*****《ある町の社会教育委員の活動》*****

【第20章 社会教育計画書の説明】

 わが町では,6月に「生涯学習研修会」という行事を開催しています。昨年までは各種団体の他に広く町民にも参加を案内し,講演などによる学習機会として提供してきました。しかし,今年度19年度から,各種団体の指導者に参加を限定した,文字通りの研修の機会に変更されました。この変更については,社会教育委員の会からも提言しました。
 この研修会では,従来から,社会教育委員の会が毎年提案している「社会教育計画書」を,社会教育委員が説明することが行われています。今年も,その説明をしました。各団体の指導者に趣旨を理解して,活動に生かしていただくことが計画書の目的であるからです。その説明原稿を以下に再録しておきます。


平成19年度社会教育計画書の説明

平成19年6月10日:生涯学習研修会にて

 時間をいただいて,社会教育計画書の説明をさせていただきます。この計画書は,我が○○町がより一層生き生きとした町になるために,皆様方にどのようにお力添えをいただきたいかという指針です。この計画書の中では各団体・機関ごとに期待されていることをまとめてありますので,皆様方が諸活動を実践する際に,気にとめていただきますようにお願いいたします。

 計画書の説明に入る前に,皆さんと共に○○町の社会教育活動を推進する任に当たっている社会教育委員のご紹介をさせていただきます。
(名簿参照:委員が前に整列のうえ,名前の紹介をする)。

 私たち社会教育委員は,皆様方の活動と教育行政との間に立って,○○町における社会教育活動の円滑かつ効果的な推進を図る役割を与えられています。この10名の委員が19年度勤めさせていただきます。どうぞ皆様方の身近な存在としてご意見等をお聞かせいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。(委員着席)。

 それでは社会教育計画書のご説明に入ります。
 ○○町では平成18年度より第4次○○町総合計画の実践が始まっています。その中では第1次総合計画から継承している住民福祉の充実,都市と自然が調和したまちづくり『太陽と緑の町』に加えて,町民と行政が一体となって進める協働のまちづくりである『信頼と協働の町』が基本理念として掲げられています。
 一方,地方分権が施策の中心になるとき,「町民自らによるまちづくり」活動は必然となり,行政と町民が一体となった活動を推進できる前向きな方策が求められています。

 まず,計画書の「基本方針」(抜粋部分*****は説明割愛)で述べていることですが,
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【2】実践活動の3段階
 まちづくり活動の実践プログラムとして三つの段階を想定することができます。
(1)第1段階は,「知り合うこと」です。
   お互いに顔も名前も知らない人々の集まりから「まち」は生まれようがありません。
   組織に対しては連絡協議の充実と情報の共有化を意味します。
(2)第2段階は「助け合うこと」です。
   できることがあれば協働しようという気持ちとその実践がなければ,やさしく活力に
   満ちた人のつながりは持てません。組織に対しては連携活動を意味します。
   地域コミュニティにおける当面する活動については,知り合う,助け合うことを
   目指す施策が最重要と位置づけられるべきです。
(3)第3段階は「学び合うこと」です。
   心豊かなまちとはお互いを尊重できる人々の集まりですが,その具体的な関わりは
   学び合う心から発露するものです。組織に対しては共催・融合を意味します。
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 まちづくりの行動指針として,町民による「自助」の活動,行政による「公助」の活動の他に,町民相互による「共助」の活動が注目されています。
 まちづくりの基本は,人と人がしっかりとつながることです。では,つながるとはどういうことを言うのでしょうか?
 その中身を考えてみると,先ずは,身近な人と「知り合い」,お互いのために余計なことをする「助け合い」,さらに世代をつなぐ「学び合い」,という形が見えてきます。それぞれ実践していただいている社会教育活動の中に,この3つのステップが組み込まれるように企画を進めていただくことをお願いいたします。

 次に,重点目標ですが,7つの分野に分けて,19年度の目標を掲げてあります。

●青少年教育について
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  子どもに見られる諸問題の背景には養育環境の対応の遅れがあります。子どもの育ち
  は親の責任であると考え,地域の親として養育に真摯に取り組む義務を果たし,さら
  に地域の大人たちが子育て支援をすることにより健全な○○の子どもを育てます。
   ◎子育てに関するアピールをまとめて,広く周知を図ります。
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 ○○の子どもを育てます,ということがうたわれていますが,どのような子どもかというイメージが共通理解されていません。このような状況では,家庭・学校・地域の連携は進めようがありません。この基本的な課題に対する活動を今年度皆さんとご一緒に進めていきたいと考えております。

●成人教育について
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  個人の資質向上と,多様な価値観を尊重し合う共生社会の進展に向けた自覚的学習を
  活発に実践する○○町になります。
   ◎各種団体と連携し,異世代との交流を積極的に推進します。
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 昨年12月に成立・公布された教育基本法では,第3条に生涯学習の理念が新たに規定されています。そこには,「生涯にわたって,あらゆる機会に,あらゆる場所において学習することができ,その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない」とされています。学習は個人が学びっぱなしに終わるのではなく,その成果を社会に向けて生かすことで完結するということです。
 ところで,学習の領域は文明と文化に分けることができます。文明は日進月歩の発展が生活環境を豊かにするという特徴を持っており,それは若い世代が担います。一方,文化は伝統の継承が人の生き方を豊かにするという特徴を持ち,それは高齢者が担います。したがって,文明は若い世代から高齢の世代に向けて,文化は高齢の世代から若い世代にむけて,異世代の交流を通して学びあうものとなります。
 異世代の交流の機会を活動に織り込んでいただけば,それぞれの生涯学習がまちづくり,つまり人づくりに生かされることになります。

●公民館活動について
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  公民館による活動情報の発信や機会の提供を通じて,コミュニティに根付いた活動に
  町民が積極的に参画できる○○町になります。
   ◎学校と地域が連携し,子どものための校区コミュニティ活動を創出します。
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 共助という意識が最も現れやすいのは,地域です。地域における温かな人のつながりがあってこそ,町のつながりが生まれます。その地域の核となるのが,自治公民館です。多様な活動を展開していただいていますが,それが十分に区民に知らされているかというと今ひとつの感があります。広報活動に目を向けていただきたいのです。地域のことをもっと知ってもらうという最初のステップを大切に考えてください。
 また,若い世代に地域という意識を持ってもらうためには,地域の子どもを中心に置いた活動を展開することが必要です。学校と諸団体・機関が連携した校区を想定した取組を設けることが期待されています。

●社会人権教育について
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  町民が心安らかに和やかに暮らすために,お互いの人権を尊重しあうコミュニティの
  形成に向けた活発な啓発活動を推進する○○町になります。
   ◎日常の暮らしの中での人間関係を円滑にするための身近な学びを推進します。
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 「雑草の 名前分かれば 抜きにくい」
 人は知り合っていれば,和やかに暮らすことができます。見ず知らずの人の間にはトゲが出ているのでトラブルが生まれやすくなります。
 ところで,和やかさの中身はどんなことでしょう? 知り合いの間には,お互いに遠慮という気配りと,少々のことは我慢するという許しが働きます。このお互い様という関係があれば,心穏やかに暮らせるはずです。知り合う,助け合うことの大切さを意識できるような学びをしたいものです。

●社会体育活動について
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  スポーツ活動の普及と振興が町民一人ひとりにまで行き渡り,健康の喜びを感じるこ
  とのできる○○町になります。
   ◎町民一人一スポーツ・一運動の普及に向けた啓発を進めます。
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 人は動物です。それなのに,現代人は植物化しているようです。動物とは動いて生きるものです。移動するといいながら,座っているだけです。動くのは車ですから,お腹が空くのは車です。動いていない人間は,食べ過ぎになります。
 人は動くための機能を使うとき,健康でいられます。運動は健康そのものだということができます。すべての町民に動く機能を使う快感を呼び覚ますことが望まれます。
 なお,町民一人一スポーツ・一運動の進展を見積もるためには,参加者数などの基礎データを積み上げてくださることをお願いします。

●芸術文化活動について
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  文化的活動を振興し,参画の場を確保し,文化財の保護・保全に積極的に取り組み,
  さらに地域間の芸術文化交流を意欲的に展開する○○町になります。
   ◎出前講座により○○町の歴史を学ぶ機会を提供します。
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 ○○町民である誇りは,命のつながりを確信することです。そのためには,伝統を受け継ぐという世代の継承が身近に生きていなければなりません。○○町の歴史を学ぶ機会が広く行き渡るように,歴史資料館による出前講座などを積極的に事業活動に組み込む企画を進めてください。

●ボランティア活動について
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  自発的な活動によるまちづくりを促すために,人材の発掘・養成から,活動の場の設
  定までが統括できるボランティア活動システムを整える○○町になります。
   ◎ボランティアセンター支援として,地域に根ざした人材を育成します。
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 自発的な活動によるまちづくりの要である共助,すなわち助け合いという昔の地域には当たり前にあった機能は,今風に言えば,ボランティア活動になります。誰もができることを持ち寄れば○○町はもっと暮らしやすくなります。
 社会教育活動だけではなく,地域福祉活動も含めて,地域づくりには欠くことのできないボランティア活動の仕組みを整えていかなければなりません。皆様方のご協力をよろしくお願いいたします。

 以上,重点目標についてお願いをして参りました。
 後に続く「具体的方策」については,各団体・組織・機関ごとに目を通してください。また,社会教育関係の事業日程表もまとめて記載されていますので,それぞれの計画実施の際には,ご配慮をお願いいたします。

 「この仕事 皆でやろうと 人に投げ」
 皆でやろうということで,社会教育計画書をお配りしておりますが,それを受け取られたときから,計画書は指導者である皆様方お一人お一人の計画書に変わりました。
 どうぞ,今年度1年間,計画書をお忘れないようにお願いして,説明を終わります。


 以上,20分の予定時間を使っての説明です。社会教育計画書が目指すポイントだけをお話しすることしかできませんが,指導者の方々には社会教育委員の思いはお伝えできたことでしょう。それをどのように活動に注いでいただけるか,見守ることにします。
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