*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【アンケート分析?】

 ある事業に関連して,アンケートの分析をする機会がありました。正式の分析は専門家に委任しているのですが,自分なりのデータ読み取りをしておきたくなって,勝手にやってみることにしました。単純集計で各設問に対する回答者の意向は分かります。その先の回答者の属性による変動に興味がありました。実のところ,住民意識を知るための調査ですが,住民は性別や年齢をはじめとして,さまざまな属性を持っています。その属性が回答に反映することは明らかです。
 分析手段はクロス分析です。統計学上はそれなりの手法がありますが,ごく単純にクロス集計だけを眺めてみることにしました。例えば男女別に見ると,結果が逆転するほどではありませんが,数ポイントの違いが見られます。選択肢毎の回答%の10%程度の違い(例えば,単純平均で60%であったものが,男性で63%,女性で57%となっている)を男女差と考えてみます。
 アンケート分析としては,平均値が分かれば十分です。ところが,その分析を元にして回答者集団に何らかの働きかけをしようとする場合,相手に合わせる工夫が大事です。みんなが紅茶よりコーヒーが好きだと分かったとしても,コーヒーに砂糖を付けるか,ミルクを付けるか,好みに違いがあるはずです。事業活動をする場合,好みに合わせる気配りをしていないと,そっぽを向かれてしまいます。クロス分析に現れる違いは小さなものですが,好みとして厳然と存在する大事な要素です。
 人という集団の特性を数値化することは,事業をよりよく実践するための科学的な手法として取り入れられています。しかし,その取り扱いは,自然科学における確率現象とは違いがあります。人は好みという無限の種類と程度の属性を持っているからです。よくいわれていることに,世間のことは1+1が2になるとは限らないということがあります。1と数値化されても,それはいろんな属性を帯びた1であるということです。ですから,違った1を足すこと自体に無理があるということです。同じ1杯でも,ビールやお酒や焼酎といった1杯の違いがあるのです。男と女の1人を足すのと,男だけ,女だけを足すのとでは,やはり違ってきます。
 人の集団は個性といういろんな色合いを持った人の集まりです。決して同じ色ではありません。そのことを弁えた上で,類型化をしなければ多様性という発散に振り回されます。社会活動においてもグループ分けをするという効率化は必要です。例えば,子ども向け,若者向け,婦人向け,壮年男性向け,高年者向けといった区別です。活動に付加価値を付けるということです。自分のために用意された活動と感じて貰う工夫が,付加価値です。
 アンケートの分析作業として数値を読んでいるうちに,その目的についてなんとなく整理しておきたくなり,以上のようなことを考えていました。

(2005年07月29日)