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【市町村合併の影響(その1)?】
県内をブロックに分けて,それぞれで「社会教育委員研修会」が開催されています。所属するブロックは21市町あり,4つの小地区に区分けされています。各地区にそれぞれ分科会発表が割り当てられ,地区内の市町が毎年順番に事例の提供をしてきました。T地区は4市1町,K地区は1市7町,M地区は1市3町1村,I地区は1市2町の構成でした。例えば,K地区では8年に1回の発表ですが,I地区は3年に1回のペースとなります。
平成の合併が進み,全国では3232あった市町村が1825に減ったそうです。身近なところでもM地区が2市に激減しました。そのために分科会発表の当番が隔年に回ってくることになりました。そこでM地区とI地区を合併して,3市2町として,5年に1回というペースで分科会を担当するように変更しようとしています。当然ながら分科会は4つから3つに減ることになります。表向きは発表の機会均等,現実は負担の均衡が果たせるということです。付随して,研修会の会場担当も4年に1回の地区回しの順番でしたが,K地区,T地区,M地区,K地区,T地区,I地区という順序で,K,I地区を交代で回すという変則的なものに変わりました。
合併により,社会教育委員の定員数も減ります。県の連絡協議会組織への負担金も市町村単位なので減額されていきます。人も財政基盤も縮小することになります。市が増えて規模は大きくなりますが,個々の組織の力は衰退し活動内容の希薄化が進むという簡単化が,合併による効率化という思惑なのでしょう。何とかやりくりをしてしのいでいける内はいいのですが,ある段階に至ると消滅することになるかもしれません。研修会を開催して多様な活動から学ぶというメリットが失われていきます。極端にいえば,一つになってしまえば,よそというものがなくなるからです。多様性は合併によって維持できなくなります。
国際的なグローバル化が進む中で,その波が身近な組織まで巻き込むようになってきました。均一化は効率を生み出す文明的な要因ですが,人の暮らしという文化的な面は多様化が求められます。人は文化風土に根付いて育ちながら生きています。生きる上で多様な食事バランスが必要なように,多様性という豊かさを持った暮らしの環境が求められます。
社会教育の分野で,例えば,子どもの健全な育成のためには,地域の教育力が求められています。そこには,地域という概念がすっかり絶滅しつつあるという切実な思いが共有されています。人は寄り添って生きていきます。寄り添える範囲はごく近隣です。地域を失うことは,寄り添うことを拒絶することになります。そんな風土の中では,人の気持ちは荒んでいきます。その兆候がさまざまな不幸な事例として現れています。自らの拠り所を自らの手で葬り去ってきた風潮に警鐘を鳴らすことが,社会教育委員に課せられた使命であると考えるときです。
時代の流れに逆行しようということではありません。大きなうねりを受けながらも,向かうべき方向を見失うことなく,積極的に舵取りをすることで,より良い未来を創造しようということです。戻ることはできませんが,これから進む先を選ぶことは可能です。教育という営みは明日に向かうものであるということを想起しておきます。
(2006年04月02日)
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