*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【問題と課題との峻別?】

 松田道雄氏の著述からのメモ書きが出てきました。整理のために記録しておきます。

 企画,物事をなす順序として,「社会よし,相手よし,自分よし,人生勉強」,近江商人の商いの理念「売り手よし,買い手よし,世間よし」がある。
 「こんなことがあったら,みんないいだろうな」と思い描くことが社会よしということであり,それが構想となる。「関わる相手のメリット,会員の互恵関係が成立する仕組み」を具体的に明らかにすることが相手よしということであり,計画に当たる。「自分も参加して自分の力を発揮したいか」となったとき自分よしとなり,参画していくことが生き方の基本であると思う。

 地域づくりを目指す社会教育の目的は,互助を成立させるための人から人へ伝承すべき知恵を与え続けることとなるようです。ところで,今の世相を表すキーワードとして,NHKが「無縁社会」という言葉を番組タイトルに掲げ,反響が大きいようです。互助を機能させるための精神的なインフラとして縁という意識が必要ですが,それが既に失われているというのです。
 昔の若者は「無気力」「無責任」「無関心」の"三無主義"と言われていましたが,現代の若者はさらに「無感動」「無抵抗」「無批判」「無能力」「無作法」「無学力」「無教養」「無節操」「無定見」「無思想」を加えた"十三無主義"であると指摘される先生もおられるそうです。その総体として,極限にまで孤立した個人が浮き彫りになって,無縁という括りが登場したのでしょう。
 この底知れない不安状況が身近にあるとしたら,社会制度の不備を問うような論議にとどまるのではなく,具体的な警鐘事象の背景にある人の生き方に関する認識に向けたアプローチを始めることが急がれます。社会教育という領域が取り組む課題は無縁社会に抗うものでなくてはなりません。
 無縁社会という問題に対して,解決すべき課題を明確にすることが社会教育の使命となります。問題の指摘にとどまる論評は社会教育ではありません。社会教育は具体的な課題を抽出し,解決に向けた行動を探り出す役割を担うべきです。
(2010年05月02日)