます。
   ・初心者向けの企画を立て,参加しやすい環境づくりから始める。
   ・集まる行事だけでなく独自広報活動などによって意識変革を促す情報を流す。
  《助け合い》:環境整備などの公的な助け合い活動によって互助気運が高まります。
   ・何らかの寄与ができる地域交流の場を設けることで,地域意識を育てる。
   ・「○○ボランティア活動」と銘打って,新旧活動をイメージチェンジする。
  《学び合い》:住民間の伝承活動を蘇らせることで,地域は活性化します。
   ・縦の人間関係である老若融合を可能な限りあらゆる行事に組み込む。
   ・地域を単位とした芸術・文化・スポーツ・体育のクラブを結成する。


-----------------------------------------------------------------------------
  3.重点目標
-----------------------------------------------------------------------------
  ○青少年教育

 現在,子どものいじめ・不登校・学級崩壊,少年による凶悪犯罪・薬物乱用等の問題が見られ,その背景には社会的・教育的環境の時代対応の遅れがあるとして教育環境の構造改革が進められています。その上で,子どもの育ちは親の責任であると考え,さらに地域の親として養育に真摯に取り組む義務を果たし,一方で地域の大人たちが子育て支援をすることにより健全な○○の子どもを育てます。

  ○成人教育

 変動に適応して生きるためには,常に進取の気持ちで学び続けることが必要になっています。個人の資質向上を図る学習はもとより,多様な価値観を尊重し合う共生社会のより一層の進展に向けた自覚的学習が活発に実践される○○町になります。

  ○公民館活動

 中央公民館および自治公民館には,町民自らがさまざまなニーズに応じて活動を展開できる拠点としての機能が期待されています。活動情報の発信や機会の提供を通じてコミュニティに根付いた公民館活動に町民が積極的に参画できる○○町になります。

  ○社会人権・同和教育

 町民が心安らかに和やかに暮らすために,お互いの人権を尊重しあうコミュニティの形成に向けた活発な啓発活動が推進される○○町になります。

  ○社会体育活動

 健康に生きることは人としての基本的な願いであり,そのためにバランスのとれた身体的な活動を日常的に営むことのできるまちづくりが求められています。スポーツ活動の普及と振興が町民一人ひとりにまで行き渡り,健康の喜びを感じることのできる○○町になります。

  ○芸術文化活動

 まちは文化を誇りにしてこそ心豊かな人を育てます。文化的活動が振興され参画の場が確保され,その核となる文化財の保護・保全が積極的に取り組まれ,さらに地域間の芸術文化交流が意欲的に展開される○○町になります。

  ○ボランティア活動

 まちづくりは町民による自発的な活動によらなければ確かなものにはなりません。生涯学習の成果は地域に還元されてこそ生きた学びになります。人材の発掘・養成から具体的な活動の場の設定までを統括できるボランティア活動システムが整備される○○町になります。


-----------------------------------------------------------------------------
  4.具体的実践方策
-----------------------------------------------------------------------------
 1.青少年教育

 青少年の育成には大人全体が直接間接に関わるべき責任があります。家庭が中心となり学校と地域とも共同して,それぞれの役割にしたがって豊かな養育活動がなされなければなりません。両親や家族による家庭教育はこの計画の枠外にありますが,青少年教育の中心はあくまでも家庭教育であるという点は再確認しておくべきです。
 社会教育の領域で関わることのできる青少年教育は,保護者に対する養育支援と子どもたちに対する地域の大人としての関わりです。

  (1)養育支援

1.健康センター主催の妊婦・母親対象教室等による育児学習の場の確保
2.健康課等専門機関との連携による家庭教育学習の場の充実
3.保育所・幼稚園による乳幼児保育に対する相談機会の拡充
4.小・中学校による教育方針の開示と共通理解の推進
5.PTAによる父親育児参画の啓発と校区コミュニティ活動の立案
6.民生・児童委員および教育相談員による保護者の悩み相談の受付
7.老人クラブおよび婦人会による育児支援
8.自治公民館による育児学級の開設やサークルの育成

  (2)児童・生徒・少年への関わり

1.青少年育成町民の会による教育環境の整備活動の強化
2.青少年指導員および更生保護婦人会による指導・導きの実践と実情報告
3.青少年の翼・少年の船等の行事による集団活動体験の機会の提供
4.子ども会育成会連絡協議会によるJリーダー,指導者の養成研修講座の開催
5.各区子ども会による伝統行事・体験活動等の計画的実践の定着
6.スポーツ団体・クラブ等によるジュニアスポーツの場の拡大
7.社会教育関係団体等による異世代交流の機会の創出
8.施設の開放・新設等による行事不参加児童への居場所の確保

 2.成人教育

 成人といってもその年齢幅は広く,また興味関心も違っています。さらに,社会変化に応じた各層に望まれる学習も多様になっています。そこで,社会教育分野では学習活動の適合性のために,年齢・性別の組織化が行われています。ここではその分類に沿って,成人各層が資質をみがき,生活文化の向上と社会福祉の増進により,まちづくりに資するための当面する方策をまとめておきます。

  (1)青年

1.青年団の地域と連携した活動による組織の拡充
2.空と海の会による青年・少年交流の機会の確保
3.各種団体との連携による組織活動の実践研修の立案
4.公民館による青少年リーダー研修の開催

  (2)壮年

1.各行政課の出前講座等による行政情報公開の推進
2.公民館・フォーラムによる生涯学習情報の発信
3.各社会教育関係団体による学習の場の連携
4.青少年育成機関・団体による活動を通した養育責任の自覚の啓発
5.町民自らの発想と実践による生涯学習機会の創出

  (3)女性

1.婦人会の地域密着活動による近隣融和と社会参画体験の充実
2.各社会教育関係団体による自己啓発と特性発揮の機会の開拓
3.女性自らの組織活動による機会均等と参画社会への啓発
4.各機関・施設との連携による子育て・福祉支援活動等への参加機会の拡充

  (4)高齢者

1.老人クラブによる相互交流の促進と生きがい発見の支援
2.福祉機関による高齢者活動の場と機会の提供の定例化
3.各社会教育関係団体による指導的社会参加の機会の創出
4.地域活動による青少年への文化伝承の場の提供

 3.公民館活動

 中央公民館および各区自治公民館は,生涯学習の拠点としての機能を発揮することによって,町民としての一体感を醸成し,まちに対する愛着を育むことが期待されます。
 そのために,行政各課との連携を通して計画的な学習課題を設定し実践を図ると同時に,町民による自主的な学習活動を場の提供や運営指導などの面で支援するという役割を果たさなければなりません。
 特に,自治公民館は町民の身近な活動の場であり,あらゆる団体が率先して活用を図ることが求められています。したがって,活動の計画と実践には関係する社会教育関係団体による参画および協力の可能な体制を整えることが必要です。

  (1)中央公民館

1.生涯学習推進本部等による生涯学習センターの効果的運用の検討
2.指導者の養成・確保による町民の組織的学習活動の運営指導
3.分館主事,各種団体指導者の資質向上に向けた研修機会の充実
4.近隣諸施設,団体・分館等との連携による学習情報の集約と発信
5.講座開設による自主サークルの育成を目指した学習計画の立案と実践
6.IT研修による情報化社会における学習能力高揚の機会の提供
7.まちコミュニティ行事による学習成果等の発表機会の提供

  (2)自治公民館

1.各区の特徴的活動方針による区民融和と協調体験の活動推進
2.各分野の指導者との連携による入門的学習機会の新設
3.各種団体の学習指導の受け入れによる新しい学習内容の導入
4.青少年指導員による環境浄化と非行防止活動の情報の公開
5.公民館の開放による児童活動および養育活動の場の提供
6.区民手作り活動の支援による新規事業への積極的挑戦
7.公民館相互連携による多様な活動の紹介と展開
8.学校・主事会連携による校区コミュニティ活動の創出

 4.社会人権・同和教育

 歴史の学びの中で出会った人権という言葉が,未だに新世紀を人権の世紀と呼ばざるをえないほど浸透していないという現実があります。幸せに生きる権利が誰にもあるという理念を分かってはいても,自分の幸せを求めようとする際に,他者への配慮を欠いた結果としてさまざまな人権侵害が発生します。
 隣人への温かな眼差しこそが心豊かなまちづくりの核になります。人権尊重を視野に入れた生涯学習活動が意図的に組み込まれなければなりません。

1.社会人権・同和教育推進体制の充実による人権教育の定着化
2.人権・同和問題啓発事業による人権意識の拡大と深化
3.諸研修会の実施による指導者育成の機会の提供

 5.社会体育活動

 スポーツ活動は直接的には身体的健康増進につながるものですが,競技になれば協調や意欲等の精神的な訓練ともなり,健全な心身を培う活動です。特に,軽スポーツは,高齢者の健康維持,障害者の身体活動,青少年の育成にも十分に取り入れることのできる活動です。誰もが気軽に楽しめる多様なスポーツ活動の場と機会が待たれています。

1.体育指導委員による地域・学校に向けた軽スポーツの紹介と普及
2.まち・校区・地域コミュニティの各単位による地域スポーツクラブの育成
3.○○○ドーム・体育館・スポーツ公園等の条件整備による利用効率の改善
4.各地区体育委員の研修による青少年スポーツの普及とスポーツ傷害の防止
5.体育協会連携活動による一人一つのスポーツ運動への機会の提供
6.体育団体・関係者による全町民参加の総合型スポーツクラブ設立の検討

 6.芸術文化活動

 情操面の活動は心の豊かさにつながるものであり,それ故に人々が集うまちの風格を左右する要因です。伝統という核を受け継ぎながら,いつでも誰もが芸術や文化に親しむことのできる環境づくりが求められています。

1.生涯学習センターの建設に伴う文化施設利用促進方策の検討
2.○○フォーラムの資料充実による学習機会の拡大
3.文化遺産の保全活動と歴史資料の収集・整理による文化財愛護思想の普及
4.施設・団体主催の芸術文化行事による伝統文化と異文化の紹介
5.町民の自立的文化活動への積極的支援による情操教育の推進
6.文化協会連携活動による身近な文化活動体験の機会の提供

 7.ボランティア活動

 社会教育によるまちづくりへの貢献は,お互いに助け合う人脈を作り上げることにあります。地域の中で参画できる活動の機会を持てるということが,町民の手で自覚的に地域を活性化することでもあるからです。町民が人生経験の中で培った貴重な能力をまちの中で生かせる体制を作り上げることが不可欠です。

1.各社会教育関係団体のボランティア活動による奉仕体験の普及
2.学習ボランティア人材派遣活動による人的財産の活用機会の拡大
3.小中学校の体験活動によるボランティア教育の活用
4.生涯学習ボランティア講座の開催による指導者養成の場の提供
5.福祉ボランティアと学習ボランティアの連携融合による体制整備の検討


-----------------------------------------------------------------------------
  5.町民へのメッセージ〜主役はあなたです〜
-----------------------------------------------------------------------------
 人はそれぞれいくつかの役割を請け負って生きています。大人として,子どもとして。夫として,妻として。男として,女として。社会人として,職業人として。公人として,私人として。・・・
 ○○町は,「語らいとふれあいのあるまちに」を合い言葉として,活力ある豊かなコミュニティづくりを目指しています。それは老若男女や役割などのあらゆる違いを問わず,一人ひとりの人間として心安らかに暮らせることを願っているからです。
 人は一人では生きてはいけません。それでは誰と一緒に生きていくのでしょう。傍にいてくれるとホッとする人です。連れ合いであり,肉親であり,親友でしょう。勤め先には気のおけない同僚もいます。同好の仲間もいます。それらは血縁であり,知縁です。
 そこに地縁という関係を少し取り入れてみませんか。隣人関係を手がかりに,同じ地域に生活しているという地縁を広げてみてください。たとえ仮の住まいであっても,一向に構いません。地縁を捨ててしまうから,子どもの養育が片寄り,治安が悪くなるといったさまざまな弊害が現れています。面倒だからと切り捨てられた地縁は,目には見えませんが,家庭を保護してくれる優しいバリアであるということを思い出してほしいのです。
 コミュニティという言葉の最初のコムとは共通という意味であり,同じ地域に住むということです。バスの中でたまたま同席した人とは違って,毎日隣り合わせて暮らしている人と無縁であるのは,無言の窮屈さを招くようなものです。せっかくですから,楽に暮らしましょう。休みの日には,地域内を散歩してみませんか。見て知っていけば,少しは地域にともに暮らしている仲間に関心が持てるかもしれません。
 社会教育の活動や生涯学習の場は,同じ地域に住む人々にしたいことや知りたいことがあれば,そのお手伝いをしようというものです。決して押しつけられるものではありません。活動をするかどうかを決めるのは,あくまでも一人ひとりの考えによります。
 確かに,こうしてはいかがですかというお勧めはします。こうしていただければみんながホッとできると信じて,お誘いをしています。みんなのことなどどうでもいい,それも一つの選択ですが,結局はブーメランのように跳ね返っていくのが見えているから,繰り返しご案内をしています。

 「青少年教育活動」については,子どもを取り巻く環境である家庭・学校・地域のそれぞれの役割がきちんと果たされている必要があります。となると,家庭や地域の主役である皆さんが意図的に関わろうとしない限り,事態の好転は起こりません。みんなで育てれば楽になるのに,一人で背負うから大変なのです。迷う必要はなく,みんなで助け合えば,それが子どもにとっては最も良い養育になるはずです。

 「成人教育活動」については,自分をよりよく生かすために必要だと思われることを,皆さんが求めてくださればいいのです。学習機会にしても,自分の求めるものがないと諦めてしまうのではなくて,これをして欲しいと手を挙げてください。生涯学習とは誰かがしてくれるものではなくて,自ら学ぼうというものだからです。

 「公民館活動」については,地縁を広げ深める機会として存分に利用してください。人と人が関われば,そこからお互いに何かを得ることができます。何らかのものを得るためには,多少の代価が必要です。タダで手に入るものは大したものではありません。ちょっとした手間暇を惜しんでいては,何も得られないということです。地域に対して何ができるかをお互いに理解し,できる範囲で参画していただければ,みんなが喜び合えます。ほんのちょっとボランティア,略してチョボラ,と思って楽しんでみませんか。

 「社会人権・同和教育活動」については,人間関係の機微が時として思わぬ波紋を生み出すことを知っていただき,皆さんがお互いにいて欲しい人になってくださるために啓発が進められます。近隣でのトラブルから広がる人権侵害は,ない方がいいものです。和やかな人間関係は与えられるものではなくて,一人ひとりが意図的に紡ぎ出すものです。

 「社会体育活動」については,スポーツを楽しむ活動ですが,病気に負けない体力づくりという効用も付随します。団体であればチームメイトという仲間づくりもできます。体を動かす楽しみを家族で満喫するというのも,子育てへの大切な効果が期待できます。何の役に立つと疑問視するのではなく,気持ちを前向きにして取り組んでみてください。

 「芸術文化活動」については,音楽会,映画会,展覧会,講演会,発表会などに出席してみることからはじめて,見聞を広めていく中で関心をとらえるものが見つかるかもしれません。フォーラムに集められているいろんな分野の情報世界を散歩してみませんか。趣味を楽しんでいるたくさんの仲間が皆さんの入ってこられるのを待っています。

 「ボランティア活動」については,手助けの交換活動です。困っていたとき助けてもらってうれしかった,だから今度は手助けしてあげたい。その気持ちが人の輪につながっていくとき,ホッとできる地域になります。少しの迷惑は厭わずに引き受けようという気持ちが人の温もりというものです。あなたの心の温もりをお裾分けしていただけませんか?

 社会教育活動は,皆さん一人ひとりがその気になっていただかなければ成り立たないものです。そっぽを向かれたら,どうしようもありません。住みよい地域にするためには,そこに住んでいる人が住み良くしようと思わなければ実現できません。どうすれば心豊かに暮らせるか,それを願い考え実践できる主役は皆さん方なのです。
 生涯学習は,だれもが,いつでも,どこでも学ぶことができるものといわれています。今さら勉強なんてと思われるかもしれませんが,学習とは他人から押しつけられるものではなくて,自分で学ぼうと決めるものです。そこで直面するのは,何を学ぼうかという選択でしょう。○○町では,いろんな学びの道が開かれています。取りあえず,のぞいてみてください。もちろん,新しい学びの道を創生することもできます。そのためのお手伝いをする支援体制も用意されています。待っていては何も始まりません。  「はじめよう」,その声を発するのは,皆さん方です。あなたのすぐそばに,あなたの声を聞いてくれる方がいる,あなたの住んでいる○○町は,そんな町です。

*****************************************************************************

《コメント》
 年度ごとの計画としては内容が多岐かつ非常に豊かであり,とても一年で達成できるものではないと感じられることでしょう。それぞれの活動は集中しても数年がかりになるものばかりです。〇カ年計画のような中期及び長期計画と言ってもいいようなものです。これには当町の事情が絡んでおり,中長期的な推進計画が未だに策定されていないからです。どうしても中期的な計画を織り込まなければならないのです。
 改訂の主なコンセプトは,計画書中でもふれておきましたが,当事者と実践課題を明確にすることでした。計画の要諦は誰が何を今年度中に実践するかという点です。今はやりのマニフェストの考え方です。数値的な設定は,各自に委ねられています。
 本計画書はいわゆる初版です。今後数年の実績の中で細かな補正が必要になるはずです。少なくとも,大きな一歩を踏み出したことが今回の収穫でした。